夜明けのすべて [Kindle]

著者 :
  • 水鈴社
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感想・レビュー・書評

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  • オーディブルで聴いた。
    まさか、映画とは、途中から大きく違っていた。でも、それは心地よい改変で、原作では3月初めで終わっているけど、小説世界ではこのまま話が続いていけば、数ヶ月後の映画のラストにおける藤沢さんの、あの感動的な「夜明け前の星々」のナレーションを聞くことができるかもしれないと思った。

    夜明け前が一番暗い。
    でも、その夜明け前の星々を是非見上げで欲しい。
    その中で輝いているものに、
    気が付かないのは
    もったいないのではないか。

    全然正確に覚えてないけど、わたしはそんな風に覚えている。小説も、結局はそんな風に終わっているのではないか。

    PMSもパニック障害も、傍目からなかなか気が付きにくいし、命に関わるような病気ではない。それでも彼らは、いつ終わるともしれない病と数十年と付き合っていく。世の星々と同じように、無数に小さな星大きな星と、そういう人たちがいる。夜明けだけが総てじゃない。わたしの身近な人にも、違う症状だけどパニック障害の人がいて、最初の2年は大変だった。結局はその人はどう人生に折り合いをつけたのか?いつかは聞いてみたいと思った。

    2カ月のオーディブル無料期間の最初にこれを選んだのは良かった。目の手術なので、ともかく1日だけでも、まともな読書ができない無聊を慰めたかった。本文も2人の視点が交互に変わってゆくので、朗読者も男女2人。藤沢さんは、山添くんに接している時は、(多分自分では気がついてないだろうけど)声も活発女子に変わっていて、普段の仕事時の声のトーンからは全く違うのが面白かった。

    私の入院した病室にも命には関わらないけど、それなりに大変な1日を過ごす人たちと、それをサポートする看護士たちがひっきりになしに行き来していて、本書の後半の病室の部分が、偶然にもとってもリアルだった。藤沢さんが、人の回復の力に驚く場面があるけど、私もリアルに体感した。作者がパニック障害から仕事としては復活したように、藤沢さんも山添くんも、今は普通に生活できているだろう。目が普通に見えるって、凄い。改めて、普通って、凄い。

    • kuma0504さん
      yukimisakeさん、ベルガモットさん、5552さん、
      ありがとうございます♪

      「人間の回復力」と書きましたが、実際切り刻む手術は初め...
      yukimisakeさん、ベルガモットさん、5552さん、
      ありがとうございます♪

      「人間の回復力」と書きましたが、実際切り刻む手術は初めてで、眼球を切って、これ以上白目が侵食しないようにガラスみたいなものを埋め込んで、糸で縫って、という工程を説明されて、やがて糸が溶けて毛細血管の出血も無くなってゆくということを、自分の身体で実現しているということが不思議でなりません。でも、眼球を少し動かすだけで痛いという段階から、現在はなんとか鈍い痛みがあるという段階まで回復しているということは、目では見えないけど、犬神明みたいに眼球が跡形もなく元に戻りつつあるということだろうということを示していて、とっても不思議です。この病気は手術をしても、視力の回復はないようです。
      と、ベルガモットさん、ごめんなさい。ちょっと怖いこと書きましたが、白内障のことは全然わかりませんし、事後の安静をしっかりすれば大丈夫。オーディブルおおすめです。ホントに約10数時間眼球動かさなくても我慢できましたし。

      5552さん、経験からいえば原作先の方がいいかもしれません。

      この間相当本を読みました。しかも、図書館が予約済み本を四冊も可能にしてしまい、今日借り出してきてしまいました。それから、(これは読むのをずっと後にしますが)今日商店街で「一箱古本市」をやっていて、10冊も買ってしまった。まずい。まずい。
      レビューをアップするのはいいけど、「いいね」返しがおそらく間に合わなくなる。できなかったらごめんなさい(;>_<;)。
      2024/03/03
    • bmakiさん
      くまさんの手術の描写がとても痛々しくて、、、
      しかも術後も痛むのですよね。。。
      兎に角お大事になさってください。

      これだけの読書量...
      くまさんの手術の描写がとても痛々しくて、、、
      しかも術後も痛むのですよね。。。
      兎に角お大事になさってください。

      これだけの読書量、目を酷使されていたのでしょうね。。。


      映画は原作とは違いましたか?

      この映画私も気になっています。
      いつも映画を見ると、小説の方が良かったなぁって思ってしまいます(-。-;

      そう思わなかったのは、湊かなえ先生の告白くらいかな?

