まぼろし色のモンシロチョウ 翅にかくされた進化のなぞ (月刊たくさんのふしぎ2020年6月号)
- 福音館書店 (2020年5月2日発売)
- Amazon.co.jp ・雑誌 (40ページ)
- / ISBN・EAN: 4910159230608
感想・レビュー・書評
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モンシロチョウは、ヨーロッパと日本では違います、どう違うのか……?
まぼろし色のモンシロチョウ 翅にかくされた進化のなぞ ー 月刊たくさんのふしぎ
2020年06月号。字の大きさは…大。
この本を私が手にしたのは、
「まぼろし色のモンシロチョウ」とは何か?
「翅にかくされた進化のなぞ」とは何か?
との思いからです。
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オスが交尾相手のメスを探すのは、羽化して間もないメスがたくさんいる所です。なぜなら、羽化後時間がたっているメスはたいていオスに見つかって交尾を済ませていて、オスを拒絶するからです。
その点、毎日たくさん羽化するキャベツ畑はメスを探しの格好の場所です。実際、オスはここで羽化したばかりで交尾していないメスを活発に探します。ではオスは出逢った蝶がメスであることを、何を手掛かりにして知るのでしょうか?
メスとオスのモンシロチョウには、そんなに違いがありません。オスは、すばやくメスを見つけなければなりません。著者の小原嘉明は、メスの翅には紫外線が含まれますが、オスの翅には紫外線が含まれていない事を発見します。オスは、紫外線でメスを判断します。
著者は、モンシロチョウのメスの翅には紫外線が含まれているのを本書では、「まぼろし色」と表現しています。今後は、この表現で書いて行きます。
日本のモンシロチョウは、こうですがヨーロッパのモンシロチョウには、メスの翅はまぼろし色をしていません。それは、モンシロチョウがヨーロッパで発生して、各地に広まっていく過程で進化したからです。
アフリカや中近東に移ったモンシロチョウのメスは、まぼろし色をしていませんが中央アジアでは、メスの翅には突然変異によって弱い紫外線色が現れます。子孫のモンシロチョウはその後も東え進み、農耕が始まった縄文時代以降に日本にやって来た時には、まぼろし色をしていました。
このようにヨーロッパで発生したモンシロチョウは、進化を遂げながら東へ、東へと進み日本にやってきたのですが。いま日本のモンシロチョウは、人を介して、又は、輸送船でキャベツなどと一緒にまぼろし色でないメスが日本に広がってきています。
モンシロチョウの翅には、実に様々な斑紋があります。なぜ、同じでないのかを調べています。モンシロチョウは、まだまだ謎の多い蝶です。
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【読後】
月刊たくさんのふしぎは、私には大変ありがたい本です。知らないことを図や、イラストや、写真で分かりやすく教えてくれます。今月の特集のモンシロチョウの翅の謎は、考えた事も有りませんでした。いつも子供コーナーにどっかり座り、どんな事が載っているかワクワクしながら本を探しています。そろそろ探しに行って来ます。
2021.06.16読了
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モンシロチョウの一生は、
①モンシロチョウの卵は長さ1.5ミリくらいのラグビーボール形の小さな卵です。約1週間後に、この卵から小さな幼虫がふ化します。生まれたばかりの幼虫は黄色です。キャベツなど緑の葉を食べて、アオムシになります。
➁アオムシはキャベツなど、アブラナ科と呼ばれるグループの植物を食べて成長し、10日~13日で蛹になります。
③蛹は1週間くらいで羽化し、大人の蝶になります。
④羽化した蝶の寿命は、夏は10日~14日、秋の終わり頃で3~4週間ほどです。
⑤オスはたいてい羽化した次の日から交尾相手のメスを探しに精を出します。
⑥メスの蝶は羽化後まもなくオスと交尾し、産卵します。
⑦羽化した蝶たちにとって、交尾相手を見つけ、卵を産み、次の世代を残すことが一番大事な仕事です。
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※「月刊たくさんのふしぎ」シリーズの感想と読了日
うれし たのし 江戸文様 2021年1月号 2021.02.18読了
https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/B08NSB2DN9
おんまつり 2020年12月号 2020.12.07読了
https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/B08L1KF7GY
トナカイに生かされて シベリアの遊牧民ネネツ 2020年11月号 2021.04.10読了
https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/B08J5CYH7F
ポリネシア大陸 2020年5月号 2021.04.07読了
https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/B085RTT76V
アラスカで一番高い山 デナリに登る 2020年4月号 2021.04.26読了
https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/B084QKMX69#
南米アマゾン 土を食う動物たち 2020年1月号 2021.06.15読了
https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/B07ZWBPMNL#詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
モンシロチョウは雌雄同じような模様をしているが、なぜオスの蝶はメスの蝶を見分けて交尾できるのか?という疑問を調べた本。
東京の蝶は、メスが紫外色をしている。蝶の目には雌雄がべつにみえている。
蝶の目を通して見たらどんな風に見えるんだろう?
関西、沖縄の蝶は紫外色が薄い。
イギリスの蝶には紫外色が無い。オスが求愛しにいった時のリアクションでオスかメスかを判断している。
遺伝子的にはヨーロッパのモンシロチョウが古い。ユーラシアを超えて東へとテリトリーを進む中で、メスが紫外色を纏うように進化した。
関西のモンシロチョウの紫外色が薄いのは、貿易によって海外から来た、紫外色を纏わないモンシロチョウとの混血が進んでいるから。
蝶の世界、おもしろ! -
モンシロチョウは仲間がたくさんいるキャベツ畑でどうやって雌雄をみわけているのか。人間の目には見えない紫外色でみわけている、で一件落着かと思いきや、地域によって色の濃淡があるとわかって…
巻末のあとがきにもあるが、人間がそれを知ってなんの役に立つのかと言われるとすぐには答えられないながらも、「どうして?」と不思議に思ったことが解明されていく「研究」の楽しさ、それが伝わってくる好著。実験・観察の手順もとても興味深く(色の濃淡があるらしいことに気がつかされたテレビ取材の顛末とか世界各地の蝶を観察したくても紛争地などだと入れないという愚痴なども含め)おもしろかった。 -
ピンポイントだった。
庭に植えてあるブロッコリーに産み付けられたモンシロチョウの卵がかえり、幼虫が葉を食べ出した頃、本書が娘のもとに届いた。
まず思ったのは、本書は恰好の性教育本ではないかということ。
本書では「交尾」という言葉が何度も使われている。多くの生物がそれを行うことによって子孫を残す。それがなんとなく、婚姻(いささか古典的すぎる)の比喩によって語られる。人間もまた同じである、と。
私は私で、すごく勉強になった。日本のモンシロチョウのオスはヒトが認識不可能な色でもってメスを認識しているらしいこと。しかしイギリスのモンシロチョウは違い、オスがオスをメスと認識してしまうこともあるらしいこと。作者が明確に意図しているのかどうかわからないけれど、ここには同性愛という別の性のかたちがあるという示唆もある。これにはほんとに感心した。せっかくだから、自分が編集者なら、ここをもうちょっとクローズアップしてリメイクしたいな。
モンシロチョウがどうもヨーロッパで生まれ、日本まで渡ってきたこと。その過程で遂げた進化(進化とは必ずしも前進ということではない。念のため)が「まぼろし色」によるメスの識別だったこと。
ほかにも、翅の斑紋として表現されるような、役に立っているように見えない遺伝子を生物は持っているということ。
飾りVS機能性
そしてそれがいつ何時役に立つかは、誰にもまったくわからないという希望。 -
大人が読むと、学者の探求心まじやべーなってなる。5歳児にはまだ少し難しい。