つながり過ぎた世界の先に (PHP新書) [Kindle]

制作 : 大野 和基 
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感想・レビュー・書評

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  • COVIT-19の蔓延により、世界で人間の行動の同期が起きた。
    危機は倫理的進歩をもたらす。
    哲学者マルクスが、新しい時代の比較的明るいビジョンを示す一冊。自分では思いつかないような考えに、驚きと感動をおぼえた。
    倫理とは人間生活の秩序である。
    これまでの一般的な考えと異なり、倫理と経済、倫理と他利が共存すると述べる。
    グローバリゼーション、新自由主義経済が終わる。
    COVIT-19の死亡率は0.4%と高くないため、感染者数が増えて、自然に集団免疫を高めるべきと主張するウイルス学者もいる。
    コロナ後のビジョンはすべての人間が先住民族のように生きる社会である。
    ゆったりしたスピードでグローバリゼーションが起きて、人々が経緯と感謝の念を持って生きている。誰もが生きていることに感謝し、知的な生命が宿るこの地球に住んでいることに感謝している。
    SNSは自由民主主義を弱体化させる危険なドラッグである。
    SNSには、討論で合意点を求める論理的側面や組織的制御がない。
    SNSは本人が望まない自己を押し付ける。ちなみに「元の自己など存在しない」ということは、ソクラテスが言及している。
    人間は「人間とは何か」を問う生き物であり、人間の本質は答えでなく問いである。
    「人生の意味とは?」生きることの意味は生きること。
    人には幸せになれるゾーンがある。このゾーンを見つけられたら幸せだ。
    「神の正体」
    人の精神性があるレベルに達して、自己を完全なる人間として認識したとき、神聖性を体験する。
    ヘーゲル曰く「キリスト教の意義は、神が存在しないと認識すること。」
    考えるとは現実を「把握する」ことであって、創造ではない。
    我々が「確かに生きている。」を言えるのは、美を感じたとき。良い会話、良いワイン、良い食事。高度な感覚的快楽はすべて、良い暮らしの一部なのだ。

  • p.2022/2/25

  • 「国と国とのつながり」「個人間のつながり」「経済活動のつながり」を読み解き、終章で改めて個人の生のあり方を見つめ直す一冊になっています。
    個人的にトランプを一定評価している点はなるほどなと思いましたが、一方で賞賛しているメルケルが難民・エネルギー・ウクライナ関連で問題になってることに関係しているのを見ますと今どう考えてるのかなと思いました。

  • 武田鉄矢がラジオで紹介していたのを機に読了。
    コロナ禍によって世界中の人の行動が同期されたという表現は笑えた。
    倫理資本主義というのは机上の空論でしかないような気がした。
    限られた範囲で哲学者が企業経営に関わるというのはあり得るのかもしれないが、
    かなり限定的だろう。

  • グローバル化,ICTのユビキタス化,あらゆる側面で繋がりが増した。それがCOVID-19のパンデミックやそれを起因とする影響(悪いものも良いものも)を生じさせた。この社会のあり方に行き詰まりを見いだし,解決策?というか次の段階として「倫理」を考慮する社会(行動規範)を考える。倫理的に適切かを判断基準とする。利益が得られるが倫理的でなければ実行しない。この行動が長期的には生き残る。そうであって欲しいし,そういう願望を持つ集合体になれば社会的な変化は起きるだろう。問題は利益損失は分かりやすいが,倫理非倫理は分かりにくいこと。専門家に倫理判断をお任せする社会?倫理士とかいう職業ができたりして。

  • 対談っぽい構成です。自身の勉強不足を痛感しますが、新しい視点も得られました。著者の本を後何冊か読みたいと思います。

  • ふむ

  • 「哲学界のロックスター」が語るコロナ禍以後の世界。欧州各国ではロックダウンを実施しましたが、これは国家による暴力と警察を正当化するホッブズの『リヴァイアサン』的な状態だといいます(ガブリエルはそれをもって政府批判をしているわけではない)。この例外状態は、国によって差がありました。例えばスペインでは、子供を含む全ての国民を自宅待機させました。またフランスではジョギングは禁止されました。ドイツは比較的穏やかで、ジョギングも買い物も森で友達に会うこともできた。ドイツが比較的経済的にうまくいっているのは、このように倫理的に優れた決断を行なってきたからだといいます。

    ガブリエルのいう倫理とは、「文化圏によって異なることのない、普遍的な価値のこと」です。そして、コロナ禍のような危機は倫理的進歩をもたらすといいます。確かに、ウイルスと戦うためには、みんなで協力して感染対策/(ワクチンなどによる)集団免疫獲得を行う必要があります。ウイルスに関する情報は隠さずに公開していかなければなりません。が、1つ注意したいのは、利他的な行動のみが倫理的行動なのではないということです。経済と倫理は両立しうる。経済的価値体系を倫理的価値体系に一致させる、つまり彼のいう「善の収益化」ができれば良いのです。儲けるためには人を搾取しなければならないようなシステムから転換しなければなりません。(これ、経済学でいうところの外部性を内部化するという話だと思います)

    コロナ対策を行ううえで、やってはいけないことをガブリエルは2つ挙げています。1つめは感染者数ばかり追いかけてしまうこと。感染者数を見ただけでは、感染が実際に増えているのか、検査数が単に増えたからなのか判断がつきません。重要なのは死者数とICUの病床数(重症化した患者数)であり、これは抑えなければなりませんが、軽症または無症状で終わる感染者数はどうでもいい。むしろただで免疫を高めているから結構なことだとも言えます。(注:本書はデルタ株流行前のもの)メディアは毎日感染者数を発表していますが、人にわけのわからない数字を見せても混乱させるだけです。

    2つ目はウイルスの専門化が、政策を決定してしまうことです。肝臓の専門医に「酒を飲むべきでしょうか?」と聞けば、その観点から「絶対に飲むべきではない」と言うでしょう。でも、この回答をもって、酒の販売を禁止したりしないですよね。酒文化も大事です。同様に、ウイルス学者に「どうやってウイルスと戦うべきでしょうか?」と聞いたら、「家に籠って決して誰にも会わず、セックスもするな」と言うわけで、これを真に受けてはいけません。いや、専門家としては正しい回答なのですが、他の要素、つまり経済とか人の幸福とかつながりとか、そういうのへの影響を全部ひっくるめて判断しなければならない。判断するのは政治家です。ウイルス学者ではない。

  • 新進気鋭のドイツの哲学者ガブリエルがコロナ危機前後の世界の動きをエッセイ的にまとめた一冊。秀作

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著者プロフィール

【著者】マルクス・ガブリエル
Markus Gabriel/1980年生まれ。後期シェリングの研究によりハイデルベルク大学から博士号を取得。現在、ボン大学教授。日本語訳に、『神話・狂気・哄笑:ドイツ観念論における主体性』(ジジェクとの共著、大河内泰樹/斎藤幸平監訳、堀之内出版、2015年)、『なぜ世界は存在しないのか』(清水一浩訳、講談社選書メチエ、2018年)、『「私」は脳ではない:21世紀のための精神の哲学』(姫田多佳子訳、講談社選書メチエ、2019年)、『新実存主義』(廣瀬覚訳、岩波新書、2020年)、『アートの力』(大池惣太郎訳、堀之内出版、2023年)など。

「2023年 『超越論的存在論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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