海外で研究者になる 就活と仕事事情 (中公新書) [Kindle]

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  • 中央公論新社
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  •  海外でやっていくには、「研究力」と「人のツテ」が大切。若いうちから積極的に海外に出ること

    ●感想
     読んで「なんだ、研究者が大変なのは日本だけでなくどこも同じか...」と安堵と閉塞感を同時に味わった。純粋に研究者の働き方に興味があって本書を手にとったけど、研究者ってラクじゃないなぁ。常に研究資金の獲得に追われてしまうし、テニュアを獲得するのも一筋縄ではいかないし。勉強もずっとずっと必要。あくまで「研究」とか「大学教授」の仕事がしたくて、そこに面白みを見出せる人かどうかが大事だな。
     加えて、本書を読んで「大学教員の仕事は『研究』だけでなく『教育』」もあると気づけたのは良かった。英国でも、一流大は研究力があり、二流以下になるほど教育面の仕事が増えるという。これは日本も同じだ。論文を書かない教員がほとんどを占める、私立大の存在意義を私はやや訝しく思っていた。しかし、大学の意義は「研究」だけではないのである。「教育」機関でもある。査読付き論文をたくさん生産できないとしても、地域社会に良い影響を与えられるのだろう。
     本書で紹介される研究者の方々は、打算的に海外を拠点として選んだわけではない。皆それぞれの研究を突き詰めるうち、手の届くかつ最適な環境が海外だった、という印象を受けた。つまるところ、研究は一生懸命やって、人と会える機会は大事にモノにする。結果として、海外に行くこともあるでしょうね、ということだと思う。

    ●本書を読みながら気になったこと
    ・「PIのなかには、研究を諦めている人がいる。」...そこそこの英国一流大でも、研究を諦めている人はいるんだね。日本だけじゃなかった。なんか安心した
    ・「アメリカやイギリスを含む多数の国で、PIは、競争的研究費の応募書類書きに忙殺されている。競争的研究費を拠出するのは、主に国だ。企業が拠出することもある。たとえばアメリカやイギリスにおいて、研究費の応募書類書きにPIが費やされなければいけない時間は、日本よりかなり長い」...そうなんだ。日本も大変大変って聞くけど、イギリスアメリカよりはましなだな
    ・「日本の学費は他国と比べてとても安い。外国人だから倍の授業料を徴収するということもない。日本で大学の学費が高すぎる、高騰し続けている、ということが社会問題として取り上げられているが、欧米人の多くは理解に苦しむだろう。」「日本の状況とあわせて考えると、現状、大学業界はほとんどの国で負け産業だな」...大学業界、研究業界に入る理由って「この研究がしたい」っていうモチベーションしかないよね。もう。
    ・「~投資を大きく減らす決定をした。そのこともあって、競争的研究費を得ることは、私には非常に難しい。」...研究者って、自由に見えて意外と社会の需要の影響を受けるんだよね。お金が得られなければ、社会から理解が得られなければ、やりたい研究もできない。

  • 今さら自分が海外で研究者になるつもりはないが、比較制度論・比較文化論的に、研究者という職や大学という組織を通じて異国の状況を知ること自体が興味深い一冊。ただ海外で働くという意味では、民間組織で海外に出てきている身として色々思うところもあるが、駐在員と現地採用の間では大きな違いがあり、企業でいうところの現地採用の視点。海外にどんどん出た方がいい、という意見は分野問わず同じだなぁ。息子の将来の参考に読ませるには少し早い内容だったかな。

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著者プロフィール

ニューヨーク州立大学教授 博(工)

「2022年 『テンポラル・ネットワーク(第2版)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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