細田監督の作品の中でサマーウォーズが一番好きな私にとっては、楽しみにしていた続編的作品だった。世界観はサマーウォーズよりもかなり進化している。前回の和風(真田幸村の家臣の子孫たちの戦い)のものとは違っており、今回はディズニーの美女と野獣のような雰囲気だった。
母親に死なれてから塞ぎ込み、歌も歌えなくなっていたヒロインのすずがインターネットの世界で世界的な歌姫ベルとなり、自信を取り戻すシーンが1番面白かった。シンデレラのような展開で、この後どうなるんだろうとドキドキしながら見ていた。
ただ、話のあらすじに少し違和感を感じる部分もあった。いきなりやってきて、ベルのコンサートをめちゃくちゃにした竜に、どうしてベルは優しい気持ちを持てたのか。この辺の心情がもう少し丁寧に描写されていると良かったと思う。竜との間に恋愛感情が芽生えたのかなと思ったが、そうではなかったようだ。
そして虐待を受けている兄弟を助けるため、高速バスに乗ったすず。大人たち(特に父親)が追いかけていかなかったのはなぜか。高速バスでは遅いから、ここはリアリティーを求めず、ご都合主義で飛行機を飛ばしてほしかった。後は、父親がすずと一緒に兄弟の父親と対峙して、警察を呼んでくれたりしてくれた方が、シーンとしては自然だと思うし、父とのわだかまりも解けやすくなったと思う。暴力を振るおうとする兄弟の父に対し、無言で見つめるすず。何故か恐れ慄いて逃げ出す兄弟の父。ここも不自然。
警察を呼んでパトカーが来て、「子供にまともなしつけをしている私が、なぜ連れて行かなければならないんだ!! 私がいないとこの子たちはダメになるのに!!」あたりのセリフを虐待親が吐きながらパトカーに乗せられて連行されていく方が現実的だと思う。
幼いすずを残して、他人の子供を助けるために自らの命を犠牲にして川に入っていた母親の気持ちも理解できない。その時の母の心情がOZまたはUの世界に残っていて、すずが触れられるくだりがあっても良かったと思う。
また、欲を言えばその後の学校生活の描写も欲しかった。すずが勇気を出して、世界的歌姫ベルの正体が自分だと明かしたのだから、学校ではさぞや有名人、もしくは英雄になっているかもしれない。忍くんともどうなったのか。すずが過去のトラウマを見事に乗り越えて幸せに生きているハッピーなエンディングも見たかったなぁと思う。
細田監督は作家と映画監督をされて、ものすごく大変だろうと思う。また、常に作品の中に没入しておられると思うので、矛盾点やアドバイスをくれる人がいれば、作品はさらに素晴らしいものになるのではと思う。
ヒロインが美人だったり可愛かったりするわけではない、と言うのはなかなかよかった。また、独創的でテンポの良いストーリーで、竜の正体という謎も残しつつ、最後の終着点も予想ができないという息を呑む展開なだけに、ストーリーで感じたいくらかの矛盾が少しもったいないと感じる作品だった。
サマーウォーズ三部作として、次回作もこの世界観で作ってもらえるとファンとしては嬉しいと思う。