遠い国の小さな花嫁【電子特別版】 (ルビーコレクション) [Kindle]

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  • KADOKAWA
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感想・レビュー・書評

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  • 心に残る文章にたくさん出会えた素敵な本だった。『本当の理不尽というものは音もなく突然始まって、収まったときは嘘のようにそこには歪められた歪められた日常とあたりまえの日常が横たわっている』という文が印象的だった。主役ふたりはもちろんのこと、レディ・アンや王女さまのような格好いい魅力的な女性キャラクターたちが生き生きと描かれていて、愛とは何か、自分の意思で生きるとはどういうことかと考えさせられた。読み終わった後の余韻がすごかった。作者さんの後書きもすごく好き!

  • とても分厚い本なので、読破できるかがまず不安でした。
    でも、アマゾンでたまたまタイトルとストーリー紹介を見た時、何故か惹かれるものを感じました。

    届いた本は本当に厚みのある大作でした。
    この作品はジャンル分けとしてはBLであり、ファンタジーですが、「男の花嫁」という設定も殆ど抵抗なく受け入れられました。
    大抵、男性同士の結婚というと、作品の世界観や設定そのものにモロファンタジーゆえの不自然さを感じるのですが、このお話はそれがありませんでした。

    冒頭からすんなりと世界に入り込め、また主人公サガルにも不思議な魅力を感じました。
    透明感のある魅力とでもいうのでしょうか、何かと謎の多いサガルでしたが、後半にかけて徐々に正体や過去が明らかにされてゆきます。
    人が人を想うことの優しさ、切なさ、素晴らしさをサガルとローラン「夫婦」の在り方が教えてくれます。

    長いお話なのですが、いざ感想をまとめようとすると、なかなか適切な言葉が出てきません。
    サガルが「戦う兵器」として作られた人造人間であったという事実には衝撃を受けました。しかし、この設定も巧みに描き込まれた状況描写で、あまりストーリーの流れの中で不自然さを感じません。
    先ほど、色々なことを感じたと言いましたが、このお話は、私たちが生きる現代がやがて迎える「近未来」への警告も込められているのではないでしょうか。
    「生命」を「利己主義的な目的」のために人為的に生み出す時、作られた「生命体」はやはり「生きている人」なのであり、「ロボット」ではないのです。
    本来は神の領域である「生命操作」を人間が行うことの傲慢さへの警告かもしれません。

    サガルは永遠の時を生きる存在です。
    物語の最後では、めでたしめでたしとなりましたが、果たしてローランとサガル夫妻はどのような時間をこれから過ごすのか、とても気になりました。
    死というのは恐怖ですが、裏腹に「終わりの無い生涯」というのもまたある意味では恐怖かもしれません。
    大切な人、愛する人たちが次々と老いて亡くなってゆくのを見送り、永遠に生き続けなければならないサガルに、少し哀しみを感じました。

    サガルの与えられた運命そのままに、壮絶で哀しい、でも限りなく優しい物語です。
    良いお話だと思いました。

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