岩井克人「欲望の貨幣論」を語る [Kindle]

  • 東洋経済新報社
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感想・レビュー・書評

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  • 宇沢弘文先生の高弟 さすが志が違う
    1.現代経済の本質
     新古典派経済学 フリードマン→主流派経済学に
     動的不均衡論  ケインズ→衰退 英国経済学
    2.リーマンショックは終わっていない
     激烈な金融緩和で問題の先送り
     B.バーナンキ
    3.コロナで更に先送り
     中銀のBSというマグマは拡大している

  • NHKの「欲望の資本主義」シリーズの中でも岩井克人先生のインタビューの内容を書き起こして掘り下げた内容の本。ビットコインの貨幣性等、旬なトピックを掘り下げつつも平易に読めるような内容・分量に纏められている。丸山俊一さんのコメントも含めて楽しめる仕上がりである。

    貨幣が持つ特性の捉え方と、貨幣の無限の増殖を求める経済活動としての資本主義という考え方は、岩井先生にとってはずっと変わっていなくて、デジタル化が進もうがビットコインがブームになろうが関係ない。その不変的なモノの見方を頭の片隅にでも入れていれば、世の中で起きている事象の捉え方も変わりそうだと思った。

    とはいえ私はすぐに忘れてしまうので、印象に残った記述を以下に載せておく。

    「貨幣を持つことによって人間は匿名性を得る」
    「私たちは自由が増えれば安定性が減り、安定性を増やすと自由が減ってしまうという、「自由と安定との二律背反」の中で生きて行かざるをえません」
    「貨幣とは貨幣であるから貨幣であるという自己循環論法」
    「貨幣は投機である」
    「貨幣に対する欲望には、限りはありません。無限です」

  • p.2020/11/24

  • やっぱり面白い。岩井克人の文章。お金に纏わるちょっと哲学的な考察。他の著書よりも読みやすい構成。
    ビットコインに対する見解は色々参考になると思う。

  • タイトルに「欲望の貨幣論」という言葉が使われているが、これはNHK「欲望の資本主義」シリーズの番外編的な番組を書籍化したからであり、本書の内容は決して「欲望」にスポットを当てたものではない。
    「貨幣」の本質、「市場経済」の本質をとても分かりやすく語っている本。

  • ・アダム・スミスの間違い(でもアダム・スミスは市場には高い倫理が必要だという認識だったらしいが)

    ・貨幣は人を自由にする。

    ・市場主義が強くなると、市場の不安定性が増す。安定させるために中央銀行や規制といった「不純物」が必要。


    ハイライト(黄) | 位置No. 171
    私たちは、自由が増えれば安定性が減り、安定性を増やすと自由が減ってしまうという、「自由と安定との二律背反」の中で生きて行かざるをえません。

    ハイライト(黄) | 位置No. 267
    おカネの価値は、太古の昔においてすら、モノの価値には還元できなかったのです。 4 ドラクマ硬貨がいかに神秘的に輝く金や銀でできていたとしても、その貴金属としての価値は、 4 ドラクマよりは低かったはずなのです。それだからこそ、人々は、 4 ドラクマ硬貨を貴金属としては使わずに、 4 ドラクマの価値の商品と引き換えに他人に手渡したのです。それで初めてドラクマ硬貨は、「天下の回りもの」である貨幣として、人から人へと手渡されていったのです。もちろん、金貨や銀貨以前に金や銀それ自体がおカネとして流通していたときでも、同じことが言えます。すなわち、以下に述べるおカネについての「基本定理」が証明されたというわけです。 「あるモノがおカネとして流通しているときには、おカネとしての価値はモノとしての価値を必ず上回っている。」

    ハイライト(黄) | 位置No. 360
    すなわち、おカネの価値とは、この「私」が与えるのではない。国が与えるのでもない。「ほかの人」が与えてくれるのです。いや、もっと広く、「社会」が与えてくれるのです。 「貨幣の価値は社会が与える。」

    ハイライト(黄) | 位置No. 387
    資本主義社会においては、貨幣の価値だけでなく、すべての商品の価値も、社会によって与えられる。」

    ハイライト(黄) | 位置No. 421
    貨幣とはだれもが貨幣として受け取るからだれにとっても貨幣なのである」ということになります。さらに、この文章を受け身に直すと、「貨幣とは貨幣として受け取られるから貨幣なのである」ということです。思い切って縮めてしまうと、以下になります。 「貨幣とは貨幣であるから貨幣である。」

    ハイライト(黄) | 位置No. 439
    貨幣とは、すでに述べたように、よく言えば「天下の回りもの」ですが、悪く言えば、だれも手元には置きたくない「ババ抜き」ゲームの「ババ(ジョーカー)」にほかならないのです。 ということは、貨幣が貨幣として流通するためには、モノとしては価値がなければないほどよいということになり

