元彼の遺言状 [Kindle]

著者 :
  • 宝島社
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感想・レビュー・書評

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  • 『元彼の遺言状』
    謎解き   ★★★★☆
    主人公キャラ★★★★★

    【主人公】
    主人公は、女性弁護士です。業界最大手に所属するやり手です。お金が拠り所です。趣味はありません。父、兄ともに官僚です。

    彼は民間企業の研究職です。彼のクリスマスプレゼントはカルティエの指輪でした。しかし、その金額が50万円にも満たないことから、お付き合いを願い下げするのです。

    主人公の性格は「強烈の2乗」です。
    ――――――――
    【物語】
    彼とのつき合いが▲となったため、誰に連絡しようか・・・と思案して元彼にメールをしました。すると返信は元彼からではなく、秘書からの返信でした。

    その内容は「亡くなりました・・・」。

    若くしてなくなった元彼は、うつ病で苦しんでいたとのことでした。
    元彼は、上場企業の医薬品メーカー社長の御曹司で、遺産総額はなんと300億円です。
    元彼は「遺産は自身を殺した犯人に捧げる」と遺言書に記述していたのでした。
    この遺言書は公開され「犯人に名乗りをあげてほしい」と迫るのです。
    ――――――――
    【読みどころ】
    1)死因
    医師の診断書は病死です。しかし、警察が殺人事件として扱い、犯人を捜し始めます。
    病死か?殺人か?

    2)犯人との接触
    主人公の弁護士は、元彼の友達から「僕が犯人である」と告白を受けます。遺産総額300億円の50%を成功報酬として、元彼の友達の弁護を引き受けることとしたのでした。
    報酬は手にすることができるのか?そして、友達が元彼を本当に殺したのか?

    3)元彼の顧問弁護士殺害
    元彼の遺言書を保管する顧問弁護士が何者かに殺害される。なぜ?何が目的なのか?

    4)元彼の元カノ*?人
    元彼は、主人公以外に恋人が多く存在してことが明らかに・・・。遺言書には、元カノリスト記述され、その全員に土地と建物を平等に分配するとの記述が・・・。
    犯人は身内の遺産相続?それとも、元カノ?の痴情のもつれか・・・。
    ――――――――
    【読み終えて】
    ミステリーとして犯人が誰か?を思案する読み方以上に「この主人公弁護士。次は何をやらかすの?」を想像するが楽しいです。そのくらい、勢いがあり、また頭脳も切れます。

    彼女は、日常生活が忙しすぎて、趣味もなし、友達もなし、信頼できるのはお金だけという暮らしぶりです。しかし、事件に関わっていくなかで「弁護士を目指した動機」を思い出すのです。
    こうした細かな描写が印象に残りました。

  • 主人公はやり手の弁護士。自分に自信があって、正直で、そしてお金への執着が半端ない。自分の能力は正当に評価されるべきで、その対価としてのお金には一切の妥協がない。強気な女性は珍しくないけれど、そこにお金への執着がプラスされているのが特徴的かもしれない。

    物語は、この主人公の元彼が遺した奇妙な遺言状を軸に進んでいく。「自分の全財産を、自分を殺した犯人に譲る」というのだ。
    だが、元彼は病死であり、犯人は存在しないように見える。
    主人公は、犯人候補に名乗りを挙げた友人の代理人として、事件にかかわっていくことになる。

    わりと目新しいストーリーだったが、登場人物が多くて、描写・書き分けも雑なので、ごちゃごちゃして分かりにくい。どこかに相関図を入れて欲しかった。
    設定やトリック(?)動機(?)みたいなものは、斬新で、物語もテンポよく進んでいったのに、時々『これ誰だっけ?』と後戻らないといけないのがもどかしかった。

    しかし、最近もなにかの本を読んだときに思ったけれど、主人公と父親との確執が、本当はお父さんはあなたの事大事なのよ設定がなんとも…。
    この話のなかでは、主人公が幼い頃、私の事は誉めなくてもいいと言った、そして自分がそう言った事を本人は忘れていたという設定だったけれども、誉めなくていい=モラハラは違うだろう、と。
    父親に女は結婚するべき、家事できるべき、とか言わせたがるのもうそろそろやめにしてもいいのでは…その描写をするなら、それはモラハラなんだというところまでしっかり書いてもらいたい。

