エマニュエル・トッドの思考地図 [Kindle]

  • 筑摩書房
3.52
  • (3)
  • (14)
  • (10)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 138
感想 : 16
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (203ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • インプットの過程、つまり読書が最初の思考プロセスであることに納得した。筆者の読書術がページを割いて解説されていて面白い。興味の赴くままに、本業の研究分野から外れて、いろいろなジャンルの本を読む「カニ歩きの読書」という、読書遍歴を表現した言葉とイメージ図も気に入った。思考の概念図もところどころに登場するので分かりやすい。とくに冒頭に登場する、本書の見取り図は、思考のプロセスとキーワードが視覚的に整理されていて、新たな目次のタイプとしても興味深い。

  •  エマニュエル・トッド著「エマニュエル・トッドの思考地図」を読みました。著者はフランスの歴史人口学者・家族人類学者です。社員が貸してくれたので読んでみました。

     「調子の狂ってしまったこの現実世界で何が起こっているかを見通し、それがこれからどうなっていくかを考えること―これこそが現代の私たちに最も求められているものであり、いわゆるAI(人工知能)には代替できない人間らしい知的な営みでもあると思います。それがつまり、『思考する』ということなのです。」とありました。今一つ、つかみどころがありませんが、「AIにはできない」と聞くと興味を惹かれます。著者は乳幼児死亡率の高さからソ連の崩壊を予言したとありましたが(この辺りは著書「最後の転落」に詳しく書いてあるようです)、経営者としても「これからどうなっていくか」を考えることが重要ですし、しっかり「思考」しなければと思います。

     しかしながら、著者にとっての思考とは「歴史学、人類学などの文献をひたすら読み、そして何かを学んだとき、知らないことを知ったときの感動こそが思考するということでもあります。」ともありました。先述した部分とは矛盾するような内容ですが、「ひたすら読み」というところは、読書好きとしては好感が持てましたし、1000本ノックのようなガムシャラな感じもいいですね。小難しいことを言われて、ぼんやり理解するよりも小気味よいです。私も「ひたすら読み」たいと思いました。

     父親と共に旅に出て、その先で出会った本を購入しようか、当時はお金に余裕もなく迷っていた時に、父親は「今買わなかったらお前は一生この本を買うことはないだろう。でもここで使うお金はまたいつか手元に戻ってくるものだ」と言ったのだそうです。こんなこと言われたら、また積読が増えてしまうではありませんか。でも、これくらいの意欲で新しい知識を取り込んでいくのが学者なのでしょうね。

     そんな著者が、コロナ後を施行した仮説は「何も変わらない。いろいろなことが明確になり、強まるだろう。」ということでした。アフターコロナについて様々な議論がある中で、「何も変わらない」と言えてしまうのは凄いですね。どうしても「元には戻らない」という悲観的な気持ちになってしまいますが、また皆でワイワイできる日が来てほしいものです。

     著者の本や、著者の読んだ本などたくさん紹介されており、ますます、そしてひたすら読みたくなった本でした。

  • 帯のコピーが凄い!
    現代最高の知性が明かす思考の極意
    つい買ってしまった(*^O^*)
    最近はフランス人の著作を読むことが増えた。
    この本は完全日本語オリジナルと帯に書かれているように、日本様に書き下ろされた本であり、何度も日本の皆さんはという語りかけが入ってくる。
    ソ連の崩壊や、イギリスのEUの離脱を予想した現代最高の知性が明かす思考の極意とは何か?

    一言で言うと、謙虚であるということだ。

    数字を読み替えることをせず、世の中で指標とされている何度も変換された数字を信じず、ただただリアルな数字とを客観的に見極める。それは自分が暮らしている環境についても同じように行うということである。

