- Amazon.co.jp ・電子書籍 (445ページ)
感想・レビュー・書評
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紆余曲折な人生でもいいんだよ、むしろそっちの方がいいんだよ、と元気づけられる本。
小さい頃からの習得が大きなメリットとなるゴルフやチェスは優しい世界だから。ほとんどの分野は優しくない世界。だから他分野の知識も取り入れて考えていくべきというのが印象的だった。
フェルミ推定が考え方を養うのに有効だそうだから、取り入れたいと思った。 -
・タイガーウッズはヘッドスタートで成功した典型的な人物である。幼少期から一つの訓練を積み重ね、世界的に成功した例は多くあるが、それらは「親切な学習環境」における話である。すなわち、訓練の成果がすぐに正しい形でフィードバックされる学習環境である。
・ところが、実際世の中の多くの課題は「意地悪な学習環境」であり、正しい訓練を行っていたとしても、悪いフィードバックが返されることも多い。努力の方向性の良しあしが明らかになるのは、時間がたってからであることがしばしばである。
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一応読み終わったけど、タイトル以上のことは言っていないような気がします。
専門を極めると視野狭窄になるとか、全く関係のない分野の知識が活かせる場合があるとか、異なる分野の人々が協力するとより大きな成果が出せるとか、そんな話だったように思う。
専門バカみたいなものになるなということでもあり、一方で、全てを出来ることはないので、何らかの専門は持たないといけないのも事実。絞るのか広げるのか、生きていくうえでの戦略を考えるきっかけになる本かも。 -
超専門特化が進む現代において、知識や経験の深さだけでなく幅の広さを持つ人材がますます求められているということがよくわかりました。
問題があいまいで明確なルールがないことに取り組む必要があるため、知識や経験の幅広さが、専門領域の知識からは得られない洞察を生み出す必要があるのかなと思いました。 -
タイガー・ウッズやプロ棋士を見れば、早期教育はエリートになるためには必須のことのように思える。しかし、早期教育が有効となるのはルールが固定化されており、パターン認識が有効に働く場合のみであると本書は説く。
人生の多くの局面はルールが決まっておらず、特定のパターン認識に固執することで却ってクリエイティビティを失うことすらあるのだ。
ルールの決まっていない意地悪な世界で生き抜くためにはT型の人材が求められる。自分の専門という軸を持ちながら積極的に越境し、アナロジーを駆使して問題を解決していく人材がT型と定義される。実際、3Mにおいて最も特許を取った人間は特定の分野に特化した人間よりも越境をした人間だという。
とはいえ、専門性を軽んじてはならない。本書においても横井軍平を例に「スペシャリストとゼネラリストが一緒に仕事をした時に最も良い成果を出す」と述べられているが、専門知識を軽視する現代の風潮においてはこのメッセージはもう少し強調しても良いように感じた。 -
スペシャリスト信仰を排除し、ゼネラリスト優位を解く一冊。
専門特化が通用するのはゴルフやチェスのように、ルールが適切で大きな変わりがないものだけ。
専門特化というのは短期目線の言葉であり、今日使えたスキルやビジネスモデルが、明日には崩壊したり廃れるのが当たり前。
専門性より大事なのは「知識の幅を広げる」こと。いろんな知識をもつゼネラリスト思考にならないと、重宝されないし生き残れない。
1万時間頑張っても通用するのは、問題が明確で、ルールが変わらない世界だけ。
変化が目まぐるしい現代では、新しい常識やルールが次々と登場するので無意味。
むしろ同じ学習を行っていると、専門外の領域に、持論を構築できなくなり弱くなる。
常に、別次元の世界に浸かり、多角的な見識を持つようにするべき。
さまざまな事象間で共通項を見出し、類推力(アナロジー)を保つ必要がある。 -
