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日本経済新聞社小中大
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予測不能の時代 矢野和男著 働く人の幸福度どう高める
2021/6/26付日本経済新聞 朝刊
予測不能の時代だからこそ、迷いなく働くためにはハピネス(幸福感)が必要だ、とするのが本書の主張だ。
働き手の幸福度を計測する著者の研究は数年前にも本になったが、続編ともいえる本書ではわずか数年の間にもこの分野が深く、広い領域に広がっていることを理解できる。ウェルビーイングという言葉も耳にするようになったが、同じことだ。
最も興味を引くのは「幸福のシークエンス(配列)」といわれるものを数字で明示したことだ。スマートフォンのアプリから何千人という人の動きを分析し、「幸せが感じられない人間の動き」を0、「感じられる動き」を1で表して時系列で並べると、「0010(信頼)」「0111(感謝)」など何通りかの特徴的な配列が浮かび上がってくるという。
これを分類し、1がどこで0に変わったか、0から1に変わる時に何があったか、などを丁寧に分析して、現場の社員にケアを施すと、組織全体の生産性が向上しやすくなることがわかってきた。
著者に言わせると、人間は本能的に1を志向するが、0になるような要因が組織にはたくさん存在する。長すぎる会議やパワーハラスメントなどがそうらしい。人間の本質に迫る興味深い分析が楽しめる。(草思社・1980円) -
ビッグデータでは未来の予測はできないという話であるが、その理由対策が簡潔にまとまっている。
予測については、
1データ分析によるパターンの抽出。
2機械学習による1の最適化。
3現実と2の差分を考え、過去の延長線上でない未来を考える。この3が今はまだできていないし、1、2に集中しすぎてそもそもおろそかになっている。筆者はその対応として易経を取り上げ、私/我々と表出/内面の4象限とそれをさらに四分割した16パターンでで変化の兆しを捉えることができるとする。むしろ、筆者は人間の幸せはあくまで能動的なものとし、易経の局面を利用し積極的に変化を進めることこそ、幸せに繋がるとしている。 -
物理学から東洋古典まで自在に駆け回る、新たな思想家の誕生を感じさせる。ぜひ長生きして多くの名著を生み出して欲しい。
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仕事などがうまくいっているから「幸せ」ではなくて、「幸せ」だと仕事がうまくいくと。ただ、論を展開しているわけではなく、デバイスやスマホを使い、それを実証しているので、説得力がある。既存のルールに縛られていたら未来に対応できないと言っているが、まさに、このコロナ禍における政府の対応は、現行のルール(法律)に則ているので、諸外国に比べて対応が遅くなったのではと思う。全体を通して、この未来がわからない時代の対応について、どのように考え、行動すべきかが書かれていて、山口周さんなどが説いているところと同じ考え方で、より細かく記してあり、参考になる。