スモールワールズ [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりに衝撃的な作品に出会いました、、6篇から成る短篇集です。表紙からホッコリ系のハートフルストーリーかと思っていたら、大きく予想を裏切られました。

    不妊に悩むモデルの既婚女性が家庭環境に恵まれない少年と出会う「ネオンテトラ」、体格はよいが小心者の高校生の少年が、離婚するといって実家に戻ってきた豪快な姉とともに、クラスで浮いている同級生の少女と奇妙な交流を始める「魔王の帰還」、やる気のない教師が、別れた妻と暮らしていたはずの娘と意外な形で再会する「愛を適量」等々。
    「魔王の帰還」が一番のお気に入りです。暗い話が多い中で、この話はコメディタッチでとても面白かったです。

    『夕方、街が暗くなると、家々の明かりを眺めて しまいます。あの、無名の窓の内側には、
    どんな人たちが何を思って暮らしているんだろう?
    歩きなから、電車に揺られなから、考えずにはいられない。この物語は、そんなわたしが見たまぼろしの光です。
    でもどこかにあるかもしれない光です。』

    これは著者のメッセージですが、ここからこの本を執筆できる想像力が素晴らしいと思います。どの話も先が読めなくてドキドキしながら読みました。
    ままならない人生の中で救いが全く無いわけではないけれど、何があっても人生は無慈悲に続いていく。読者に無駄に希望を抱かせないところが著者の作風なのだな、と思いました。

  • 最近流行りの少しずつ登場人物の重なりあった短編集。
    円満そうに見えて、実はすれ違いのある夫婦、刑務所にいる加害者と文通で繋がる被害者、高校を退学になった弟と、離婚を言い渡された姉、幼い頃、離婚で離ればなれになった父と子。
    様々な思いが交錯して響き合う。切ない物語だった。
    筆者のことは何も知らずに読んだが、BL小説を主に手掛けているとの事。
    言われてみれば、物悲しい筆致はBLに合いそうな雰囲気を感じる。
    描写が丁寧で文章も読みやすい。次回作にも期待したい。

  • 6つの短編集。2番目の短編「魔王の帰還」の中の、大柄で厳つい、迫力のあるお姉さんが指摘しているように、すべての登場人物が、水の少ないビニール袋の中の、金魚すくいの金魚のように、自分のまわりの小さな世界で、苦しくて、息が出来なくて、アップアップしている印象を受けました。

    特に印象に残ったのは、3番目の「ピクニック」。祖父母、両親、生まれたての赤ちゃんの、陽当たりのいい芝生の公園での楽しいピクニック。しかし、この家族は、ここまで来るまでに、過酷な試練を乗り越えてきました。この話は、他の短編と異なり、出だしから、ちょっと違和感があります。誰か、謎の第三者が語っている文章です。この家族を襲った悲劇。語っている謎の人物は誰なのか?ドキドキしながら読んでいくと、最後にアッと驚く結末が待っています。読み終えた後に、この謎の人物とともに、生まれたばかりの赤ちゃんの、健やかな成長を願わずにはいられなくなります。

    初めて読んだ、一穂ミチさんの小説ですが、最初の数行で、グッと心を鷲掴みにされ、一気に読ませてしまう力のある文章でした。前のめりになって、ページをめくる手を止められませんでした。

    今、社会で問題になっていること、ニュースなどでも取り上げられていることがテーマなので、身近に感じられますが、読み終わった後、色々と深く考えさせられる点が多く、ちょっと頭が疲れました。しかし、非常に満足度が高く、この作者の別の作品も読みたいなと思いました。

  • 短編集でとても読みやすい。
    ゾッとする物語やほっこりする物語などあり、喜怒哀楽が詰まった作品だった。

    最後の物語が最初の物語の伏線だったのはお見事だった。

  • 色々な作風が楽しめる短編集。
    どの作品も面白かったが、刑務所にいる加害者と兄を殺された妹の往復書簡「花うた」が特に良かった。短編とは思えないほどの読み応え。むしろ長編で読みたかった。
    「ピクニック」のゾッとする終わり方も非常に好き。

  • 「魔王の帰還」のお姉さんがいい味出しててよかった。幸せになって欲しいんだけどなー。怖いけど会ってみたい。

  • 期待せず、最初の短編「ネオンテトラ」は漫画っぽいと思いながら読んでいた。
    「魔王の帰還」で、うるうるとなり
    「ピクニック」の怖さに叫びそうになった。
    (死んだ娘の視点で描かれていて最後に真相がさらりと明かされ警告で終わった)
    「花うた」はまあまあ。
    「愛を適量」「式日」はまた漫画っぽいと思いつつも読後感はさらりと心地よかった。

  • 穏やかな文体
    だからこそ、しみてくるお話一つ一。
    せつなかったり、少し怖かったり、かなしくもなった

  • 8年も子供に恵まれない美和。
    妻に気づかれているとも知らず浮気をしている夫。
    2人は自宅でネオンテトラという熱帯魚を飼っている。ネオンテトラは、通常の飼育下ではまず繁殖させられない。仮に雌が卵を産んでもすぐ食べてしまうし、そこから運よく稚魚が孵ったとしても結果は同じ。だから繁殖用の水槽を別に用意して産卵させる必要がある。
    美和はネオンテトラと自分を重ね合わせある行動に出る。
    途中から不穏な空気が漂い、狂気を感じハラハラした。1篇目からとても引き込まれた。


    人は誰しも悩んだり、苦しんだり、葛藤したりした事があると思う。側から見たら平和で幸せそうに見えていても、何かしら悩みを抱えていたりする。6編を通してさまざまな悩みを抱えた人の世界を垣間見て、世の中はこういったスモールワールドの集まりで出来ている事を改めて思い知らされた。



  • 短編集。読み終わった後に、ミステリーではないのに、ゾクッとするような感覚を覚える作品がいくつかあり、吸い込まれるように、読み終えました。

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著者プロフィール

2007年作家デビュー。以後主にBL作品を執筆。「イエスかノーか半分か」シリーズは20年にアニメ映画化もされている。21年、一般文芸初の単行本『スモールワールズ』が直木賞候補、山田風太郎賞候補に。同書収録の短編「ピクニック」は日本推理作家協会賞短編部門候補になる。著書に『パラソルでパラシュート』『砂嵐に星屑』『光のとこにいてね』など。

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