  • 金持ちの御曹司が亡くなった遺言書には僕の全財産は僕を殺した犯人に譲ると残されていた

    御曹司の元カノことお金大好きキャラ強女性弁護士の主人公は遺産の分け前を手に入れるべく犯人候補に名乗り出た依頼人を完璧な犯人にしたてあげようとする

    主人公のキャラも良くて内容もツカミの時点で心を鷲掴みにされてそのまま最後まで一気読みできるくらい面白い

  • ミステリとしてもエンタメとしても仕事小説としても質が高い。

    女性キャラ同士の人間関係の機微がいい。
    真梨子、雪乃、紗英の第一印象が、話が進むにつれて変化していく感じがいい。


    名言も多かった。

    「セロハンテープと理屈は何にでも付くのよ」

    「弁護士は悪い人から弱い人を守る仕事ではない。(中略)クズ野郎であっても、高貴な善人と同じだけの権利を持っている。」


    著者の意見みたいなのはほとんど無いと思うが、下記はちょっとだけそれが垣間見れる。

    「労働案件を専門とする小規模法律事務所で研修したときには、事務所にやってくる客の三分の一はうつ病だった。これは誰のせいというよりも、社会に巣食う病理に人間が侵されてしまった結果のように思えた。」

  • 第19回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し評判の作品だと言うので読み始めた。
    強烈なキャラの女性弁護士が主人公であり、そのしちっゃかめっちゃかな登場に唖然としたものの、元カレが残した遺言状をめぐって様々な伏線が張り巡らされてゆくにつれ、作品に引き込まれて行った。最終的にこれらの伏線が上手く回収され、気持ちよく結末にたどり着くことができ、スッキリと読み終えることができた。

  • 大賞を受賞したという本作は、破天荒なキャラクターの女性弁護士、剣持麗子が登場する。破天荒と書いたが、この手の小説の主人公として登場する女性キャラクターとしては、容姿端麗で異性の目を惹くし、性格も男勝りで恐れを知らず突き進むタイプである。案外、最近読んだ女性が主人公のミステリー小説における典型という気もする。
    といっても、いわゆる日本女性のステレオタイプでもある「男の三歩後ろを黙ってついてゆく」のでは、物語の主人公として活劇を演じるには些か物足りない。主人公であるために、颯爽とした女性という属性はある程度必要なのかもしれない。
    剣持麗子は金にうるさいという面も持っている。プロローグ的に描かれる、自身が勤める法律事務所を飛び出すくだりも金にまつわる話である。主題となる突飛な、表題にもある遺言状に導かれ、剣持麗子が事件に関わっていくところも金がその動機となっている。

    物語はほとんどあり得ないと思えるような内容の遺言状を中心に、とにかく様々な出来事が起きる。遺言状自体が盗まれるし、遺言状を預かっていた担当弁護士(主人公とは別のいわゆる町弁)は殺される。軽井沢が舞台というと優雅な印象だが、盗まれた遺言状を巡っては、チンピラ然としたヤクザまで登場する。
    物語はさまざまな出来事を巡って、混沌とした様相さえ感じるが、読み手は主人公たる剣持麗子の視点と思考を追体験しながら、事件の謎を詳らかにしていくこととなる。追体験の中で、多くの出来事に潜ませていた伏線が回収されていく。この過程が実に快く感じる。
    物語が混沌とした様相なだけに、伏線回収にともなう心地よさもより大きい。本作の最も推奨すべき点は、この伏線回収の妙味にあるのではないだろうか。実に多くの伏線を物語に潜ませておいて、それらを細大漏らさず回収していくところに、著者の力量を感じた。

