すごい物理学講義 (河出文庫) [Kindle]

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  •  デモクリトスからアリストテレス、ニュートン、ファラデー、マクスウェル、プランク、アインシュタイン、ボーア、ハイゼンベルク、ディラック、ファインマン、ホイーラー、ド・ウィット等の物理の巨人の研究からループ量子重力理論に至るまで数式を用いず平易に解説されている。知の進展を学べ大変刺激的だ。
     ニュートンは、世界を「時間」「空間」「粒子」として捉え、ファラデーとマクスウェルは、それに「場」の概念を導入した。アインシュタインは、時間と空間を「時空間」として統合し、量子力学は「時空間」と「量子場」として世界を捉える。
     また、世界の限界値として、特殊相対性理論は「速度:光速」、量子力学は「情報:プランク定数」、量子重力理論は「長さ:プランク長」とする。特に、空間の分割には限りがあるとして最小長さを求めたソ連のマトヴェイがすごい。
     スピン理論はよくわからなかった。。。

  • 相対性理論と量子力学を結ぶのは
    「超ひも理論」か「ループ理論」か。

    第1部 起源

    ①デモクリトスは原子から始まる世界を展望した。
    ②アイザック・ニュートンは重力を発見した。
    ③ファラデーとマクスウェルは電気と磁力の場を発見した。

    第2部 革命の始まり

    ①アルベルト・アインシュタインは特殊相対性理論と一般相対性理論を構築した。
    1.過去と未来の間には、拡張された現在が存在し、これは過去にも未来にも属しない。
    2.この世界を作っているのは、場と粒子だけである。
    3.ある場所に存在する物質の量が多ければ多いほど、その場所における時空間の歪みは大きくなる。
    4.標高が高い場所では時間が速く過ぎ、低い場所では遅く過ぎる。
    5.高い位置を飛ぶ間、ボールは時間を稼いでいる。
    6.光線の進路変更、ニュートンの力の修正、時計の進み方のずれ、ブラックホール、重力波、宇宙の膨張、ビッグバン。


    ②量子力学(量子論)は実験結果から直接に生み出された。
    プランク→アインシュタイン→ニールス・ボーア→ヴェルナー・ハイゼンベルク→ポール・ディラック
    1.量子力学が描くのは過程と事象。事象とは、ある過程と別の過程の間に生じる相互作用。
    2.自然の奥底に潜む「粒性」が、無限に対して限界を設定する。
    4.量子力学は、世界の核心に、根源的な「不確定性」を導入した。世界とは絶え間ないゆらぎであり、振動と湧出こそが世界を形づくっている。
    5.ある対象がもつあらゆる性質は、ほかの対象と比較したときのみに存在する。自然界に起こる出来事はすべて「相関性」という観点からのみ描写される。
    6.量子力学は事物ではなく、過程を通して世界について考えるよう教えている。過程とは、ある相互作用から別の相互作用への推移をさす。相互作用の瞬間においてのみ、つまり過程の末端においてのみ、事物の性質はあらわになる。事物が性質を帯びるのは、ほかの事物との関係を考慮したときだけである。

    第3部 量子的な空間と相関的な空間

    ①これまでのまとめ
    1.わたしたちが生きる世界には、屈曲した時空間が広がっている。それは今から140億年前に、巨大な爆発によって誕生した。以来、時空間はずっと膨張を続けている。
    2.この空間は実在する「事物」であり、物理的な「場」である。時空間の力学は、アインシュタインの方程式によって記述される。物質の重みのもとで、空間は折れたり曲がったりする。
    3.銀河の物質は、量子場によって形づくられている。量子場は粒子の形態で現れる。また、波の形で現れる。
    4.宇宙に存在するあらゆる物質は、量子場によって記述される。
    5.量子場を形成するひとつひとつの粒子は、別の何かと相互作用を起こすときだけ、ある一点に居場所を定め、その姿をあらわにする。ひとたび相互作用を終えるなり、量子は「確率の雲」のなかへ溶けこんでいく。