不確実性が高いテーマ、現代では、早めの専門特化より、回り道が強みになる。
自分の考えに従って、ピボットを重ねてキャリアや経験の幅を持つことは、きっとよりよい将来につながる、そんな思いを後押ししてくれる、勇気をくれる本。 -
人類の文明や科学の発達には、個々人の専門性の高まりが背景にあると言えるかもしれません。確かに、産業革命や仕事の分業による生産性の向上、経済のグローバル化など、私たちが今日享受している恩恵は高度に専門化した数多の技術が寄与しているように思います。しかし、あまりにも1つの分野の専門性に特化することの弊害が明らかになりつつあり、今日のトレンドは、特定の分野の専門性を極めるよりも、より広い分野・領域に関心を拡げる方向に向かいつつあります。知識の「深さ」を極めるのではなく、「幅」を拡げるというアプローチは、これまでサイロ化、たこつぼ化していた専門家では解決できない問題を解決したり、イノベーションを起こす起爆剤になりうるように感じています。
タイトルにもあるように、本書はおおむね、知識の「幅」を武器にしていこう!という内容です。ですが、何かひとつの専門分野に精通して深い知識を持つべきなのか?それとも他の分野に対しても幅広い知識や知見を持つべきなのか?といった、単純な二元論とは一線を画します。むしろ専門化がどのような点で優れていて、どのような点で失敗する傾向があるのかを認識した上で、ゼネラリストがもたらす価値を探り評価することで、ジェネラリスト的なアプローチの可能性を見出してところに本書の主題があると言えます。
さて、いわゆる1万時間の法則や最近話題のGRITなど、一般的に、その道において評価されうる専門性を獲得するためには、ひたすらわき目も振らず集中してその分野を極めていくことの重要性は当たり前のように語られています。このことによって、スキルを身につけたい人、楽器を演奏したい人、自分の分野をリードしたい人は、早くから始めて、集中して、できるだけ多くの時間をかけてじっくりと練習するべきだと信じている人も多くいることでしょう。
しかし、私たちのこのようなビリーフに対して本書は異を唱えます。顕著な成績を残したアスリートや、芸術家、音楽家、発明家、科学者について、彼・彼女達が残した成果や業績の背後にあった要因を調査して分かったのは、私たちの予想に反して、専門特化型ではなくジェネラリスト的なアプローチがカギであったという事でした。このことを本書は冒頭で、幼い頃からゴルフに夢中になっていたタイガーウッズと、テニスに落ち着くまでたくさんの種類のスポーツを探求してきたロジャー・フェデラーの両者を対比し、狭い専門の範囲を超えて興味を追求することによって、いわばアウトサイダーとしての成功を獲得するという事例で説明しています。
なぜ、長い時間をかけた専門性の深堀よりも、知識や関心の幅の広がりが成功をもたらしうるのか?
リアルで起きている事象はというのは、ゴルフやチェスのような、目標がシンプルで進歩が測定しうる限定的なルールのもとにあるのではないという事。現実の事象は、ルールが無数にあり、目標は変化し、進歩が簡単に測定・予測できない、予定不調和な営みであるため、多くの異なる状況に対応できるように脳を訓練した人、つまりゼネラリスト的な思考やアプローチが、より良いパフォーマンスにつながるからだ・・・と本書は主張します。
本書を読んで私は、ますます専門化していく社会の中で、狭い範囲だけに囚われるのではなく、自分たちの分野の外に出て、別の視点から新鮮な見方をすることができなくなってしまう可能性を強く感じました。それだけでなく、私自身の普段の仕事を振り返ってみて、チームを横断して仕事をしたり、仕事の文脈を俯瞰的に見ることの重要性を再認識した次第です。私もある程度の社会人のキャリアを過ごしてきましたが、これまで自分で専門にしよう!と考えた分野で残念ながら今のところ顕著な成果と言えるものがほとんどない状況ですが、本書を読んだことで、むしろ比較的遅い時期に自分の専門分野に着手したジェネラリスト的な成功の道筋を見いだせたことが最大の収穫でした。