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感想・レビュー・書評
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去年読んでとても勉強になった本「DNAの98%は謎」の著者・小林武彦さんの本をもう1冊読んでみました。
「生物はなぜ死ぬのか」
細胞や生物がどのように進化してきたのかというストーリーを追いながら、なぜ細胞や生物が「死」んでいくのかを少しずつ納得させてくれる本でした。
生物の「老化」の仕組み、DNAやRNAの仕組みなどの難しい話を織り交ぜつつも(そして難しくて分からない部分もありつつの)、本を読んで大まかに分かったのは
「生物は、生まれて、死んで、生まれて、死んで、その時々の環境に適応できる変化をしながら進化してきた」
ということ。1代の生物が長らえるのではなく、新たにサイクルとして回していくことで、環境に適応した変化をすることができるのである。
生殖の仕組みも、ただ単に同じコピーを増やすだけではなく、遺伝情報を混ぜることによって多様性を生み出し、その時の環境に適応した個体を見つけ出すために必要なプロセス。
なるほど、そうか。
極端な話、もしも、生物が発生した頃の「原核生物」が死ななかったら、原核生物から真核生物への進化もなく、そこから多細胞生物への進化もなく、それ以降の我々のような知的生物も生まれなかった。
そして、それが行われてきたってことは、地球という環境で生きていくための必然の営みだった、ということですね。
理解はした! 納得はできないけど(苦笑)
このような絶妙な仕組みを誰が設計し得たんだろう。すごいな、進化。
細かい話だけど、1947年から2019年の年齢における生存率のグラフが面白かった(第4章中)。
人間の寿命は、明治大正時代の頃は44歳ぐらい。
それが2019年には80歳を超えている。
1975年ぐらいになると、40歳ぐらいまでの生存率が横ばいになってきていて(ほぼ100%)、アクシデントで死ぬことが極端に少なくなっている。2019年のデータでは、その横ばいが60歳ぐらいまで伸びている。
以前は、新生児の生存率が悪かったり、当時は直せなかった病気で亡くなることがあったりしたけれど、今では多くの病気や事故で、亡くなるのを防ぐことができている。
そして、どの年代のグラフでも、最長記録(その年代での再高齢者の年齢)は100〜115。人の最大寿命は115歳ぐらいということになるらしい。
もう1つ興味深かったグラフは、やはり第4章の中にあった「年齢によるがんの死亡率」のグラフ(2018年データ)。
55歳から一気にグラフが上昇している。
がんは、細胞分裂や紫外線の影響などによって、DNAにコピーエラーが溜まってきて、必要な遺伝子が壊れてしまうことによって起きることを考えると、55年ぐらい生きるとエラーが溜まりきってしまう、ということか。
言い換えれば「ゲノムの寿命は55歳」。
なんだか、すごい事実を目の前に提示された気がしました。そうか、ゲノムの寿命は55年ぐらいなのか〜。
寿命に関する研究も進んできているようなので、今後、長寿になるための生活習慣や薬なども開発されるかもしれないけれど、なんにせよ、
「生物として進化していくためには『死』は必要なもの」
ってことだけは確からしい、ということがわかりました。うーん。なるほどね。了解。
昨年読んだ「DNAの98%は謎」も、目から鱗の情報が詰まっていたし、この本にも、目から鱗の情報が詰まってました。
小林武彦先生の本、全部読むか〜!
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目次メモ
はじめに
第1章 そもそも生物はなぜ誕生したのか
第2章 そもそも生物はなぜ絶滅するのか
第3章 そもそも生物はどのように死ぬのか
第4章 そもそもヒトはどのように死ぬのか
第5章 そもそも生物はなぜ死ぬのか
おわりに -
「生き物が生まれるのは偶然ですが、死ぬのは必然なのです。壊れないと次ができません。」
これをターンオーバーという。そうか。人間を生物としてみたときに、そういうことがいえるのか…。
必然というより、次世代のために死ななければならない。そうか。こんなに自分がかわいくて死にたくて生きていたくてたまらないのに、生物としては死ななければならない。そして著者はこうともいう。
「死の恐怖から逃れる方法はありません。この恐怖は、ヒトが「共感力」を身につけ、集団を大切にし、他者とのつながりによって生き残ってきた証なのです。」
これは最近読んだ「アンドロイドは電気羊の夢をみるか」を思い出す。
そして最後はAIについても触れる。「死なない人格と共存することは難しいです。」という前提でどのようにAIを活用していく未来があるかを考えている。「ヒトに影響力があり、且つ存在し続けるものに、宗教があります。」多くの人が信じている絶対的なものに頼ろうとするという宗教とAIの共通性。そうだなあ。それだけじゃ弱いかもしれない。
人間って、身近な人の死で自分の死を考えることが多いと思うが、この本によって思いも寄らない角度から自分の死を考えさせられた。大きな生物という捉え方から自分に焦点が合っていくときになんともいえない不安定なぐらぐらした気持ちになる。いまを生きるヒトすべてにおすすめ。新しい感覚を得る。 -
生物学者の手による「死」とは何か?を解説した入門書。
「鮭は産卵後すぐ死ぬのに、人間はどうして子どもを産んでもすぐ死なないの?」って、自分の子どもに訊かれたらたぶんビミョーに傷つきますが、本著にはその答えが載っています。
また、本著、思いのほか哲学的かつ実際的です。生物学という箱庭に閉じた、象牙の塔の中の話ではなく、世の中に生きる人間の立場から著者が幅広く論じられていて、こういう所は新書の良いトコロでもありますね。
