ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー(新潮文庫) [Kindle]

  • 新潮社
4.14
  • (150)
  • (177)
  • (52)
  • (19)
  • (2)
本棚登録 : 1569
感想 : 197
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (268ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 先に両手にトカレフを読んでから、こちらを読んでしまった(笑)
    しかし全く問題ない。

    寧ろ、世界観がなんとなく分かっている分、余計に読みやすかったかもしれない。

    この作者様は素敵だなぁと思うのと共に、この作者様の息子さんの考え方ってかっこいいなぁと思う。

    長いものに巻かれるのも怖くて、遠くから様子を伺うような私とは全く違って、己がどうすべきか、ちゃんと考えているし、その考え方が私はとても好きだ。

    自分が彼と同じような状況に陥った時、同じような行動が出来たら素晴らしいのになぁと思う。

    このちっぽけな日本という国の中だけで暮らしている自分には、全く気づかなかった世界が広がっていた。

    こんな風に、外国で起きていることを、日本人の目線で語られるのは凄く受け入れやすく、またこの語り手が女性で、母親だということも私にはとても受け入れやすかった(^-^)

  • 錆びついた自転車で夏の雨上がりの坂道を汗をかきながら漕ぎ進んでいくような青春の爽やかさを感じさせる文体だった。
    一文一文がしっかりと胸に足跡を残す。
    けして簡単な内容を取り扱ってはいないのに、とてもわかりやすい言葉で腹に落ちる説明をしてくれる。なんて優しい文章なんだろう。

    差別や分断を産むなら、多様性など無い方がいいんじゃないか?自らもアイルランド人と日本人を両親に持ち、様々な人種的バックグラウンドを持つ友人に囲まれ人種差別というものに敏感にならざるを得ない息子はそのように母に聞く。
    母は答える。多様性はそりゃ無い方が面倒ごとが無くて楽だ。しかし多様性が有れば無知が減る。そしてそれは良いことだと思う、と。

    この親子関係、とても素敵。こんな親になりたい。

  • 旅先で読んだ。一定期間別の国に滞在するとだれもが必ず多かれ少なかれ人種差別的なしうちを受けるものだけど(あるいはこちらが意識するにしろしないにしろそうしたしうちをしているということも往々にしてある)、

    多様な人種、多様な経済状況にある人たちが1箇所に集まり公共生活を営むとなると、問題が生じたら距離をとるということもできず、はるかに難しい問題が続出するようだ。

    著者は日本出身、夫はアイルランド出身、そして中学生になる息子はイギリスで生まれ育った英語話者で、日本語は話せない。ちなみに、両親は労働者階級である。

    本書はそんな、本格的思春期に突入した息子が、中学進学を機に、それまで通っていたカトリック系の公立学校にあがるのをやめ、わりとマシにはなってきた「元底辺中学」に通うことを選択し、学校生活になじんでいくまでの過程を、ハラハラしながら見守る、母親の目線から描いたドキュメント。

    多様な人種の生徒らが通い、また校内でも貧富の差がさまざま。だから問題が起きないわけがない。が、どこかカトリック系の学校とくらべると活き活きとしている。

    そんな波乱ぶくみの学校でもまれながら、息子は人種やジェンダー、そして自身のアイデンティティについて考える。考えざるをえない。

    読者は、ひたむきな彼の日常に、母親とともに一喜一憂し、ああこんな問題もあるのか、あんな問題も生じうるのか、絶対に予測できないよなとため息を漏らす。

    「地雷だらけの多様性ワールド」とはよくいったもの。日常のひだのひだまで、そのようなセンシティヴな問題が入り込んでいて。

    かたや、そのような多様性尊重を是とする教育を学校がおこなえばおこなうほどにそれが「正しさ」となり、違反する者はその正しさの犠牲になる。「正しくなさ」もまた多様性の一部であることが厄介。でもそれも考慮しないかぎり、それは理屈からしてほんとうの多様性ではないというパラドクス。

    そんなこんなを肌で感じつつ、日々思考しつつ、バランス感覚を養いつつ、けっきょく大切なのは個人どうしの繋がりであるということを身を持って知っているこの息子氏にはほんとうに頭がさがる。こちらがいかに偏見に凝り固まった石頭かを痛感させられる。

    どんなに理解しがたいと思っている他人も、相手の目線に立ってみることで、「誰かの靴を履いてみること」で、理解へのきっかけをつかめることが多い。というのは頭ではわかっちゃいるけど、息子氏は心に無数のかすり傷をうけながらも、敢然とそれを実践している。

    こちら読者はその傷をほとんど受けなくとも彼が得た知恵を、そのエッセンスを、受け取ることができているわけだ。本書を読んでしまった今となっては、なるほどと頭で納得しているだけではあまりに恥ずかしすぎる。自分自身に対して。

