メタ倫理学入門 [Kindle]

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  • 哲学でローティのプラグマティズムがすべて相対化されていることを問題視している、ミサックやベルクソンなど批判者が、その主張で倫理や道徳の実在を前提しているように感じ、より無理のある論理を持ち込んでいるように感じて、違和感を持った。どういう理路なのかとメタ倫理学に興味をもった。


    メタ倫理学の取り組みが、見通しよく非常に整理されていてわかりやすかった。

    【メタ倫理学の多く括りの問題】
    ①道徳は実在しているか
    ②道徳判断を下すとは何をしていることなのか
    ③我々は道徳的にいきなければいけないか

    【①の中で道徳非実在論の分類】
    Q1;道徳的な事実や性質は実在するか
    YES→道徳実在論
    NO→
    Q2:道徳って有害か、有益か?
    有害→道徳全廃主義
    有益→
    Q3私たちは道徳をフィクションとしてとらえているか
    考えている→解釈的虚構主義
    考えていないが考えるべき→改革的虚構主義
    考えにくいし考えなくていい→道徳保存主義

    【①の中で道徳実在論の自然主義の分類】
    Q1;道徳的な事実や性質は実在するか
    NO→道徳非実在論
    YES→
    Q2:道徳的な事実や性質は自然的なものか
    NO→非自然主義
    YES→
    道徳的な事実や性質は自然的な性質で置き換えられる?
    NO→非還元主義
    YES→
    道徳的な事実や性質と自然的な性質があらわすものは同じ?
    YES→分析的還元主義
    NO→総合的還元主義

    【①の中で道徳実在論の非自然主義の分類】
    Q1;道徳的な事実や性質は実在するか
    NO→道徳非実在論
    YES→
    Q2:道徳的な事実や性質は自然的なものか
    YES→自然主義
    NO→
    Q3:道徳的な事実や性質はどんな仕方で実在する?
    神が与える→神命論
    強い意味で実在する→強固な実在論
    理由などを中心に最小限の意味で実在する→理由の実在論など

    【①の第三の立場】
    実在と非実在論のハイブリッド系が出現しているらしい
    ・準実在論
    ・感受性理論
    ・手続き的実在論

    その他、そもそもどちらでもよいのでは?
    →静寂主義(プラグマティズム)

    【②の問題の2派閥】
    A:表出主義
    Q1:道徳的判断は道徳的事実を記述するもの?
    YES→記述主義
    NO(記述に加え判断者の態度の表出も行う)→
    Q2:表出される態度とはどんなものか
    感情表現→(表現型)情緒主義
    説得→(説得型)情緒主義
    指令/推奨→指令主義
    規範受容→規範表出主義

    B:認知主義
    道徳的判断は主に何をするもの?
    道徳的態度を表出するもの→表出主義
    道徳的事実を認知し、それに基づく信念を形成するもの→認知主義
    Q2:道徳的判断は動機づけの力を持つ?
    YES→内在主義
    NO→外在主義(さめた気持ちが入っていない感じ)
    Q3:信念と欲求は別物?
    YES→ヒューム主義
    NO→反ヒューム主義

    【③の問題の取り組み】
    ・道徳は最終目的か目的(生存や良い生活)のための手段か
    ・見方の倫理
    →倫理として重要なのは各判断ではなく、人生のコンテキストの中で善に向かう意思や態度である。

    【最後に私の考え】
    ①については、どれにはまるかわからなかった。私は、倫理や道徳は、周りに生かされている(ケアされている)という感謝の気持ちを基盤に、人間が生理的に、そう感じる、または思うようにできているということなのだと思う。
    形而上的に道徳があるとは思わない。
    別書、「存在肯定の倫理I ニヒリズムからの問い亅に記載の倫理が私の考えに近い。

    ②については、①の前提に立ては、あくまで生理的な基盤が発揮された社会性/コミュニケーションなので、どれでもない(どれでもよい?)とおもった。

    ③については、「見方の倫理」が私の考えに近い。
    道徳に従うべきや理由などは本来問いではではなく、感じるままに自然に生きることができれば、人は道徳に従うことになるということだと思う。

  • 本書は、倫理学の一分野であるメタ倫理学の入門書である。本書はポップな表紙ながらも、難解なメタ倫理学を平易に概説的に紹介しており、初学者にとっておすすめの一冊だ。メタ倫理学とは倫理学において前提とされていることを再検討する学問であり、「なぜ道徳的行為をする必要があるのか?」などの素朴ながら核心的な問いへの応答を目指すため、同様の疑問を抱いたことがある人にもおすすめである。「倫理」に少なからず興味がある人、倫理に対して疑問を抱く人は是非手に取ってほしい一冊だ。なお、駒場で哲学を研究している鈴木貴之先生も本書を推薦していたことを付記しておく。
    (文科二類・2年)(5)

    【学内URL】
    https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000047714

    【学外からの利用方法】
    https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

  • 議論の出典が豊富なので、学習の指南書として役立つと思う。
    メタ倫理学を体系的に述べるというよりかは、メタ倫理学を整理整頓する目的に近いのかな?

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著者プロフィール

佐藤 岳詩(さとう・たけし) 1979年、北海道岩見沢市生まれ。京都大学文学部卒業。北海道大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。熊本大学文学部准教授を経て、現在、専修大学文学部哲学科准教授。専門はメタ倫理学、およびエンハンスメントを中心とした応用倫理学。著書に『R・M・ヘアの道徳哲学』『メタ倫理学入門――道徳のそもそもを考える』(勁草書房)、『「倫理の問題」とは何か――メタ倫理学から考える』(光文社新書)がある。

「2021年 『心とからだの倫理学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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