流れは、いつか海へと (ハヤカワ・ミステリ) [Kindle]

  • 早川書房
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感想・レビュー・書評

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  • ハードボイルドな雰囲気がとても良くて、主人公と共に2つの事件を追っているようで一気に読んでしまった。アメリカ社会の独特の空気が分かればもっと楽しめたのかもしれないが、それでも十分いい雰囲気だった。出てくる登場人物の固有名詞が多くて、誰が何なのか分かりづらかったのが難点。

  • ジョー・キング・オリバーはニューヨーク市警の最高捜査官。しかし、ある日彼は車泥棒の逮捕に派遣され、その捜査でオリバーは冒してもいない罪で告発されてしまいます。ニューヨーク市警を敵に回し、敵に暴行の濡れ衣を着せられたオリバーは、ライカーズ島の独房に閉じ込められることになってしまいました。それから10年後、私立探偵として生計を立てているオリバーの姿がありました。長年の獄中で受けた残忍な行為と孤独な生活の中に心を痛めたオリバーにとって、唯一の光となっているのは、仕事とティーンエイジャーの少女アジャ-デニスの存在です。濡れ衣に対して正義の探求を続けるオリバー。それと並行して、スラムで麻薬を乱用していた2人の当番の警察官を殺害したとして告発された黒人のジャーナリストの事件を操作することになるのですが・・・。

    「濡れ衣への復讐のために耐え忍ぶ」という主人公の境遇から、デュマのモンテクリスト伯を彷彿とさせられる本書。作者のウォルター・モズリーは、本作に限らずギャング、ヘロイン中毒者、傷ついた魂、そして不屈の精神など、大都市ニューヨークのサバイバルをテーマとした作品をリリースしています。一連の作品でモチーフとなるのは、不正や腐敗の歴史を認めようとしない警察の暗部で、いずれも説得力のある物語は期待を裏切らない出来でした。今回も主人公のオリバーが自身に仕組まれた陰謀に翻弄されつつ、並行して発生した別の事件も交錯するという風に、いい話が展開されます。ですが、今作で私が一番興味を持ったのはストーリーそのものではありません。それはオリバーの世界観と作者の描写の仕方にあります。例えば、主人公のジョー・オリバーが新しい人に会うときには、肌の色だけでなく、その人が何を着ているのか?など、かなり細かい説明をするんですよね。こうした、大都市ニューヨークの暗部を露にするような世界観の描写のディテールも本作の大きな魅力です。

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著者プロフィール

1952年生まれ。アメリカ合衆国在住の小説家。
1990年、「イージー・ローリンズ」シリーズ第一作となる『ブルー・ドレスの女』でエドガー賞などを受賞、映画化される。以後、色をタイトルにした『赤い罠』『ホワイト・バタフライ』『ブラック・ベティ』『イエロードッグ・ブルース』(以上、いずれも坂本憲一訳、早川書房)をはじめ多数の小説を発表。
評論に『放たれた火炎のあとで』(藤永康政訳、ブルースインターアクションズ)などがある。

「2023年 『アントピア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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