世界のはての少年 [Kindle]

  • 東京創元社
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感想・レビュー・書評

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  • 毎夏恒例の鳥猟のため、1~3週間の予定で、「戦士の岩」と呼ばれる孤島に3人の大人と9人の少年たちが上陸した。猟のはじめにカツオドリの見張りの鳥を捕まえて「カツオドリの王」の称号を手に入れたクイリアムは、本土からヒルタ島を訪れている3歳年上の女性マーディナに恋していたが、彼がヒルタに戻る頃には、彼女はそこを去っているはずで、二度と会えないだろうことを憂い、想像の中で彼女と会話していた。
    毎日朝から晩まで働いて3週間が経ったものの迎えの船は来ない。少年たちは今までと同様に漁を続けて迎えを待ったが、ある日信心深い少年ユアンが天井に頭をぶつけた際に、みんなは天国の審判を受けに上がっていったから来られない、僕らだけ取り残されたと言い出し、パニックになる。クイリアムはとっさに、そのうち天使たちが迎えに来るから、それまで無事にいないといけないと皆をなだめる。

    1727年に実際にこの地で起きた史実を基に書かれた、孤島に取り残された12人のサバイバル物語。









    *******ここからはネタバレ*******

    息の詰まるような閉塞感と過酷な状況で、読み進むのが困難でした。


    彼らが普段生活するヒルタ島には木がなく、教会が強い力を持っていることから舞台となっているのはなかり前の時代ではないかと推察していましたが、後半になってやっと「1728年」という年代が出てきましたね。江戸時代です。
    この時代のスコットランドの西の果ての島の生活を想像するのは容易ではないでしょう。

    加えて、物語の中に救いが少ない。大抵は困難の後に一時の安らぎが入るのもなのに、この物語ではそれがほとんどなく、どんどん追い詰められていきます。
    迎えが遅れるとわかった時点から、獲れる鳥は減り、気候はどんどん厳しくなり、働き手の体は怪我や病気に、精神は閉塞感と絶望感に蝕まれていく……。

    おまけにすべてが明らかになるのは9ヶ月後に予期せぬ迎えが来てからで、しかも、待っているはずの家族は、本当にもう天国に上がっていたという事実。

    主人公のクイリアムこそは、想い人が生きていて結ばれたから良かったのかも知れませんが、物語全体としては、児童書にしては酷ではありませんか?
    サバイバーたちは、経験から何を得たのでしょう?フィクションだからこそ、ここのあたりにもう少し明るくなれる要素が欲しかった。


    史実を基にしたから仕方ないかも知れませんが、私には、これは大人向けの読み物のような気がするのです。



    しかし、カーネギー賞を得たこの作品が、伝染病を機とした悲劇を描いたものだったとは。
    少し収まってきたとはいえ、コロナ禍の下で読むと、大変さがより強く伝わってくるように思います。

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著者プロフィール

1951年生まれのイギリスの作家。『不思議を売る男』で88年にカーネギー賞、89年にガーディアン賞を受賞。2004年に『世界はおわらない』でウィットブレッド賞児童書部門受賞。18年には『世界のはての少年』で二度目のカーネギー賞受賞という快挙を成し遂げた。

「2022年 『世界のはての少年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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