    ②量子的な時空間
    1.わたしたちが生きている巨大なスケールでは、空間は平坦で滑らかであり、ユークリッド幾何学によって問題なく記述される。しかしプランクのスケールまで目盛りを下げれば、空間は細かく切り刻まれ、ぶくぶくと泡立っている。
    2.ループ量子重力理論(ループ理論)は、一般相対性理論と量子力学を結びつけようとする試みである。
    3.空間は重力場であり、重力場の量子は「空間の量子」であると考えられる。
    4.この世には、最小の体積が存在する。最小の体積よりも小さな空間は存在しない。
    5.空間は、確率として考えられるあらゆるスピンの網をおおっている、確率の雲である。(この意味が理解できない)
    6.空間とは、関係という糸の絶えざる湧出から生じる織物である。一本の糸は、それ自体としては、どの部分にも、どんな場所にも存在しない。糸自体が、相互作用のなかで、場所を創り出すのである。空間は、個々の重力の量子の相互作用から生み出される。(わからん)
    7.事物(量子)は空間のなかに在るのではない。量子は、自身と隣り合っている量子のなかに在る。空間とは、隣近所との関係性の織物である。
    8.時間は存在しない。量子とは、量子場の量子である。光は、場の量子の一種から形成されている。空間とは場のことにほかならず、空間もまた量子的な存在である。この場が展開する過程によって、時間が生まれる。要約するならば、世界はすべて量子場からできている。
    9.電磁波とは、光子を大きなスケールで捉えたときのおおよその姿であり、光子とは、電磁波がたがいに影響を与え合うときの手段である。同様に、連続的な空間と時間とは、重力の量子の力学を大きなスケールで捉えたときのおおよそのイメージであり、重力の量子とは、空間や時間が互いに影響を与え合うときの手段である。

    第4部 空間と時間を越えて

    1.宇宙はどこかで反発し、巨大爆発に後押しされるようにして、ふたたび膨張を始める。この巨大な反発を「ビッグバン」の代わりに、「ビッグバウンズ」と呼ぶ。
    2.今日の物理学者は、わたしたちの宇宙が生まれる前には、別の宇宙が存在していたと考えている。空間と時間が確率のなかで溶解する量子的な局面を経た末に、ひとつの宇宙が崩壊し、新しい宇宙が生まれた。
    3.科学とは、「技術」を提示するより前に、「見方」を提示する営み。
    4.「ループ理論」のほかに、もっとも盛んに研究されているのは「超ひも理論」。「超ひも理論」が成り立つためには、超対称性粒子の存在が確認されなければならない。超対称性粒子はまだ発見されていない。
    5.量子重力理論を援用した場合、ブラックホールの中心に近づくにつれ、落下する物体は反発力を受けて速度を落としていき、密度は極限まで高まるものの、その数値はあくまでも有限であり、ブラックホールの中心では、事物を反発させる巨大な圧力が発生する。ブラックホールの内側では、崩壊する物体の反発はすさまじい速度で展開する。しかし、外側から眺めれば、反発の過程が数十億年にわたる可能性もある。ブラックホールとは、遠い未来への近道である。
    6.特殊相対性理論が最大速度である光速を発見し、量子力学が情報の最小単位であるプランク長を発見した。
    7.1948年、数学者であり工学者でもあったアメリカ人のクロード・シャノンが「情報」という用語の科学的な意味を定義した。情報とは「起こりうる選択肢の数を計測したもの」である。
    8.今日の研究者たちは、情報という概念が、世界を理解するうえで有益であり、必須であると考えている。それは情報が「たがいに交信する複数の物理的な系の可能性」を測定できるからである。
    9.過去と未来は、熱によって区別される。

  • 内容は半分以上理解できなかったが、今まで何となく聞いたことのある物理学の理論が式などを使わず書かれていて、知れて良かったと思う。興味をひく文体で読み進める毎に世界の神秘を解き明かしていく感覚になり、非常にワクワクしながら読むことができた。

  • グラスに入った水を観察していると
    水の中のホコリ(=粒子)がゆらめいているのが見える。
    ➡︎粒子に分子が衝突しているから

    無限に分子が小さく存在すると、
    その衝突は全体的に均整のとれたものとなり
    粒子が動くことはない。つまり、グラスの中の水は完全に静止した状態になる。
    ※左からぶつかる分子と右からぶつかる分子の数が平均的に同じになり、粒子への左右からの衝突が相殺される
    ⇔分子が無限ではなく有限だった場合、その均整がとれず、粒子への衝突も相殺ができない。よって、粒子は動き回る。つまり、グラスの中の水は完全に静止しない。

    アインシュタインは、この粒子の動きから分子の大きさを数学的に求め、最終的に原子の大きさを求めた。これにより、物質は小さな粒からできていることが証明された。

    [アキレスと亀]ゼノンのパラドックス
    アキレスは絶対に亀に追いつけない
    ⇦アキレスが亀に追いついて抜くまでのシーンを無限回おこなっているにすぎない!
    つまり、アキレスはいずれ亀を抜かす!!
    ➡︎この無限回を考えるのが量子の世界!


