トレイルブレイザー―企業が本気で社会を変える10の思考 [Kindle]

  • 東洋経済新報社
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感想・レビュー・書評

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  • 単に利益を求めるだけではダメだという時代に来ている。それを体現している会社が「セールスフォース」だ。
    確かに企業として利益は必要だ。
    しかしながら本書を読むと、もっと大事な「価値観」について向き合っているということがよく分かる。
    我々が大事にしているものは何なのだろうか?
    果たしてそれは、根底としてどういう思想から生まれたのだろうか?
    これらの価値観を大切にするために、我々は具体的にどんなことを実行しなければならないのだろうか?
    これからの企業は、特に上記の考え方を明確に持っていないといけないと思う。
    ビジネスモデルがきちんとしていたら、もしかすると短期的な利益は得られるかもしれない。
    しかし長期的な事業継続の視点で考えたらどうだろうか?
    顧客は引き続きその会社の商品を使い続けてくれるだろうか?
    優秀な従業員は、長い期間その会社で働き続けてくれるだろうか?
    今という時代が本当に転換期な気がする。
    かつての常識が揺らぎ、考え方が根底から変わっていく端境期。
    著者であるCEOのベニオフ氏は、そういう意味では早くから時代の変化について気が付いていた。
    それよりも根底に流れる価値観として「世のため人のため」が根付いている人なのだと感じる。
    それは、祖父と両親のエピソードからも伺い知ることができる。
    一方で数字に厳しく、企業の成長こそ顧客のためになると信じて疑わない。
    善き行いと成功はビジネスの必須要素である、と説いている点でも、彼の心情が理解できる。
    本書を通じて、セールスフォースという会社をどういう企業に育てていきたいのか、を語っているが、「価値観は世界を変えるための最も強力なエンジン」なのだそうだ。
    それを牽引していくのが、タイトルの「トレイルブレイザー(開拓者)」ということか。
    企業の経営者が記す書籍は、大抵は自慢話か、逆に謙遜し過ぎて本質が伝わらず退屈という2パターンが多いと思う。
    本書はそのどちらでもなく、自身の失敗談が大いに盛り込まれており、「理想はあるが、悩みながら企業経営をしている」という観点で書かれているところは独創的に感じた。
    自身の1つのツイートから、ネット炎上した話も赤裸々に語っている。
    決して言い訳はせず、炎上に至った点を冷静に分析し、反省のコメントとして記載している。
    人間である以上、完璧な人間などいるはずがない。
    しかし企業の経営者である以上、発言や行動は非常にシビアに見られている。
    自身の何気ない態度が、実は差別的ではないかと指摘されてしまう。
    正直、どういう態度が正解なのかは誰にも分からないし、おそらくその会社の状況や社会情勢、時代によっても大きく変わることだろう。
    企業のトップはことさらながらに大変であるが、こういう点を意識していかないと、企業としては今後特に生き残れないということなのだ。
    顧客からの信頼だけでは足りず、従業員からの突き上げ自体も非常に鋭いものがある。
    全方位に渡り注意をしなければならない点が更に難しいところだ。
    ベニオフ氏も従業員からの指摘で何度も謝罪することになっている。
    (そのことも本書で正直に語っている)
    今の時代は特に、やり方を1つ間違うだけで、取り返しがつかないくらいのダメージを負うことになってしまう。
    しかし、それらを未然に制御することはほとんど無理に等しい。
    だからこそ、根柢の価値観を磨き続けて、人間力を高めていくしか方法がない。
    「道徳心」「美意識」がこれからの時代、特に大事だと言われているのはよく分かる。
    そういう意味でのCEOの苦悩が本書では読みとれる。
    どれだけ社会に対して真剣に向き合うのか。
    そういう企業でなければ生き残れない。
    ようやく築いた企業文化をどうやって成長させていくかが非常に大事だ。
    従業員がCEOに率直に意見が言える文化を持っている会社は貴重だと思う。
    企業をどうやって継続させていくかを真剣に考えるなら、企業文化の継承をどうするか真剣に考えていかなければならない。
    自分の会社は今後どうすべきか。
    社内でもっと議論しなければならないと、必要性を殊更に感じるのだった。
    (2023/6/16)

  • マーク・ベニオフ、モニカ・ラングレー著、渡部典子訳『トレイルブレイザー 企業が本気で社会を変える10の思考』(東洋経済新報社、2020年)は企業やビジネスパーソンの在り方を書いた書籍である。マーク・ベニオフはセールスフォース・ドットコムの創業者である。本書はセールスフォースの実践の紹介になっている。

