- Amazon.co.jp ・電子書籍 (228ページ)
感想・レビュー・書評
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■「怒り」を抑えているものは「怒り」をネガティブと捉える道徳的な価値判断や人間関係への配慮が主なもの。しかし、(図示するように)ネガティブな感情が出られなければポジティブな感情も出てこられない。つまり世に言う「ポジティブ思考」というものが長続きしないわけはここにある。
■そもそも感情をネガティブ/ポジティブに分ける二元論的判断に根源的な問題がある。
■コンピュータ的な性質を持つ「頭」はコンピュータが1/0の二進法を基礎にして作られているように二元論的判断を思考の基本要素としているのでどうしてもこのようなことが起こりやすい。
■「怒り」とは本来ネガティブというレッテルで差別されるべきものではない。不当なもの、理不尽なもの、愛のないもの、侵害的な者等に対して自然に「心」から生み出されてくる感情が「怒り」なのであり、人類の歴史を見ても革新的な試みは常に旧態依然としたものへの「怒り」がもとになって成し遂げられてきたのであって「怒り」とは閉塞的な状況を打開する創造的エネルギーの発露でもある。
巷でよく目にする「怒り」は自分勝手な欲望が満たされないために出てくる未熟なものや、古い怒りが溜め込まれ腐敗して初当たり的にぶちまけられるもの等ずいぶん質の悪い「怒り」も多いかもしれないが、その面だけを見て「怒り」自体をネガティブなものと捉えてしまうと「怒り」の持つ大切な意義を見落とし、その力を活かすことができなくなってしまう。
■「怒り」の扱いた不適切だったために「怒り」の悪循環に陥っている人がよくいる。「怒り」を抑える習慣によって溜め込まれて腐敗し、それが溜まり溜まって圧力が高まり、ひょんなきっかけから不適切な場面で暴発してしまう。それを本人は痛く後悔するが、それゆえ再び感情の蓋を強固に閉めてしまって、また「怒り」が充満しやすい状態を作ってしまう。これが悪循環の構造。
■食事と睡眠の時間をあまり正確に決めておくと一定の時間の後にそれが必要になる。やがては欲求がもはや必要から生じないで習慣から生じることになる。というより自然の欲求のほかに習慣による新しい欲求が生じてくる。そんなことにならないようにしなければいけない。子供につけさせてもいいただ一つの習慣はどんな習慣にもなじまないということだ。(「エミール」ルソー)
■「真に治る」とは元の自分に戻ることではなくモデルチェンジした新たな自分に生まれ直すことであるが、その生まれ直すプロセスとは、まさに「卵のふ化」に相当するような順序を経ること。
■「他人本位」から「自己本位」に脱し自身の神経衰弱を克服した夏目漱石の遺した熱いメッセージ
ああここに俺の進むべき道があった。ようやく掘り当てた。こういう感投詞を心の底から叫び出される時あなた方は初めて心を安んずることができるのでしょう。(中略)もし途中で霞か靄のために懊悩していられる方があるならば、どんな犠牲を払っても、ああここだという掘り当てるところまで行ったらよかろうと思うのです。(中略)だからもし私のような病気に罹った人が、もしこの中にあるならば、どうぞ勇猛にお進みにならんことを希望してやまないのです。もしそこまで行ければ、ここに俺の尻を落ち着ける場所があったのだという事実をご発見になって生涯の安心と自信を握ることができるようになると思うから申し上げるのです。 -
本書から読み取った内容は以下。
「うつ」は治すべきものではなく、現在の不適切な状況に対して「こころ」と「からだ」が抵抗する反応。
治して社会に適応することを目指すのではなく、「うつ」の状態を受け入れて自身に合った生活を目指すのが良い。 -
「うつ」は、身体に対する心のストライキである。 それをあるがままに受け入れて、しっかり「うつをやる」ということをしないと、ますますひどくなっていく。 心からすれば「異常」が、世の中では「正常」とされる。 泉谷氏の作品は、そんな世界に生きる私たちにとって、なくてはならない処方箋の様な考え方を示してくれる。