      あ、あとはノルウェーの森も、よく村上春樹先生を映像に出来たなぁと感心しました(*^▽^*)
      2024/03/03
    • kuma0504さん
      bmakiさん、こんばんは。

      村上春樹は読まない主義なので、映画と比べようがないのですが、菊地凛子の表情がカギだという噂があって、全然わか...
      bmakiさん、こんばんは。

      村上春樹は読まない主義なので、映画と比べようがないのですが、菊地凛子の表情がカギだという噂があって、全然わかりませんした。

      「告白」については、文庫に監督の「解説」があって、これが秀逸。映画の方が良かったですよね。今回も多分、小説読んだ上で映画観るといろいろ感じるところあると思います。

      今の所、目の視力が不安定。やはり使いすぎは良くないのかな。
      2024/03/04
  • 久しぶりの瀬尾まいこさん。
    読み始めて少し経った時、あれ、この話先日観た映画の番宣に似てるなと思った。松村北斗さんと上白石萌音さんの。
    PTSに苦しむ藤沢さんと突然のPTSDに見舞われてしまった山添くん。
    調べてみたらやっぱりそうだった。
    そんな二人が出会った職場がいい。小さな職場はアットホームで、毎朝社長の「今日も無理なくけがなく安全に」の挨拶で始まる。職場の仲間も優しい。
    藤沢さんと山添くんの間には、同志のような特別な感情が芽生えはじめる。家族みたいに言いたいことを言って、相手の気づかないことに気づいて助け合って。
    緊張感も圧迫感のない気持ちで過ごせる相手。友達でもない恋人でもないけど、互いには必要不可欠な相手。二人がどんどん変わっていく。
    今後のことはわからない。
    最後はあくまでも瀬尾まいこの世界。
    でも、ほっこりした。

  • パニック障害に苦しむ青年、山添くんとPMS(月経前症候群)という持病をもつ美紗。
    若い二人が同じ会社で出会い、お互いの持病を思いやり、支えあいながら前向きに生きていこうとする姿を描いた爽やかなストーリー。
    瀬尾さんの本に出てくる人は、みんな優しく思いやりのある人達。

    一見のんびりした社風の会社の人たちも、皆、さりげなく、しかししっかりと若いふたりをバックアップしている。

    自らの持病に悩みつつも、相手を思いやるがゆえの、なんだかちょっぴりずれてて愉快なふたりの掛け合いで物語はテンポ良く進む。。
    映画ボヘミアンラプソディー、確かにあれを観たあとは、リアルにクイーンのライブを見て拳を突き上げて盛り上がりたくなりますとも!笑

    きまった病名や障害の名前が指摘されていなくても、誰しも何かしら人には理解されにくい様な苦手で克服できない「性質」のひとつやふたつ、あるんじゃないだろうか。
    お互いの性質を受け止め、支えあい、補いあえば皆前向きに生きていけるのではないか、そんな作者の思いを感じた一冊。

    間違いなく元気に、前向きになれる。

  • 恋人でもなく、友達ですらなく、どちらかというとお互いに苦手な、同じ職場のただの同僚である、PMS(月経前症候群)を患っている彼女とパニック障害を患っている彼の物語。
    独りでは出来なかった苦手なことが、同じ職場で過ごし触れ合ううちに、いつの間にか出来るようになっているという変化にそれぞれが気付く。社長や従業員の皆んなは無理なく穏やかに過ごしているように見えて、実は有能な人の集まりだったことにも気付いていく。殻に閉じこもっていた二人が、そこから一気に前向きな気持ちに変わっていく。
    読み進めるにつれ、読み手もワクワクしてきて、最後は一気に読み終えた。幸せな気持ちになれる作品だ。

  • パニック障害の男の子、PMS(月経前症候群)の女の子の話。登場人物皆が、優しく思いやりの人達だった。「生きるのが少し楽になる、心に優しい物語」。

  • 人生なんて思い通りにはいかないのが当たり前と思っているけれど、でも人生捨てたもんじゃないと思っている。
    そんな事を思いながら読んでいた。精神障害の娘がいるのですが、そんな娘にも読んでほしい一冊。自分ばかり辛いと思いがちだけど、でもまわりにも苦しんでいる人がいて、それを助けてくれる誰かがきっといるんだと教えてくれたような気がする。美紗と山添の最初と最後の関係の変化が良かった。

