残酷な進化論 なぜ私たちは「不完全」なのか (NHK出版新書) [Kindle]
- NHK出版 (2019年10月10日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (185ページ)
感想・レビュー・書評
-
心臓が4つの部屋に分かれてる理由、狭心症や心筋梗塞になる理由を初めて知った。習ったのに忘れてるのかな?
生殖年齢を過ぎた個体は自然淘汰には関係ない、というのに納得させられた。
ヒトは、大人になってもミルクを飲めるように進化した。進化はそれほど時間のかかるものではない。ハワイ諸島のコオロギは、わずか5年で進化したらしい。
「おばあさん仮説」が面白い。若い個体の子育てを手伝うために、閉経後も長生きになったのか。私には子供がいないけれど、社会的子育てはしていきたいと思っている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「自然淘汰(自然選択とも言う)という進化のメカニズムは、環境に適した形質(を持つ個体)を増やす力がある」が、「自然淘汰が増やす形質は、子供をより多く残せる形質」だけ。「私たちヒトは進化の頂点でもないし、進化の終着点でもない」。そもそも「進化は進歩ではない」。
本書は、各パーツ毎に見ると、人間より優れた、環境適合性の高い器官をそなえた生物が多く存在することを紹介している。
例えば、鳥類(やその祖先の恐竜)の方が哺乳類よりも優れた呼吸器を持っているし(鳥類は胚の前後に後気囊と前気囊を持っているので空気の流れが「外→後気囊→肺→前気囊→外」となり、「いつも肺には、空気が一方向に流れ」、「新鮮な空気が肺の中を流れ続けるようになっている」)、窒素を体外に排出するシステムでは鳥類や爬虫類の方が両生類や哺乳類より優れている(「鳥類や爬虫類は窒素を尿酸にして排出するので、大量の水を使わなくてよい」が、「私たち哺乳類やカエルには膀胱があり、大量の水と一緒に尿素を捨てている」ので水を無駄に使わざるをえない)、鳥類の眼は人類よりずっと優れている、など。また、手の形に関して、人類は「原始的」でゴリラやチンパンジーは「派生的」なのだという。
進化のメカニズム、実に奥深い。
キンギョに肺があることも初めて知った。水面でパクパクしてるのは呼吸していたんだな。 -
進化が人間の都合にとって必ずしも「良き事」には繋がらない事実を「残酷」と表現して解説した著作。
-
われわれヒトは進化の頂点でもないし、進化の終着点でもない。他の生物同様に、進化の道中にいるだけだ。「進化」と聞くと、ついつい優れたものになっていく方向だと考えてしまうが、単に現時点での生存の可能性が大きい方に向かっているだけだそうだ。環境がかわれば、また進化の方向性も変わってくる。我々の体の器官もいまあるのもを土台にして進化は修正していく。それも、かなり早いスピードだそうだ。ダーウィンの進化論では、進化はゆっくりとしか進まないと思っていたが、けっこう早く進化し、今も進化の中にあるという。「進化」とは、「自然選択」のことである。優れた方向に進む意味合いは存在しない。
-
絶滅の人類史の続編だった。
あちらのほうが面白かったかな。 -
人間はなぜ水を飲まなければ生きられないのか。けっこう新鮮な示唆が多かったな。そうか、進化ってそういうものなんだ、という。栄養ととる、水をとる、直立二足歩行をする、犬歯が小さくなる。目に見える形の進化の背景には、多くの理由がある。状況証拠から推測しないといけないこともあるかもしれないけれど、いろんな理由の蓄積に、なんとも気の遠くなる話と感じてしまう。それも数億というレベルではなく、数百万年レベルで起きる話なのだ。あれこれ感心させれた。刺激的で面白かったね。ちょっと話がくどいかな、と感じたところもあったけど。
-
人間が直立二足歩行で手が使え、それによって脳が発達し、現生人類まで進化したのだ、とはよく聞く人間の進化論だが、実際にはそれほど簡単ではないことがよくわかる。直立二足歩行だからメリットが多かったとも限らないし、手が使えなければ脳が発達したわけでもなさそうだ。人類史全体で400万年のうち、脳が大きくなるまでには180万年ほど前に登場したホモ・エレクトゥスまで200万年以上もかかっているのである。そもそも脳というのは何もしなくても必要エネルギーの20%も消費してしまう器官なので大きくするメリットを享受するには沢山の環境条件が整わなくてはいけないし、人類史の大部分は体と脳との割合において人類はイルカに負けていたのだ。
-
・水から酸素を得るよりも,空気から酸素を得るほうが楽?
・窒素をどうやって捨てるか.魚はアンモニアにして捨てているが毒性が強い.人間は尿素にして捨てている.
その他,一夫多妻制,難産などいろいろなテーマが進化論で語られている.