あのころはフリードリヒがいた (岩波少年文庫) [Kindle]

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  • どの立場になっても、苦しかった。こういったことが、何百という数で行われていた事実を知った上で、歴史から何を学ぶか。
    今、地球上で行われていることに、自分はどう向き合うか、考えたい。

  • 同じアパートで暮らすドイツ人の「ぼく」と、ユダヤ人のフリードリヒは幼なじみで、家族ぐるみで仲良くしていた。穏やかだったふたりの生活が反ユダヤの嵐に巻き込まれ徐々にかけ離れていく様子をぼくの視点で描いた作品。

    「あなたが考えられるようなことは、起こりえませんよ。この二十世紀の世の中では、起こりえません!」反ユダヤの風潮が高まる中で、フリードリヒのお父さんが言ったこのセリフが印象的だった。中世のユダヤ人迫害の時代より、人間はもっと理性的になったと信じていたお父さんの言葉は、その後を知る人間には非常に皮肉に感じられる。なぜ一緒に暮らしてきた隣人に対しあのような残酷な迫害が起こったのか、謎に思える部分もあるが、暴力に酔いしれユダヤ人寮内を破壊してまわった「ぼく」のあの異常な精神状態が当時のドイツ人全体に有ったのかもしれない。ドイツ人とユダヤ人と言うが、ぼくもフリードリヒも元々は「ドイツ国民」だったのだ。○○人とは何だろう、民族とは何だろう、と考えされられた。
     ドイツ国内にユダヤ人は何百万という数がいたのに、政策のありよう一つでここまで迫害され、それを覆すことができなかったという事実を忘れてはいけないと思う。日本で暮らしていると政治の力を意識する機会があまりないが、間違った方向に政治が進むとここまで恐ろしいことが出来るという実例をこの本は示してくれている。フリードリヒの自由が徐々に削り取られていく様子が生活に根差した形で描かれていて、政治というものがいかに国民の生活を左右しうるものなのかを感じた。

  • 20代か30代のときに一度読んで、こんなことが二度とあってはいけないと思いました。
    60代になった今、昔と比べて世界は変わっていないどころか、さらに悪くなっていることに気づき、恐ろしくなりました。

    語り手の少年が、簡単に迫害に加担してしまうシーンのことは忘れていました。改めて読み直し、世界中で今も同じことが起こらないよう、何かできないものかと思います。

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