内容はまず生物の誕生/増殖仕組みから入って、ここは正直読んでいて少ししんどかったです。でも、後半で活きてくる布石のような記述もあり、我慢しつつ読み進めると、ちょうど半分くらいから面白くなってきました。
(とは言え、専門用語が各所に残るのは、扱うテーマを考えればやむなしか…)
「死生観が一変する」との帯コメントは少し言い過ぎかな…とも思いましたが、「生まれるのは偶然だとしても死は必然」や、我々は次の世代のために「死ななければならない」といったフレーズは心に残ります。
※トーンは違いますが、「何も対策を取らなければ、残念ですが日本などの先進国の人口減少が引き金となり、人類は今から100年ももたないと思っています」というフレーズも印象的でした。
また、生物の生き残りのカギは「多様性」で、そこから敷衍していくと、「子どもに何を教えるべきか?」が見えてくる、というのは「生物学」を飛び出た発想ながら実に面白いです。
つまり、多様性=個性の実現。家庭に閉じず、中高生くらいからたくさんの「家の外のいい大人」と関わらせるべき、というのはなるほどと思わされました。
上記の「多様性」は読書についても言えるのかな?と思ってまして、「家の外のいい本」とたくさん関わりを持てるのは良いコト…なはず!本著も自分の多様性を広げてくれたはずです。
ただ、最後に1点。ページをめくってヘラクレスオオカブトの幼虫がででんと載ってた時、軽い悲鳴が出たんで勘弁してほしかったです(笑 -
■1000円で生物学としての生物の死を考えることができる。
■内容が濃い。濃すぎて消化ができず、何度も読み返してしまう。200ページの本だが読み終わるのに1週間以上かかった。それでも、全ては理解できない。
■生物がなぜ死ぬかだけを知りたいのであれば第5章だけ読めばいいだろう。しかし、地球にどのようにして生物が誕生したのか、コロナウイルスの構造、過去に5回の生物大量絶滅があったこと、生物の寿命、老化とは何か、AIの出現、などがその前の4章に書かれていて興味が尽きない。良書。 -
気になっていた本書、読了。
タイトルを見た娘から一言、「生物はなぜ死ぬのか」疑問に思ったことある?と。
生き物がすべからく死ぬことは自明のことなので、WHYという意味では疑問に思ったことはない、と答えた。
本書はWHYについても、HOWについても主に分子生物学的に言及されています。
HOWの方については、先日読んだ「死体格差」の方で勉強したな。
生の対極には死があるので、死について知ることは生について知るのと同じと言えるだろう。
大学の時の必読書に指定されていたのが、「利己的な遺伝子」という書籍。
動物行動学者であった著者。生物は遺伝子の乗り物であり、個々の生物は種としての遺伝子を残すためだけに存在しており、そのための行動がプログラムされているという考えが書かれている。
うろ覚えではあるものの、自己の遺伝子を多く持つ個体を残すように、選択をする(させられる?)ように(蜂の例だったように記憶しているけれど、)プログラムされているというもの。
本書でも、親世代は自分よりも優秀な子世代を守るために、死ななければならないとありました。
生かすための死、ということ。
積極的な死、という表現がとても印象に残った。
ホタルイカも身投げするけど、これとは違うだろうなw
in vitroにおけるプログラム細胞死やアポトーシスのことは勉強したものの、
「食べられて死ぬ生き物」が長生きを放棄して、老いの防止に関連する遺伝子を進化の過程で手放したことは、種としてそういう選択もありなんだと、生物の多様性(可能性)にほんに恐れ入りまする。
カゲロウの成虫が口を持たないこと、クモが子どもの最初のご飯になること、サケが産卵後すぐに死ぬこと。
死が悲劇であると感じる共感力を持つ人類の端くれとしては、とても残酷なことのように感じる。
ただ、ここでいう生物の単位が個でも種でもなく、遥かむかし有機物のスープの中で誕生した原始の生物の末裔、と捉えるならとても納得がいく。
この考え方は私にはなかったもので、新たな視点を得た。
とはいえ、生きることが目的で、進化はその結果に過ぎないとして…
目的のために避けるべき死を手段として用いていることが面白いと思う。
なんていうか小狡い?生きることへの執念を感じる。
そういえば、昔生物に興味を持ったきっかけが、生き物が生きることの目的を知りたい、だったんデスヨネ。
生きることは目的であって手段ではないとされているけれども、
単なる状態である死にも意味を見出そうとするのなら、
生きて生きて生きて…その先に生物は何者になっていくのか、いつかどんな最期を迎えるのか、知りたいと思う。
まぁ、往々にしてあっけなく終わっちゃうんだろうけどさ。
意味なんてない、はつまらないし寂しい。
たとえ誰からも賛同を得られなかったとしても…死ぬまでには何か、必ず自分なりの回答を得たい。
なんか、書いてて思った。
手塚先生の火の鳥みたい…
時間ができたらちゃんと全部読みたいな。
ヤマアラシのジレンマ、という言葉があるけれど、トゲを捨てて、ハダカデバネズミみたいになったらきっと長生きできそうだし、もっと生きやすそう。
長生きは望まないけど…見た目的にはそうだなぁ、ハダカデバネズミよりはハナモグラの方がいいな。
共感力って便利だけれど、とても疲れる。
備忘的メモ
生物学は新参者
ここ近年の人間がもたらした大量絶滅は隕石級。
食べられないと死ぬ生き物と、食べられて死ぬ生き物がいること。 -
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感想
ただの乗り物。生物は遺伝子を次の世代へと運ぶ。だから機能が落ちれば次の物に乗り換えれば良い。ただそれだけ。死を恐れる必要はない。 -
非常に面白かった.
死には理由がある.必然だったとも言えるが,結果的に種を維持するために子供にターンオーバーして死んでいくのが生存上有利だったということ.
今の我々が存在するのは,分子レベルから始まった様々な合理的な化学反応の積み重ねだということがよくわかる. -
25メートルプールと腕時計の話