    遺言状を主題としたミステリー小説というと、横溝正史の代表作の一つ『犬神家の一族』が思い出されるが、時代背景が異なるせいか『犬神家』のようなおどろおどろしさはない。むしろ、とんでもない出来事に遭遇しても、決して怯むことなく果敢に、ときには飄々と眼前の出来事に対峙する剣持麗子のおかげで、読み手も不思議と安心感を得ながら読み進めることができるように思う。
    一方で、なぜ不可思議な内容の遺言状を書いたのかという謎(Why?)が物語を牽引する構成は、本作も『犬神家の一族』も共通する。冒頭に最大の謎は提示されるので、読み手にとっても物語の軸は明確になる。
    主人公の人物像といい、物語を構成する謎といい、そして著者の力量といい、本作は「安心感」に満ちた小説である。結末に対する好悪は人それぞれであろうが、きっと楽しい読書体験になる作品であろうと思う。

  • 話題のミステリーということで期待して読みました。
    セリフや運び方に好みはありそうです。それはないよねという展開もあるがそれはさておき。
    ミステリーにとどまらず様々な分野の作品を生み出しそうな期待

  • 1.読みやすい
    2.話の展開が難しくない
    3.兄貴が汚れ役(ダイヤくらい派手にではない)
    4.町弁?いい弁護士
    <2023.2再読>
    すっかり、結末を忘れたため
    ミステリー小説として
    ①疑問、最初の殺人は見逃されたのはわかるが
    2件目は検死の毒物からすぐ犯人がわかると思う
    ②犯人は捕まらず、犯行が義息にわからないと
     思っていたのか?
     事故死でないとバレるだろう普通。
    ストーリー展開として
    ①登場人物が繋がる必要があるので、麗子の兄の役割
    と平井の関係はすぐわかる
    ②弁護士が事件を読み解くところがポイント
     作者の得意分野
    ③女性心理はこじつけに近い気がしたけど、そういう
     かたが今時代にいるのか?
     女性作家だから納得せざるを得ない
    ④元彼の子は一人だけなのか?
     なら本命は一人だな

    <初回感想>
    残念なところ、血の繋がりが原因で殺人がおきていること
    私は未だに本当の父親が別にいるのではないか?
    取違されていないのかと長年思っている。
    生活保護も辛いが、ギリギリも辛い。まずは自分がお金を使う親。世間体を気にして、言うことが変わる。
    子供を奴隷のように扱う。お金を欲しがる。
    こういう人が世間には沢山いると思うので、血縁は信じていない。友達からも、同情されるくらい。

    なので、殺人の理由は有り得ない。いいとこの人の考えだなと思った。
    北の国から状態は令和でも存在する。
    益々、格差社会が拡がりを見せ、対立が起きるかも?
    日本じゃ、死にたいから人を殺す。矛盾な犯罪が増えないように社会にしてほしい。

    次回作に期待!

  • ドラマ化されていたので(観てはいないが)、綾瀬はるかのイメージで読み進める。できる女でお金のためには手段を選ばない感じが、ありがちなキャラだが嫌味がなく痛快ではあった。展開や表現に深みは無く、軽く読める。

  • TVで紹介していて『面白そう!』と思い、ハードカバーを久しぶりに購入しました。
    著者が、弁護士という事で法律について詳しく書かれていますが、その描写もわかりやすかった。
    ご本人は、作家になる為に生活の基盤として弁護士になったと、軽やかにおっしゃっていました。色々凄いなーと感心しました。
    導入もいわゆる『殺人』という重い感じではなく、本当は普通の病死だったのでは?と最後までワクワクしながら、あっという間によんでしまいました。
    こういう発想のミステリーって新しいような気がします。
    すっかりファンになり、次回作が楽しみです。

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著者プロフィール

一九九一年生まれ。アメリカ合衆国テキサス州ダラス出身、宮崎県宮崎市育ち。東京大学法学部卒業後、弁護士として勤務。第十九回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、二〇二一年に『元彼の遺言状』でデビュー。他の著書に『剣持麗子のワンナイト推理』『競争の番人』『先祖探偵』『令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法』などがある。

「2023年 『帆立の詫び状 てんやわんや編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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