すみれ屋敷の罪人 (宝島社文庫) [Kindle]

著者 :
  • 宝島社
3.68
  • (6)
  • (17)
  • (17)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 128
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (263ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2001年、長らく手付かずだった戦前の名家・旧紫峰邸の敷地内から発見された二つの白骨死体。
    紫峰家は、すみれの花で彩られた美しい館に暮らす一族だった。
    当主の太一郎と、葵・桜・茜の美しい三人の姉妹たち。
    四人は終戦間近、東京大空襲によって亡くなったはずだったが……。
    白骨死体は、いったい誰の死体なのか?
    その身元について、かつての関係者に話を聞いて回る謎の男が現れる。
    かつての女中や使用人たちの語る、館の主人と三姉妹たちの華やかな生活と日常、そして忍び寄る軍靴の響き。
    突然起きた、不穏な事件。彼らの証言は二転三転し、やがて戦時下に埋もれた意外な真実が明らかになり――。

  • 関係人物の回想を淡々と聞いていく感じの流れのため、最初は読むのを諦めかけたけど、3割程読んだあたりから徐々にハマっていき、最後まで止まらなくなった。
    静かな作品だけど、その分印象が残る。

  • すみれ屋敷と呼ばれる邸宅の敷地内から出てきた身元不明の白骨体。誰なのかを探るため、以前の関係者にインタビューをする西ノ森。

    関係者の語る時代が戦時中なのも、この物語では大事な要素だけど、それがなおさら事件の真実を悲しいものにしてる感じ。すごい結末が切ない…。

    関係者の告白自体もすごく面白かったし、何より事件を調べる西ノ森がそもそも何者なのかという謎自体がからんでくるのも良かった。

  • 娘として愛されたいと思いながら、葵、桜、茜を演じ通したヒナのことを想うと切ない気持ちになった
    実は本当の娘として愛されていたのを知ることなく、それを伝えられない太一郎の気持ちも切ない
    太一郎が亡くなった時どれだけ辛かっただろうな

    これを読んでて、ドリカムの「やさしいキスをして」のメロディーが、少し怪しい雰囲気もある紫峰家の館に合うと思った
    戦争で明日死ぬかも分からない日々の中で、穏やかに生活を続けたいと願った紫峰家の人たち
    「今日という一日が終わる時にそばにいられたら、明日なんていらない」という歌詞がすごく響いた
    岡林のヒナへの恋心にも通じる

    そうやって守られた秘密も、年月を経て、それぞれの人生を通せば弔うことができるなら、
    ヒナは太一郎が娘としてヒナを愛していたことを知って欲しいと思った

    桜や茜も実の娘として太一郎に愛されることができたのに、生きるのが苦しくて、自ら人生を終えてしまって、図らずもヒナの方が太一郎の愛情を一心に受けることができた事実がなんだか悲しい

    生きていればこそ秘密を弔うことができるのに

    葵だって、生きていたからこそ、事実を追うことができたし、それを知って後悔もしながらも、岡林に再会することができた

    今考えたら誰も悪い人はいなかったんだな
    誰もが誰かのためにと思ってやったことが複雑に絡み合って、時代に翻弄されてこうなってしまったんだ



    電車で読むためにコンビニでぱっと買っただけなのにめちゃくちゃ面白くて一気に読んじゃった〜あんなに積読の本は読めないのに
    最初の信子さんの証言が、昭和十年代の昔話として紫峰邸の不思議な雰囲気をすみれの花を強く印象付けながら表してて一気に引き込まれた!
    自分ちの近くの洋館にもしそんな秘密があったら…!

  • 古い洋館の庭から二体の白骨死体が発見されたことがきっかけで、50年以上前の過去を、回想を通じて解き明かすお話しでした。新たな証言が語られる度に徐々に書き換えられていく過去。そして最後に秘密の全貌が明らかになります。
    何度も繰り返される過去の解明と書き換え、その描写がとてもうまいと感じました。

  • 図書館で借りた本。
    過去にすみれ屋敷と呼ばれていた優美で美しい邸宅。廃屋になった現在、掘り起こしてみたら二人の白骨屍体が発見された。この二人は一体誰なのか。過去にこの美しい屋敷で何があったのか、当時の使用人たちに話を聞きながら少しずつ謎が解けていく。

