自粛バカ リスクゼロ症候群に罹った日本人への処方箋 (宝島社新書) [Kindle]

著者 :
  • 宝島社
3.50
  • (1)
  • (1)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 16
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (127ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「もし600万発に1発だけ実弾が入っていて、引き金を1回引くごとに1000円もらえるロシアンルーレットがあるとしたら、やる?」
    家族に聞きました。
    妻はやらない。
    息子もやらない。
    ぼくは、「やる」ときっぱり断言しました。
    だって、600万分の1ってほとんど確率ゼロですよ。
    それで1回1000千円、100回引けば10万円っておいしくないですか?
    神様が北海道民から任意に1人選ぶとして、ぼくが選ばれるなんて到底思えないし、100人でもまず間違いなく選ばれない。
    要は確率の問題です。
    1万回だめなら、1万1回目もたぶん駄目なんです。
    少なくとも2000回目くらいで気づかないといけません。
    話が逸れました。
    実はこれ、大学教授でもある本書の著者が、学生によくする質問なのだそう。
    すると、学生全員が「やらない」と答えるそうです。
    「道路を歩いていて車にはねられる確率よりもはるかに低い。引き金を毎日10回引けば、それだけで食べていくことができる」
    そう説明しても、学生たちは「当たったら死ぬから嫌だ」と言うそうです。
    これが多くの日本人が罹っている「リスクゼロ症候群」。
    なるほど。
    新型コロナウイルス感染拡大で緊急事態宣言が出されていた期間、この「リスクゼロ症候群」に罹った人たちが、全国各地で牙をむきました。
    「自粛警察」というやつですね。
    ぼく自身は、たとえ過剰な反応だとしても、自粛すること自体は別にいいと思うのです。
    現に緊急事態宣言期間中は自分も巣ごもり生活でしたし。
    ただ、他人に「自粛」を求める風潮には抵抗があります。
    「自粛」という言葉の本来の意味からも間違っていますし。
    本書は「リスクゼロ症候群という病」から始まって「クレーマーと無責任社会」「多数派という安全地帯」「自己家畜化する現代人」など、日本社会に巣くう病魔の正体を探るうえで有用かと。
    「SNSに夢中な人の多くは、承認されるための努力をしない。努力はしないけれど承認されたい願望だけが強い」など、耳の痛い指摘もたくさんあります。
    以下のあとがきにハッとしました。
    「コロナ禍が長く続き、対面のコミュニケーションが制限される期間が長く続くと、人類が育んできた団結力や共感能力が弱まってくる可能性がある。普通はそれを悪いことだと考える人が多いだろうが、もしかしたら、いじめなどがなくなって結構いい社会になるかもしれない。ITと同じように、病気も人間の感性を変えて、世界を変えるのである」

  • 自分で考えずに多数派の考えに従うことで安心感を得る。安心を担保した上でそれに合うように考える。安心を揺るがすような存在を攻撃する。それが間違ったことであっても。自己家畜化という表現。為政者が家畜化するわけではなく自分で自分を家畜化する。考える力がない。考えを行動に移す力がない。実語教に「人として孝なき者は畜生に異ならず」とあるが,「人として智なき者は畜生に異ならず」とも言えそうだ。自分自身も智力が劣る。表面的な世界に踊らされない確かな力を持ちたい。

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

池田 清彦(いけだ・きよひこ):1947年東京生まれ。生物学者。東京教育大学理学部生物学科卒、東京都立大学大学院理学研究科博士課程生物学専攻単位取得満期退学、理学博士。早稲田大学、山梨大学名誉教授。専門の生物学分野のみならず、科学哲学、環境問題、生き方論など、幅広い分野で60冊以上の著書を持ち(『構造主義科学論の冒険』 講談社学術文庫ほか)、フジテレビ系「ホンマでっか!?TV」等、各メディアでも活躍。

「2024年 『老後は上機嫌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

池田清彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×