  • 年齢、宗教、生活環境の色々な問題に深くつっこんでいるにも関わらず、読みやすく、考えさせられる一冊でした。少しでも気になっている人はぜひ読んでほしい本です。

  • 差別、偏見、ジェンダー、富と貧困が全部混ざってとてもリアルな作品だった
    日本へ帰れば日本人らしく誇りを持てだの知らないおっさんから言われ
    住んでいるイギリスではイエローだの何だの言われ
    学校では近隣学校との差がひどく、それでも普通に暮らす中学生のぼく。
    最後、ブルーがちょっとグリーンになってよかったと思う
    作品内にも色んな箇所に散りばめられているけど
    人間誰しも知らない・分からないから怖いわけで
    知りたい知っていこうという探求心があるかないかで多少からず偏見とかなくなるのかなと思った。
    文中で出てきた「多様性は、うんざりするほど大変だし、めんどくさいけど、無知を減らすからいいことなんだと母ちゃんは思う」
    その後チーズを食べていた息子(ぼく)がどう感じたのかは不明だけど
    私の心に刺さった。

  • 多様性は面倒臭い。知ろうとする事を忘れない。

    もっと早く読みたかったなと心から思った。あと、イギリスに生まれてたら自分も子供と一緒に生きていたのかなーと思った。

    自分は同性愛者で生き方を人に話す時がたまにあるけど、正直面倒臭い。どうして説明をしなくちゃいけないんだろうって思う。少しは想像しろよと思う。異性愛者でいる事を説明する事は求められないのに。やっぱり不公平だなーと思う。

    人種や国籍や肌の色とか、いろいろな文化に触れる機会はそんなになかったけれど、私が説明を求めてしまったり、知らない事で差別をしていたりそんな事が今まできっとあったんだろうと思った。

    生き方が変わる本だとはっきり言える。
    想像力を持って知ろうとする事を忘れないで生きていきたいと思った。エンパシーは相手を思う能力だって知ったから、少しでも育てて行けたらと思った。

    それから、自分はいつもマイノリティ側にいるような感覚で生きるのはやめたいなと思った。
    その期間が長いからすぐには変わらないだろけど、そこが変われば今よりも自分らしくて人にも優しくなれるかなと少し希望を持った。

    いろんな人に読んでもらいたい、本当に良い本だ。最後に感想が書いてあるけれど、中学生でこんなに生きていく上で大切な意味のある物をちゃんと受け取れるなんて素晴らしすぎて羨まし過ぎた。

  • 学校の授業の課題図書だった本。
    表紙が可愛かったので軽い気持ちで読み始めたが、読んでいくうちに頭をガツガツ殴られているような感じがした。
    人種が原因の差別やいろいろな差別が細かく描かれていて、まるで自分もその場にいるような感覚になりながら読み進めていくことができた。
    でもこの本に出てくるのはまるで別世界の話のようで、自分は多様性とかアイデンティティとかそういうものを全くと言っていいほど考えずに生きてきたんだなと感じた。
    この本の中では学校の授業でそう言ったものを積極的に考えさせていたし、日常生活でも多様性があるからこそ生まれる様々な問題に直面して、本当に「子供はすべてにぶち当たる」という感じだった。
    学校の課題は「多様な文化を持つ人々の増加に伴う日本の教育に必要な変化とは」という内容だったけど、正直ここに出てきた環境と私が今まで育ってきた環境は違いすぎるので、どこから考えて行ったらいいのかわからないという印象。

    でもめちゃいい本。

  • 英国の教育事情や人種、LGBTQ、里親、パーソナリティなどについて知り、考えるきっかけになりました。エンパシー…大事だと思いました。意識して生きていきたいです。
    英国の教育が全て素晴らしいわけではないでしょうけれども、著者のお子さんが様々な経験を通して、感じ考えているなぁと思いました。自分はどうだったかなぁ。

  • なるほどベストセラーになるだけのことはある。
    イギリスの現代文化や世相がわかって勉強になった。
    フラットな考え方の著者とそのご子息にとても好感を持てた。

  • 面白かった。
    最後を
     ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとグリーン
    で終わらせるのは、うまいなあ、、、と感心しました。

全197件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

ブレイディ みかこ:ライター、コラムニスト。1965年福岡市生まれ。音楽好きが高じて渡英、96年からブライトン在住。著書に『花の命はノー・フューチャー DELUXE EDITION』『ジンセイハ、オンガクデアル──LIFE IS MUSIC』『オンガクハ、セイジデアル──MUSIC IS POLITICS』(ちくま文庫)、『いまモリッシーを聴くということ』(Pヴァイン)、『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮文庫)、『他者の靴を履く』(文藝春秋)、『ヨーロッパ・コーリング・リターンズ』(岩波現代文庫)、『両手にトカレフ』(ポプラ社)、『リスペクト――R・E・S・P・E・C・T』(筑摩書房)など多数。

「2023年 『ワイルドサイドをほっつき歩け』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ブレイディみかこの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×