アルキメデスは手を汚さない (講談社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 誰が(美雪)に手を掛けた?
    ダイイングメッセージはアルキメデス。

    セメントだけに練り込まれた話かと思いきや、話があちこち二転三転。美雪の生前の心理描写がもう少しほしかった。

  •  女子高生が亡くなった。表向き盲腸の手術中に死亡したとされているが、実は子宮外妊娠であった。最後に残した言葉「アルキメデス」とは。彼女の死後、周囲では毒物中毒事件、失踪事件、殺人事件が立て続けに起きる。一人の男子高生に疑惑の目が向けられるが、彼にはアリバイがあった。

     1972年、高校生たちの主張と大人たちへの反抗心から起こった青春群像劇。と言えばイメージしやすいかな。時代背景を考慮しながら読み進めないと、全く理解出来ない青春ミステリになってしまうでしょう。
     
    「新本格」って何?読了後まず思ったのがこれ。分厚い本の帯には新本格の文字が並び、こちらもそれ狙いで手に取る。確かに面白いし、所謂ミスリードや伏線など、練りに練られたプロットやどんでん返しは、書き手のセンスや才能が感じられ、胸躍らせながら読んでいました。本作は、もう40年以上も前の作品で、当時の時代背景とのギャップから、登場人物に対しては、中々共感するまでには至らなかったのですが、ストーリーやプロットは重厚で、推理ミステリをじっくりと堪能しました。本書を読むと、原点回帰を突き付けられたように感じました。
     
     高校時代にこの物語と出会ったことで、今の東野圭吾先生が存在すると言われる一冊です。

  • かなり昔の本で市立図書館で借りようとしたら無くて、県立図書館で借りることができた。ネットで予約して届いた本はボロボロでいかにも年季がはいって読む古された感じだった。手に取るのも抵抗を感じるぐらい汚れてボロボロだった。読んでいくと確かに昔の推理小説という感じで時代的なものを感じた。同級生の女の子が妊娠して堕胎しようとして子宮外妊娠だったため、死亡しその葬儀から物語ははじまった。相手の男性を探していくストーリーになるのかと思ったが、他の殺人事件と絡んで物語は展開されていく。読んでいて飽きはこなかったし、面白く読めたと思う。話の展開も悪くなかったと思う。良い作品だったと思う。

  • 「恋人なんかじゃありませんよ。それに殺しちゃいませんよ。病気で死んだだけのことでしょう。僕には関係ない」 「恋人じゃない? じゃ貴様は無理矢理に美雪を……」 「とんでもない。合意のうえですよ。彼女は結構、楽しんでいましたよ。僕がうんざりしたくらいにね。ひょっとしたら僕に惚れてたんですかな。僕は、どうってことなかったけれど」  情容赦ない痛烈な侮辱であった。美雪に対する惜別や追慕の響のひとかけらもなかった。せめて、その色でも見せてくれたら内藤も許せるし美雪も救われる、と思っていた柴本は、その期待を微塵に砕かれて、愕然とし、ついで憤怒が全身に猛り狂った。 「貴様、それでも人間か。美雪に恨みでもあるのか」  顔面に血管を浮き上がらせた柴本を、内藤は冷笑するように眺めながら答えた。 「ないね。恨みも関心も……」 「じゃ、なぜ、なぜ美雪にあんなことを……」 「向こうから、そうしてくれと言ったからさ」 「美雪が? そんな馬鹿な。美雪は、そんな娘じゃない」 「そうさ、美雪君は普通の女の子さ。だが、父親が悪かったね」 「父親? 俺がか? 俺のどこが悪い」 「何度も言ったでしょう。僕の家から太陽を奪って、祖母を殺した、と」 「その逆恨みか。それで美雪を穢したのか」 「そうじゃないさ。美雪君は、そのことで僕に謝ったのさ。父の非道を許してくれ、とね。だから僕は答えたよ。いいよ、君の父親と君とは別個の人格だからね、ひどい父親を持ったからって、君の責任ではない……」 「俺の非道だと!」 「あんたが、どう思おうと勝手だ。しかし美雪君は、僕の答えを聞いて、嬉しいと喜びましたからね。そして仲直りのしるしに抱いてくれと言ったんですよ」

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