    一言で言うとそうだが、他にも歴史を学ぶ点など、様々な視点を取り入れる事が書かれている。

    人生無駄はない。

    現代最高の知性の持ち主が、どんな青春を過ごしたのかも興味深く読める1冊である。

  • 思考とは何かを自らの著書を表す際に用いられるプロセスを明示し(日本の読者に対する本書の成り立ちで記載された「思考の見取り図」は興味深い。)、思考の前提としてのインプット=膨大な読書とデータの理解・蓄積)から着想(仮説)を比較やデータ確認で検証し、歴史的観点・地理的観点から予測というアウトプットに至るプロセスはフランスやヨーロッパの情報や著者の個人的な知見を除けばそれほど難しくはなく読める。
    ソ連の崩壊を予測しえたのがデータの読み取りと彼の歴史に関する読書に由来するのはよくわかった。
    フランス人(イギリス人の血も引いており、フランスの教育よりもケンブリッジでの教育が彼にとって効果的だったことを重視している)でありながらイギリス経験主義的発想を重視し、デカルト的な哲学の空疎さを批判しているのは面白い。
    更にマクロン政権に対する辛辣な批判やEU統合に対する反対論も著者独自の思考に由来することにも触れている。
    本著が著者の聞き取りによるせいかやや断片的な記述(掘り下げが深くない)が多いのが惜しいところ。

  • ・P138:
    (1)思考の面では自国に留まらず、外へ行ってしまいなさい
    (2)SFを読み、想像の世界へ行きなさい
    (3)すでに死んだ人の本をより多く読みなさい
    (4)恋愛面で危機にある時ほど研究に没頭しなさい

    ・P202:映画「シン・ゴジラ」でも、誰が責任を持って決断をするかということが柱となっていましたね。でもこれは日本の「文化的側面」なのです。他方で強調しておきたいのは、フランスやイギリスのようなもともと個人主義的な文化のある国々においても、この種の順応主義のメカニズムが台頭してきているということなのです。

    ・P204:西洋の個人主義では、すべてが個人ありきで始まります。個人の中には、たった一つの、すべてを統制する自我が存在する---こうした規定が個人主義的文化の基盤にあります。

    それと対照的なのが、こうした自我の存在というのはそもそも幻想であるとする仏教的な考え方だと思います。仏教では「私」や自己の存在を明確に否定していますね。

  • 【オンライン読書会開催!】
    読書会コミュニティ「猫町倶楽部」の課題作品です

    ■2022年2月20日(日)16:00 〜 17:45
    https://nekomachi-club.com/events/fc669ecd2466

    ■2022年3月8日(火)20:30 〜 22:15
    https://nekomachi-club.com/events/4381cce90c9b

  • 「現代最高の知性」エマニュエル・トッド氏が思考の極意について語った本。

    ソ連崩壊やリーマン・ショックなどを予見した世界的知識人、エマニュエル・トッド氏が日本の読者に向けて自身の思考法について語っています。

    アウトプットは膨大なインプットから生まれます。思考の第一歩は徹底的な情報収集から。

  • 理系だったらしい。歴史好き。人口学を手始めに。

  • 書斎にあるトッド本は『帝国以後』だけなのだが、新聞やTVでのコメントやインタビューが強烈なので借りてみた。“どんな思考してるんだろう?”と。ちなみに風貌も強烈。
    なるほど、本物の学者だ。思考のインプットは歴史とデータ。家系的には典型的なフランスのインテリなのだが、ユダヤ系であること、フランス合理主義よりイギリス経験主義によること、哲学嫌いなど、学術界や大学では認められなかった。むしろ、リスクを負って戦ってきた。
    大学人としては「今日の大学は順応主義を生み出すところになっている(p201)」が耳痛い。

  • 著者がどう自らが思考して行くかをまとめた本。まああまり深い内容では無かった。なので、結構スッと読めた。ユダヤ人で共産主義者だった祖先は良く第二次世界大戦を生き延びたな。フランスに居たからか。外から見る目の重要性を記しているが、それは著者は英語の文献を読むことで補っている。ケンブリッジで勉強した事が重要だったようだ。後、フランスの教育は哲学を良く勉強させるという件も面白かった。その辺りに地域性が出るんだなと。最後の未来のところでコロナについて光を当てているが、日本については、感染をよく抑えていて、内部での満足感は得られるかもしれないが、これまでより更に高齢者を救う事よりも子供を産むことの方が大切であるという事実を見えなくさせてしまう可能性があると指摘している。その通りだと思った。フランスの指導者層への辛辣な言葉は記憶に残った。

全16件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1951年フランス生まれ。歴史人口学者。パリ政治学院修了、ケンブリッジ大学歴史学博士。現在はフランス国立人口統計学研究所(INED)所属。家族制度や識字率、出生率などにもとづき、現代政治や国際社会を独自の視点から分析する。おもな著書に、『帝国以後』『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』などがある。

「2020年 『エマニュエル・トッドの思考地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

エマニュエル・トッドの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×