日本企業の勝算―人材確保×生産性×企業成長 [Kindle]

  • 東洋経済新報社
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感想・レビュー・書評

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  • 日本企業の生産性が低いのは規模が小さいため。
    そのための取り組みを今後していく必要がある。

  • ・優秀な経営者は限りがあるから、企業の数を減らすべき。大学では、クリティカル・シンキングを訓練すべき。日本ではエピソードベースの考え方がはびこっている。

  • ●要点
     ・中小零細の割合が多すぎる。大企業&中堅企業へと再編し生産性を向上
      --->無駄に数が多く、産業構造も非効率に
     ・2つの生産性
      生産性=総GDP / 総人口(=労働生産性×労働参加率)
      労働生産性=総GDP/労働人口
      --->カタールの生産性は突出して高いがそれは石油資源の多さだけではなく
        イスラム圏からの外国籍労働者(男性)の受け入れにより人口の男女比率は
        男性100に対して女性32.7(世界最低)に=労働参加率が87%(世界一位)
      --->生産労働人口げ減少する日本では労働生産性の向上しか道はない。
        アベノミクスでは女性の労働参加率を高めて”維持”を図ったがこれ以上増加
        余地が少ない&女性は低賃金職が多く伸びしろが限界(=これは別問題)
      ---> 2060年に今のGDPを維持するには労働生産性を1.7倍にする必要あり。

     ・全要素生産性=資源を有効・効果的に配分できているか(=インフラ・制度)
    ---> この指標が日本は極めて低い。社長が交代した途端に業績が向上するように
        人材・資本という他の2変数以外の寄与も極めて大きい。中小零細が多すぎ
        非効率化しているのは一因。
    --->社会人教育の投資が限定的なのも要因。高校教育までは優れる日本だが、
        中小零細を中心に教育投資ができず他国と開きが生じる

     ・中小企業の売上分布は1億円以下が50%強、中央値が9900万、ave4.8億円
      --->そもそも成長を求めてない / 節税対策(法人成り)も相当多い。

    ●大企業による搾取を言い訳にするな
     ・搾取されるくらいの規模なのが問題だし、
     ・経営者の能力が低いから価格下げ以外の企業努力ができてないのも原因
     ・こうした前提要因も分析せず安易な保護法案(p175)を作ってはないないか?

    --->中小企業優遇策を取る国では、定義のしきい値(e.g.従業員数50名以下、
        売上xx以下)が見事に天井になりそこに集結し(bunching)、成長の重しに。
      --->米国では、大企業への厳しい規制も、中小企業への優遇策も特段なし

    ●最低賃金を抑える=中小企業の優遇”補助金”
     ・最低賃金を抑えることの受益者は中小企業(雇用の確保が容易・現状維持でOK
     ・米国($60558/yr 、世界12位)日本($40,863/yr 世界31位)で比較すれば
      仮に人材レベルを同じとすると差額$2万を補填している(44-55兆円)のと同じ

    --->システム投資などのイノベーションが”割高”になり導入スタック、事業戦略
        を見直す必要性もなくなる。

    ●Monopsony
     本来:買い手が1つ--->供給者に対して独占的な支配力を持つこと
     最近:新monopsony論として、雇用者が労働者に対し相対的に強い交渉力を行使       
        割安で同動力を調達する
     --->最低賃金上昇は失業者増をもたらす(古典的経済論)に対してそんなことは
       どの国でも起きてない。そもそも限界価値以下で”割安”に雇用しているので
       それを上回らない範囲では継続雇用できる。

    ●生産性を決める要素
    生産年齢人口の割合/労働参加率/企業の平均規模/輸出率/イノベーション
     ※輸出大国日本の欺瞞。輸出総額ではNo.4だが対GDP比では世界160位。
      輸出体制を整えられるだけの人員がいない。

    ●優秀な経営人材には限りがある、という前提認識。
     350万社=350万人+優秀な経営能力を持った人間が日本にいるわけがない。
     これは他国も同じ。だから税制優遇も”ふるい(時限性)”をかけている。
     創業xx年目以下で、年間xx名以上の採用をできる企業、など一部が市場を牽引。

    ●起業家への間違ったイメージ。
     米国では95.1%の起業家が大卒以上/47%は大学院以上、起業時の平均年齢は40歳
    7割が既婚者、1名以上の子供がいるのが60%弱。
    Annual Report on European SMEs 2017/2018

    ●労働人口が減っていく中、日本は労働生産性を上げなくては今の経済規模を維持できない。日本では今後数十年にわたって、先進国でも突出したスピードで生産年齢人口が減り、高齢化が進む。労働者1人、1時間あたりの社会保障費は現在の824円から、2060年には2150円まで増える。人口減少時代に変わったいま、社会保障費を確保するためにはGDPを少なくとも現状維持しなければならない。そこで必要となるのが、どの先進国よりも大きい「生産性」の改善。

    ●労働生産性の低い国々には「中小企業で働く人の割合が高い」という共通点がある

    ●中小企業は雇用を生むため、人口が増えている局面においては大きな役割を担っていた。しかし、人口減少局面においては、規模の小ささに由来する生産性の低さがかえって経済全体の足を引っ張ってしまう。