  • 映画も良かったけど、やっぱり原作が一番かなぁ。再読してみました。

    PMSに悩む藤沢さんとパニック障害に苦しむ山添くん。小さな栗田金属に転職した先輩と後輩として出会った二人。病気の事を知らなかったので、お互いの第一印象は最悪だったけど、理解して支えあっていきます。周りのみんなのサポートがさりげなくて良かったです。PMSに悩む人は多いけど、ここまでキツい症状に悩んでいる人に出会った事がなかったので正直驚きました。山添くんも最初は自分とは全然違うと病気をランクづけしてしまいます。周りの人も悩みがなさそうに見え、皆多かれ少なかれ何かはあります。2人が少しづつ出来る事、世界を広げて行く行動に勇気づけられます。

    原作と映画は、設定と内容で異なっている点が多々ありました。でも、根底に流れる想いは共通していて、新たなエピソードも作られたんだと感じられました。重いテーマを感じさせすぎず、途中笑させてくれたのも原作そのまま。16ミリフィルムで撮影された映像は、独特の温もりのある空気感に包まれます。毎日の日常にある柔らかな光の雰囲気が素晴らしかったです。映画を観た後の心地良い余韻に浸りながら原作を読むと、瀬尾まいこさんの優しい世界観が溢れていました。

  • 長年PMSに悩む藤沢さんと2年前急にパニック障害になった山添くん、それぞれの視点から交互に語っていくスタイルの本。

    話題になっていたので気になっていたが病気がテーマなので少し身構えていた。けれど、とても読みやすくスイスイと読んでいたし読み進めるのが楽しい文章だった。2人のテンポのいい会話がおもしろい。

    自分も長らくPMSに悩んでいるので藤沢さんのターンには食い気味に(?)読んでいました(笑)
    ので、その感想ばかりにはなってしまいますが…

    PMSもいろいろあって、彼女のようにイライラが止められない人もいれば、どうしようもなく気持ちが落ち込む人、とにかく動くのが億劫になる人、気分の上げ下げが激しくなってしまう人もいる。
    PMSってその症状自体も辛いけど、それが起こる事で周りの人に少なからず迷惑をかけていることがまた辛くて、これから起こるそれを想像するのも辛いんだよね…。激しく同意しながら読んでました。

    片やパニック障害に苦しむ男性。しにそうなほど苦しいパニックがいつ起こるか分からない。閉鎖された空間がだめで電車にも乗れない。実家にも帰れない。周りに言えない。食事も趣味も楽しみがない。正直そこまで知識があるわけではなかったしこれで全部が知れたわけではないですがこれは辛い…。

    ストーリーが進むにつれて、少しずつ、本当に少しずつふたりの心も変化し、季節も巡り、最後は春になるところで終わります。お互い最後まで友情も恋も全く感じてないのがまた良いですね。なのに相手の病気が気になってお節介を焼いてしまう。そこが良いです。
    後半和菓子の名前がたくさん出てきて桜餅が食べたくなりました。
    山添くんが食の楽しみを思い出せて良かったよ…!!

    最後の一文
    「夕日は必ず朝日になる事を、今の俺は知っている」
    が素敵でした。

  • PMSの女性とパニック障害の男性が同僚となり、お互いに助け合っていくストーリー。
    PMSもパニック障害も知ってはいるけれど、普通の人には計り知れない「生きにくさ」は、とても伝わってきた。
    その「生きにくさ」故に、負の連鎖に繋がっていくことだってあるし、引きこもりや鬱病に繋がっていくこともある。

    私は鬱病で、沢山の睡眠薬や抗うつ剤や精神安定剤を処方してもらって、人間らしい生活は出来ているけれど、家事も仕事も普通の人のようには出来ない。
    作中に出てくるソラナックスも、私にとって、どうしようもない時の御守りのような手離せない存在。

    違う立場の男女でありながら、助けてくれる理解者がいるってとても心強いこと。
    互いに補い合いながら、良い方向に向かっていけると思う。

    ただ、これは「男女間の友情」で終わってしまうのかな。結婚相手に最適だと思うけど。
    「男女間の友情はある」とは思うけれど、ここまで気を許し、深い信頼関係が築けている場合、私だったら、新しい彼氏彼女に既にそういう同僚がいるのだとしたらものすごくイヤだ。

  • 「PMS」や「パニック障害」について、色々と調べてみた。身近にいないと思い込んでいるだけで、実は(自分が知らないだけで)周りにも苦しんでいる人がいるのかもしれないと思った。(「芸能人」「パニック障害」で検索すると、えっこの人も⁈という人がたくさんいた。)山添くんと藤沢さん。病名は違えど、「似た苦しみ」を知る「当事者」同士の理解と支え合い。私たちは「当事者」にはなれないけど、その気持ちに少しでも近づくために、こうして本を読むのかもしれない。映画も楽しみ。

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著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

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