  • この本のことも作者さんのこともまったく存じ上げておりませんでした。
    この本を手に取ったきっかけは、「この本を読了した方はこちらの本にも興味をお持ちです」というブクログのレコメンドです。

    ====
    日本推理作家協会賞受賞後、第一作。
    切なく、哀しい嘘。
    けれどもその幸福さに思いをはせた瞬間、淡く美しい物語は鮮烈になった。
    ======

    この帯の言葉に魅せられて図書館で借りました。

    本書を読了した今、この帯の言葉が胸にしみます。
    そう、「淡く美しい物語は鮮烈になった」です。
    モノログの写真が一気に色彩豊かに鮮やかによみがえるような感覚です。

    今は朽ちてしまった戦前の名家、すみれ屋敷。
    そこにはかつて高貴な屋敷の主人と美しき三姉妹、そして彼らに忠誠をもって仕える執事や女中、書生たちの生き生きした暮らしがありました。

    ときは現在。
    そんな屋敷から三体の白骨死体が現れます。
    三体の白骨死体はだれなのか、どうしてここに埋められているのか…

    当時の使用人たちの記憶と言葉を手掛かりにして調査を進めていくと、<すみれ屋敷の罪人>たちが当時必死に隠そうとした真相は、愛憎溢れながらの互いを思いやってのものでした。


    この本はいわゆる<スリーピングマーダー 回想の殺人>形式で語られます。
    具体的にいうと、当時仕えていた3人の使用人たちの記憶と語りが頼りです。

    それゆえはじめのうちはそんな“語り”で物語が進むのがちょっと苦手…という人もいるかもしれません。
    でも、ぜひその使用人が語る“情報”を回収することに徹して読み進んでみてください。

    なにやらスローな展開だな~、と思われた方も、中盤から一気呵成に読めること間違いしだと思われます。

    犯人探しをしながら読むのではなく、すみれ屋敷、高貴なご主人と美しい3姉妹、執事や書生、女中たちという当時の世界観にまったりと身を委ねて読み進めていくのがまるでしょうか。
    そうするとそれぞれの人たちの“想い”に胸がしめつけられる結末が待っています。

    私は涙が自然とこぼれてきました。
    ベルベットのような物語だなあ~、と感服です。

    分厚いわけでもなく薄いわけでもない。
    だれにでも読みやすい、手に取りやすい厚みの本です。

    またカバーがすばらしいですよね。
    館とすみれの表紙がいい。
    読んでいくと、この表紙も手伝って、あっという間にこの世界に誘われました。

    舞台装置満点です。

    映像化、まだのようなので、演技派俳優、女優さんたちでぜひ見てみたいです。


    ===データベース===
    戦前の名家・旧紫峰邸の敷地内から発見された白骨死体。かつての女中や使用人たちが語る、屋敷の主人と三姉妹たちの華やかな生活と、忍び寄る軍靴の響き、突然起きた不穏な事件。二転三転する証言と嘘、やがて戦時下に埋もれた真実が明らかになっていく―。注目の女性コンビ作家が「回想の殺人」を描く、傑作ミステリー。
    =====

  • 人の数だけ見方があって、読み進めていくうちに登場人物の印象などがどんどん変わっていく。切なくて悲しい物語。
    色々分かった状態で再読中。

  • TRUMPシリーズ「黑世界」の「馬車の日」がとても好きな世界観だったので読んでみたら良かった。

  • 過去の出来事やそこに隠されていたことが、少しずつ紐解かれていく過程が面白かった。
    相手を想うがための嘘は優しく切ないし、戦争が生んでしまった悲劇とも感じた。

全14件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

(ふるた・てん)プロット担当の萩野瑛(はぎの・えい)と執筆担当の鮎川颯(あゆかわ・そう)による作家ユニット。少女小説作家として活躍後、「女王はかえらない」で第13回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、同名義でのデビューを果たす。「小説 野性時代」掲載の「偽りの春」で第71回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。同作を収録した短編集『偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理』を2019年に刊行した。他の著書に『匿名交叉』(文庫化に際して『彼女は戻らない』に改題)『すみれ屋敷の罪人』がある。

「2021年 『朝と夕の犯罪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

降田天の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×