    しかし曲がるのは空間だけではない。時間もまた、重力の影響受けて屈曲する。アインシュタインは、標高が高い場所では時間が早く過ぎ、低い場所では遅すぎると予見した。計測すると、それは本当だった。今日、多くの研究者は極めて正確な時計を持っており、数センチの高低差であっても、この実に奇妙な現象を確認することができる。例えば、1台の時計を床の上に、もう1台を床の上に置いたとする。床の上に置かれ時計は、机の上の時計と比べて、ゆっくりと時間を計測する。一体なぜ、このようなことが起きるのか?なぜなら、時間は普遍的で固定的なものではなく、近くにある物体の質量から影響を受けて伸び縮みするものだからである。地球は、他のあらゆる質量と同じく、重力を屈曲させる。その結果、地表近くでは時間の流れがゆっくりになる。双子の一方が海のそばに、もう一方が山の頂に暮らしている場合、この2人が久しぶりに再会した時、ほんのわずかではあるが、後者の方が年老いていることになる。(111)

    ファラデーによって導入された場の概念がなければ、数学の劇的な力がなければ、ガウスとリーマンの幾何学がなければ、この「何らかの物理」は曖昧模糊としたままであった。新しい概念と数学に支えられ、アインシュタインは「何らかの物理」を描写する方程式を立てた。そして、デモクリトスの虚空が備える「何らかの物理」の内部に、色鮮やかな、見るものを呆然とさせる世界を発見した。そこでは宇宙が爆発し、出口のない穴の中に空間が沈み込み、地表に近づくにつれて時の流れが遅くなり、限りない宇宙の広がりが海の表面のように小波を立てている。(116)

  • 2023/4/7

  • デモクリトス・ルクレーティウスなどにのこる古代原子論が見いだした世界は粒でできているという〝物の見方〟が、現代の量子重力論の量子ループ理論につながっているという点が、とにかく面白い。

    ニュートンの空間・時間・重力は、一般相対性理論で重力が空間のゆがみとなり、時間は空間と合わさって時空になる。結局、量子ループ理論では量子場しかないということになる。この理論は空間を無限に分割できるとはみない。プランク長で宇宙の収縮ははね返るそうだ。(ビッグ・バンではなく、ビック・バウンス)

    解説では趙ひも理論と、量子ループ理論の比較があった。前者は世界を粒とみず、連続としてみているところがちがうそうだ。

  • 私が最後に物理学に触れた時は、素粒子があって、その間に正体を同じくする4つの力が働いている、時空や重力はちょっとまだ···特に時間は···そんな感じでした。空間もまた量子ですべてはシンプルに理解できる(かもしれない)、時間は物理学的には無い(かもしれない)、という話は極めて驚異的で、しかし、その単純さゆえ、納得できるもののように思えました。専門外の人向けに順を追って書かれていて、大変良い本だと思いました。

  • 数式が極力少なく、文章で伝えてくれているので文系の私でも理解しやすい。
    ニュートン力学、相対性理論、量子論が順序だてて説明されていて完全ではないが、物理学上での世界観、世界がどのようなものか、が少し理解できた

    例え話ではなく、物理学上は本当に時間は存在しないのだということはわかった

    私達は地球が丸いということを、当たり前に思っているが、将来の人間は時間は存在しないのが当たり前に思うのだろうか?

  • ・ループ量子重力について知りたくなってこの本を買った。→ 詳しくは書かれていない。イメージのみ。

    ・ひも理論とループ量子重力理論のうち、現状のところ観測結果と合致しているのはループ量子重力理論の方?

    ・エントロピーの第2法則によって? 時間は存在しない。

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著者プロフィール

1956年、イタリア生まれ。ボローニャ大学からパドヴァ大学大学院へ進む。ローマ大学、イェール大学などを経てエクス=マルセイユ大学で教える。専門はループ量子重力理論。 『すごい物理学講義』など。

「2022年 『カルロ・ロヴェッリの 科学とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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