    ●現在の中小企業優遇策をやめる。規模ではなく投資行動に対してインセンティブを設け、企業の成長を促すための政策にシフトすべきである

  • ・生産性=労働生産性×労働参加率。女性の活躍推進などで参加率は上がっているが限界が近い。労働生産性を上げなくてはならない。
    ・生産性は「人的資本の生産性」「物理資本の生産性」「全要素生産性(人的・物理に含まれない要素すべて)」の3つに分かれる。全要素~はブランド力、デザイン、技術、社員のスキルアップなど。全要素~は社会インフラによって決まる。日米の生産性の違いは主に全要素~によって説明される。
    ・日本の人材投資の問題は大学以降の教育に大きな課題がある。
    ・企業数が減るとGDPに悪影響が出ると考えられがちだが、むしろ付加価値は増加する傾向にある。
    ・日本の企業は他国に比べて規模が小さい。日本企業の平均規模は欧州の大手先進国に比べて23%小さく、アメリカに比べて40%小さい。
    ・中小企業は人口増加時代に雇用の受け皿として大きな役割を果たしたが、今は人口減少時代。受け皿としての役割は終えた。
    ・企業の規模をベースにした規制・補助はbunchingを生む。日本の中小企業優遇策は手厚すぎる。特に資本金による定義は無意味。日本だけ。低すぎる最低賃金も実質的な補助金となっている。
    ・経済学で考えられる本来の賃金より安く労働者を雇用することができることを「monopsony」という。「monopsony」を放置すると、企業規模が縮小する、輸出比率が低下する、格差が拡大する、労働市場の流動性が低下する、サービス業の生産性が低下する、女性活躍が進まない、有効求人倍率が高止まりするなどの弊害が出てくる。日本は「monopsony」大国。
    ・最低賃金の引き上げは3つのルートで生産性を高め、労働集約型業界に規律をもたらす。①生産性の低い企業が起業しづらくなる、②既存企業への刺激になる、③生産性の低い企業から労働者が離れる。
    ・日本の産業構造は中小企業によって歪められている。効率のよい産業構造を持つ国は、大企業にだけ規制を厳しくするようなことはしない。中小企業の規模を大きく定義している。中小企業を優遇する政策が限定的。最低賃金が相対的に高い。
    ・経営者の質と生産性に影響を及ぼす。日本には中小企業が多すぎ。結果、質の低い経営者が増えた。
    ・企業が最先端の経営手法を導入しない理由。①経営手法の存在を知らなかった、②メリットを認識していなかった、③正しくない情報や固定概念を覆すことが難しかった、④変革を先延ばしにする。ちなみに⑤資金不足の影響は確認できなかった。
    ・持続的に輸出をするためには十分な企業の規模が必要。輸出して大きくなるのではなく、輸出を始めるために規模を拡大し、輸出を行うための人材を確保している。
    ・日本の生産性が低い最大の原因は、生産性を上げようにも上げられない規模の企業を数多くつくってしまったことにある。
    ・人口減少・高齢化が進行する社会において応援すべき企業の特徴は、①イノベーションを起こす企業、②最先端技術の普及に寄与する企業、③ベンチャーに限らず成長している企業、④輸出をする企業、⑤研究開発に熱心な企業、⑥中堅企業
    ・中小企業の合併・統合を促す政策が必要。
    ・①中小企業の定義を変える(最低500人未満)、②中小企業優遇策を減らす、③最低賃金を上げる、必要がある。
    ・日本の中小企業数は減少傾向にある。企業数が減って、労働人口が集約されるのは正しい方向。さらに押し進めていく道が日本と企業の「勝算」といえる。

  • 本書を読んで、非常に納得した。
    みんなに読んでもらい、みんなで同じ方向を向いて、頑張って強い日本にしたい。
    ただ、まだまだ知識が浅いため鵜呑みにしているだけで、自分の意見は一切無いような気もする。。。(強い日本に…って言うのが私の意見か)
    いろんな視点から本書を読めば、例えば中小企業の経営者はふざけるなって思うかもしれない。
    もっといろんな視点の意見を取り入れて、自分なりの考えを持てるようになりたい。

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著者プロフィール

デービッド・アトキンソン
小西美術工藝社社長
1965年イギリス生まれ。日本在住33年。オックスフォード大学「日本学」専攻。裏千家茶名「宗真」拝受。
1992年ゴールドマン・サックス入社。金融調査室長として日本の不良債権の実態を暴くレポートを発表し、注目を集める。2006年に共同出資者となるが、マネーゲームを達観するに至り2007年に退社。2009年創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社に入社、2011年同社会長兼社長に就任。2017年から日本政府観光局特別顧問、2020年から政府の「成長戦略会議」委員などを歴任。
『日本人の勝算』『デービッド・アトキンソン 新・観光立国論』(山本七平賞、不動産協会賞受賞)『新・生産性立国論』(いずれも東洋経済新報社)など著書多数。2016年に『財界』「経営者賞」、2017年に「日英協会賞」受賞。

「2023年 『給料の上げ方 日本人みんなで豊かになる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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