    ハイライト(黄) | 位置No. 508
    ビットコインが投機商品になった途端に、貨幣になる可能性は 99% 消えてしまいました。理由は簡単です。貨幣の基本定理が破られてしまうからです。 ビットコインが投機商品になるということは、どういう意味でしょうか? ビットコインを持っている人々が、いま現在の相場価格が 1000 円の ビットコインが、 1 ヵ月後にはたとえば 2000 円に値上がりすることを期待しているということです。それは、その人にとっての 1 ビットコインの現在の価値は、相場の 1000 円ではなく、予想された値上がり益を含めた 2000 円であるということです(ここでは、将来価値の割引率を 0 としています)。すなわち、ビットコインの「貨幣」としての価値は 1000 円なのに、投機対象の「商品」としての価値は 2000 円になっています。 2000 円 1000 円ですから、「あるモノがおカネとして流通しているときには、おカネとしての価値はモノとしての価値を必ず上回っている」という貨幣に関する基本定理がものの見事に破られてしまっている。

  • 貨幣は貨幣の性質を持つゆえ貨幣である。

  • 貨幣とは何かの本質を追求し、かつ優しく教えてくれるないよう。
    人類の歴史で物々交換の経済からある時貨幣が使われるようになったがこのことが社会構造をまったく新しくした。それは、紀元前6世紀ころのギリシャで起こりポリスを完成させることにつながった。ポリスの基本構造は貨幣にあることをアリストテレスが論理的に解説していること。そのことから現在の資本主義の理解へ本は導いてくれる。
    10年ほど以前からビットコインという仮想通貨(暗号資産)が出てきたがこれの将来性についても明確な解説がなされている。
    資本主義の運営ではある時期が来ると大恐慌(極度のインフレやデフレなど)が起こる可能性がある。これらを未然に防ぐことも貨幣の理解にある。
    現代社会を読み解くに非常に興味深い内容が詰まっている。

  • みなさんお金は好きですか?おおっぴらに好きと答えるのはなんだか憚られる気もしますが、あって困るものではないでしょう。お金があれば裕福な生活ができますからね。では、なんでお金があると物が買えるのでしょうか?貨幣そのものに価値があるからでしょうか?それとも法律で決まっているからでしょうか?筆者の答えは、「貨幣とは貨幣として受け取られるから貨幣なのである」というものです。それじゃ答えになってないじゃないか、と思われるかもしれませんが、そうとしかいえないんです。自分は、他人がお金を何かの対価として受け取ってくれると期待するからお金を受け取る。その他人も、ほかの他人がお金を何かの対価として受け取ってくれると期待するからお金を受け取る。そのまた他人も、、、と延々に循環します。

    これは、貨幣とは投機である、ということもできます。投機とは、自分がモノとして使うためでなく、将来、他の人に売るために何かを買うことを指しますが、株のバブルも貨幣もおんなじ現象と言えます。むしろ株のバブルよりも純粋な投機と言えるかもしれません。貨幣は不安定な存在です。

    貨幣を手に入れることは、未来の可能性を手に入れることを意味しますが、これにより人間は無限の欲望を持つことが可能になりました。貨幣がないとすると、個人が消費できる量には限りがありますから(たくさん食べたらお腹いっぱいになるし、豪邸が10軒あっても管理できない)、欲望にも限りがあります。しかし、貨幣があれば話は別です。未来の可能性はいくらあっても困らない。

    一方で、お金のない世界は自由がありません。人間は個体としては弱い生き物ですから、協力できないとすぐに死んでしまいます。隣人から離れて生きることはできません。でもお金があれば別です。生きていくためのサービスをいくらでも買うことができます。貨幣と自由はセットなのです。

    いままでなんとなく使っていた貨幣の、本質が何かを考える本です。

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著者プロフィール

丸山 俊一(マルヤマ シュンイチ)
NHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサー
1962年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。「欲望の資本主義」「欲望の時代の哲学」などの「欲望」シリーズをはじめ「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」「人間ってナンだ?超AI入門」「ネコメンタリー 猫も、杓子も。」「地球タクシー」他、異色の教養番組を企画・制作。
著書『14歳からの資本主義』『14歳からの個人主義』『結論は出さなくていい』他。制作班などとの共著に『欲望の資本主義』『欲望の資本主義2~5』『岩井克人「欲望の貨幣論」を語る』『欲望の民主主義』『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するⅡ』『マルクス・ガブリエル 危機の時代を語る』『マルクス・ガブリエル 新時代に生きる「道徳哲学」』『AI以後』『世界サブカルチャー史 欲望の系譜 アメリカ70~90s「超大国」の憂鬱』他。東京藝術大学客員教授を兼務。

「2022年 『脱成長と欲望の資本主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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