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感想・レビュー・書評
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「もし600万発に1発だけ実弾が入っていて、引き金を1回引くごとに1000円もらえるロシアンルーレットがあるとしたら、やる?」
家族に聞きました。
妻はやらない。
息子もやらない。
ぼくは、「やる」ときっぱり断言しました。
だって、600万分の1ってほとんど確率ゼロですよ。
それで1回1000千円、100回引けば10万円っておいしくないですか?
神様が北海道民から任意に1人選ぶとして、ぼくが選ばれるなんて到底思えないし、100人でもまず間違いなく選ばれない。
要は確率の問題です。
1万回だめなら、1万1回目もたぶん駄目なんです。
少なくとも2000回目くらいで気づかないといけません。
話が逸れました。
実はこれ、大学教授でもある本書の著者が、学生によくする質問なのだそう。
すると、学生全員が「やらない」と答えるそうです。
「道路を歩いていて車にはねられる確率よりもはるかに低い。引き金を毎日10回引けば、それだけで食べていくことができる」
そう説明しても、学生たちは「当たったら死ぬから嫌だ」と言うそうです。
これが多くの日本人が罹っている「リスクゼロ症候群」。
なるほど。
新型コロナウイルス感染拡大で緊急事態宣言が出されていた期間、この「リスクゼロ症候群」に罹った人たちが、全国各地で牙をむきました。
「自粛警察」というやつですね。
ぼく自身は、たとえ過剰な反応だとしても、自粛すること自体は別にいいと思うのです。
現に緊急事態宣言期間中は自分も巣ごもり生活でしたし。
ただ、他人に「自粛」を求める風潮には抵抗があります。
「自粛」という言葉の本来の意味からも間違っていますし。
本書は「リスクゼロ症候群という病」から始まって「クレーマーと無責任社会」「多数派という安全地帯」「自己家畜化する現代人」など、日本社会に巣くう病魔の正体を探るうえで有用かと。
「SNSに夢中な人の多くは、承認されるための努力をしない。努力はしないけれど承認されたい願望だけが強い」など、耳の痛い指摘もたくさんあります。
以下のあとがきにハッとしました。
「コロナ禍が長く続き、対面のコミュニケーションが制限される期間が長く続くと、人類が育んできた団結力や共感能力が弱まってくる可能性がある。普通はそれを悪いことだと考える人が多いだろうが、もしかしたら、いじめなどがなくなって結構いい社会になるかもしれない。ITと同じように、病気も人間の感性を変えて、世界を変えるのである」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自分で考えずに多数派の考えに従うことで安心感を得る。安心を担保した上でそれに合うように考える。安心を揺るがすような存在を攻撃する。それが間違ったことであっても。自己家畜化という表現。為政者が家畜化するわけではなく自分で自分を家畜化する。考える力がない。考えを行動に移す力がない。実語教に「人として孝なき者は畜生に異ならず」とあるが,「人として智なき者は畜生に異ならず」とも言えそうだ。自分自身も智力が劣る。表面的な世界に踊らされない確かな力を持ちたい。