    セールスフォースはSFA; Sales Force Automationのクラウド企業の雄である。クラウドという言葉がなく、ASP; Application Service Providerという言葉の時代から事業を行っていた。多くのASPサービスは一過性の流行で事業を畳んだが、セールスフォースは過去の蓄積がクラウド時代に花開いた。継続は力である。

    タイトルのトレイルブレイザーは開拓者を意味する。恐れずに探求し、イノベーションを切望し、楽しみながら問題を解決して社会貢献もする、文化と多様性を大切にする人々を意味する。多様性に富み、インクルーシブで、平等を重んじる従業員が継続的なイノベーションを起こすことができると考えている。

    本書は企業経営者を二つのタイプに分類する。世界の状況をより良くすることを自分のミッションの一つと考えている者と株主の利益だけを追求する者である。本書は前者の立場に立つ。本書には従業員同士の関係をオハナ(ハワイの血縁関係のない人も含む拡大家族)になぞらえる記述もある。

    ここから日本型経営の擁護者が本書を根拠にアメリカでも株主資本主義が批判されていると自説の擁護に使うかもしれないが、それは誤りである。ヒラメ公務員的な組織内部の論理で動く経営は本書の基準では株主資本主義以下である。多様性とイノベーションで社会を変えていく姿勢は日本型経営が最も見習う必要があるものである。

  • セールスフォースドットコムの創業者が描く企業の軌跡。
    1人のユーザーとして、このビジネスモデルはよく出来ているものように感じる。パッケージとして売り込むだけでなく、ユーザー側にカスタマイズの余地を残し、ユーザーに製品知識を習得させる場を提供しユーザー自身の手でカスタマイズさせ、結果的に製品とユーザーを囲い込む手法。
    とはいうものの、本書はそのような自社製品の売り込みではなく、むしろ直面してきた困難とそれをリーダーとしてどのように対処してきたかを描く要素が本書では大きい。ツイッターに投稿する場面などは、短い投稿をするのにその裏では重圧に苦しむ経営者の姿が書かれてあるのは印象的。
    実物ではないネット上でのサービスを売る会社のマーケットリーダーの言葉は知っておいて損はない。

  • 自分自身、仕事でSalesforceを使っており、ビジネスの未来も感じているし、投資先としても結構利益を出させてもらっているので、やはり読んでおくべきと思いKindleで購入。
    ベニオフ氏のビジネスのルーツ(アパレルの父とサンフランシスコでBART建設に携わった祖父)は知らなかったので面白かった。
    従業員の平等や、地球規模の課題についても悩みながらも常に時代をリードしているのは率直に言ってすごい。
    ただ、読んでいて後半はすこし飽きてきてしまった。。。
    ものすごい面白いわけではないけど、Salesforceという会社を知る上ではMUSTの本かと。

  • この本ではSalesforce4つのコア・バリューとそこからいかに価値が創出されるかが言及されている。マーク・ベニオフ氏の体験をもとに、近世代の企業のあり方を説いてくれている、1980年代経営者は投資家へのリターンに対し「利潤」があったが、現代では「社会にどれだけ貢献しているか」が株主しいては顧客、従業員に対しては示さなければならない姿勢だと。「トレイルブレイザー」とは「オハナ」を含むSalesforceに関わる全てのステークホルダーが、自ら変革を起こそうとするマインドセットを持っている人を指す。Salesforceというサービスがきっかけだが、ビジネスリーダーが未来の変化やイノベーションを語るときは、20〜100年先を見ていく必要がある。自分が置いたときに社会課題についてやっておけばよかったと聞かれた時なんと答えるのか。そこに「トレイルブレイザー」として後世に残していく姿勢が問われる一冊。

  • あんまり面白くなかったかなという感想です。

    はじめにマークベニオフがOracleで働いていて燃え尽き症候群のようになって何のために働くか、Salesforceを起業する前に考えていたことは参考になった。だからこの本はPart 1の内容だけで十分のように思う。Part 1では次のようなことが経験と共に語られる。
    信頼
    カスタマーサクセス
    イノベーション
    平等

    なぜあまり面白くなかったかについていうと、皆IT企業をはじめとして一部の企業が莫大な利益をあげていることを知っていて、CEOは利益を出す以上に世界のために、なにかのために貢献することが大事、と言わなくてはならない雰囲気が蔓延しているためであるように思う。
     世界にはものすごい格差がありセールスフォースの従業員はボランティアで学校に教えにいったり寄付したりしているそうで、それ自体はとても素晴らしい取り組みだが、わざわざこの書籍を買って知る話でもないように感じてしまった。なにかセールスフォースはすごい会社で自画自賛しているのを読者がお金を払って知るような感じです。

