- Amazon.co.jp ・電子書籍 (293ページ)
感想・レビュー・書評
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昔から確かにここにあったのに、忘れていたとても大切なものを思い出させてもらったようでした。厳かで神秘的で、だけどしっかり根を張っているような、そんな物語でした。
偏屈だけど、どうしても惹きつけられてしまう古屋神寺郎という教授に魅せられて、民俗学を専攻した藤崎千佳は、古屋と共に日本各地へ旅に出る。
たくさん不思議が詰まった物語でしたが、それは、私たち日本人が忘れてしまっていた…というか、見えなくなるほど隅に追いやってしまっていた、心のようなものであって、それは確かに「ある」ものなのだと腑に落ちる気持ちでした。
―神様がいるって感じることは、世の中には目に見えないものもあると感じることと同じです。目に見えないものがある、理屈の通らない出来事がある、どうしようもなく不思議な偶然がある、そういう感じ方が、自分の生きている世界に対する畏敬や畏怖や感謝の念につながるんです。もし、目に映ることだけが全てだと考えるようになれば、世界はとてもシンプルで、即物的です。そういう世界だと、自分より力の弱いものを倒すことは、倫理に反するどころか、とても理にかなった生き方になるかもしれません。つまり勝てばいいんですから。―
そうだよな、と思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
民俗学を専攻する藤崎千佳は大学院1年。ぶっきらぼうで皮肉屋で可愛げのない准教授古屋に連れられ各地を旅する。そこで出会う不思議。
元々日本に居た神様と西洋からもたらされた神様との違い、その存在のあり方などに踏み込んでいきながら民俗学とは何か、これから何を求めていかなければならないか…と物語が進むにつれて深まっていく。
この人の文章と相性が良いのかいつも心にグサグサ刺さる。今回もうるうるしながら読みました。
心に灯火を。 -
民俗学とはなんだ?
という話かな。
神様は感じるかどうか。信じるんじゃなくて、感じるかどうか。
学問とは、こ大局的な使命感を持たなければたちまち堕落する。
どうせ歩くなら、抜け道でもなく近道でもなく、王道を歩きたまえ。
いろんな言葉が胸に刺さる。 -
とっても良かった!というのではないけど、好きなエリアの話しなので5に。
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藤崎千佳は、東京都心にある国立大学で民俗学を学ぶ修士の学生。彼女を指導するのは、古家神寺郎という偏屈の准教授。この小説は、偏屈で口の悪い指導教官と多感な院生との交流を通して、生きることを不思議を教えてくれる作品。
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良い感じの表紙だと思ったら、いせひでこさんでした。
キャラクターがみんな魅力的。
短編連作で読みやすい。
ちょっと不思議なところも○ -
大学院1年の千佳、民俗学准教授古屋とが織りなす物語。
古屋は、事故により妻を亡くし自らも足が不自由な偏屈だが、優秀な准教授。
千佳は、その古屋のかばん持ちとして一緒にフィールドワークとして全国を旅する。似ても似つかない2人のようだが、お互いに毒を吐きながらも認め合う学者だ。
魅力はなんといっても、民俗学とは卓上の議論ではなく歩いて感じることが大事だということ。
今後も偏屈な教授との旅の続きが読めることを期待したい。 -
4.2
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民俗学の准教授と大学院生の女性のコンビがあちらこちらでフィールドワークをし、不思議な体験や准教授の過去の事が描かれている。二人の会話のテンポが良くスイスイ読めました。神様のカルテもそうでしたが、命の重さを感じさせる作品。タイトルを読み解くと今度はシリーズ化するのかな、と。