     後半はほとんどがそういう話でした。だから後半は段落の頭だけ読んでほとんど読み飛ばしてしまいました。

    今、世界はIT企業に何を求めているのだろうか。皆はインターネットが出始めた頃のワクワクをもう一度得られると思っているだろうか。若い世代は役に仕事を通してたつことを求めているというが、ITが必須となってしまって面白みを感じられなくなってしまっているのかもしれない。最初からインターネットにつながっている世代。

    だからこそ想像を超えるようなイノベーションを自分は心のどこかで期待している。利益に応じた社会奉仕をやっている、それは今や普通のこと。そんなストーリーを自分は期待していないようでした。

  • salesforceの考え方

  • 考えはわかった。功績記載

  • SFDCには様々な顔があるが、おそらく一番実像を表しているのは「マーケティングがとてもうまい会社」だろう。

    本書を読むと、SFDCのマーケティングの巧さというのは創業者であるマーク・ベニオフの個性を反映したものだと思わずにはいられない。シリコンバレーの現役経営者の中でも、彼ほど出版や情報発信を好むCEOはいないのではないだろうか。実際に、本書も含めて彼は”読ませる” 文を書く。

    私が以前勤めていた会社では、Oracle時代の彼と直接働いたことがある人間がいたのだが、彼は「どんなプロジェクトをやらせても失敗するが、なぜかその度に出世していく」とぼやいていた。もしかしたら、彼のやや誇大妄想的な部分とテクノロジーよりもマーケティングとビジョンに重きを置くスタイルがOracle創業者のラリー・エリソンに好かれていたのかもしれない。

    ちなみに、彼はあまりにベニオフの出世が早いので「ベニオフは、ラリー・エリソンの隠し子なのでは?」と疑っていたようだ。自由奔放なラリー・エリソンならでは・・という気もするが、本書ではベニオフ家についてかなりの部分が割かれており、どうやら隠し子説は本当ではないらしい。

  • 必要なのは両立させることである。善き行いと成功は単なる競争優位ではなく、ビジネス上の必須要素となりつつある。

    バリューに根ざした企業文化が価値を生み出す、ということだ。

    ある問題を解決するのに1時間あるとすれば、私はその問題について考えることに55分、解決策を考えることに5分かける。(アインシュタイン)

    「マーク、優れたCEOになりたいなら、未来を意識して予測しないといけない。」そうスティーブ・ジョブズは言った。

    ストレスと不安の高まりに対処するために重要な4つのアプローチ:
    1.栄養:従業員が健康的な食事目標を立てるのに役立つ情報を提供する
    2.回復:よく眠り、休みを取り、息抜きをするためのリソースで心身の充実を図る。
    3.運動:健康な身体を維持するための運動や活動に焦点を当てる。
    4.たくましさ:メンタルヘルスを改善し、ストレスを管理し、人生の打撃に耐えるレジリエンスを養うツールを提供する

    「タイタンの道具」(ティモシー・フェリス著)の中で取材した200人を超える世界的なパフォーマー、経営幹部、リーダーのうち、80%以上がマインドフルネスや瞑想を実践していた。

    初心者の心には多くの可能性があるが、専門家の心にはほとんどない。(禅僧 鈴木俊隆)

    これからの時代に繁栄を望む企業にとって問うべきは、もはや「私達は成功しているか」ではない。「私達は善いことを行っているか」だ。

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著者プロフィール

マーク・ベニオフ
セールスフォース・ドットコム 会長兼CEO
セールスフォース・ドットコムを創設し、会長兼CEOを務める。クラウド・コンピューティングの先駆者であり、フォーブス誌の「過去10年のトップイノベーター」、フォーチュン誌の「世界最高のリーダー」、ハーバード・ビジネス・レビュー誌の「最高業績をあげたCEO上位10人」に選ばれている。平等に関するリーダーシップで数々の賞を受賞している。フォーチュン500社に入り、従業員数が5万人を超えるセールスフォースは、フォーブス誌の「世界で最もイノベーティブな企業」やフォーチュン誌の「最も働きたい企業」に選ばれ、フォーチュン誌の「世界で最も称賛される企業」では10位となっている。ベニオフは創業時に、フィランソロピーの「1―1―1」モデルをつくり、自社の資本、製品、従業員の就業時間の1%を使って世界中のコミュニティを支援してきた。今日、8500社以上が「プレッジ1%(1%の誓い)」運動を通じて「1―1―1モデル」を採用している。


「2020年 『トレイルブレイザー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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