「うつ」の効用 生まれ直しの哲学 (幻冬舎新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 私はうつ病患者である。僕はこの本のお陰で根本的な回復に向かっている。だから、もしあなたが精神的に苦しんでいてこの感想を見てくれているなら、少しずつで良いから本書に目を通して欲しい。読んでいて辛くなったら閉じていいから、また自然と読みたくなってくる時まで待っていていいから、あなたのペースで自分の状況と照らし合わせながら読んでみてほしい。きっと何かが変わるはず。


    この本のハイライトは、『病はメッセージを持っている』ということだと思う。

    うつ病で苦しくてどうやってもキツい時「あれ?嫌なことしかないなんてあるのか?うつ病にもメリットがあるんじゃないか?」と僕は考えるようになった。だから上記の1文に全てを込めた。


    あとは皆さん読んでみてください。
    逆説的に聞こえるかもしれませんが、うつ病患者に限らず、やりたい事が見つからない全ての方にオススメの一冊です。

  • ■「怒り」を抑えているものは「怒り」をネガティブと捉える道徳的な価値判断や人間関係への配慮が主なもの。しかし、(図示するように)ネガティブな感情が出られなければポジティブな感情も出てこられない。つまり世に言う「ポジティブ思考」というものが長続きしないわけはここにある。
    ■そもそも感情をネガティブ/ポジティブに分ける二元論的判断に根源的な問題がある。
    ■コンピュータ的な性質を持つ「頭」はコンピュータが1/0の二進法を基礎にして作られているように二元論的判断を思考の基本要素としているのでどうしてもこのようなことが起こりやすい。
    ■「怒り」とは本来ネガティブというレッテルで差別されるべきものではない。不当なもの、理不尽なもの、愛のないもの、侵害的な者等に対して自然に「心」から生み出されてくる感情が「怒り」なのであり、人類の歴史を見ても革新的な試みは常に旧態依然としたものへの「怒り」がもとになって成し遂げられてきたのであって「怒り」とは閉塞的な状況を打開する創造的エネルギーの発露でもある。
     巷でよく目にする「怒り」は自分勝手な欲望が満たされないために出てくる未熟なものや、古い怒りが溜め込まれ腐敗して初当たり的にぶちまけられるもの等ずいぶん質の悪い「怒り」も多いかもしれないが、その面だけを見て「怒り」自体をネガティブなものと捉えてしまうと「怒り」の持つ大切な意義を見落とし、その力を活かすことができなくなってしまう。
    ■「怒り」の扱いた不適切だったために「怒り」の悪循環に陥っている人がよくいる。「怒り」を抑える習慣によって溜め込まれて腐敗し、それが溜まり溜まって圧力が高まり、ひょんなきっかけから不適切な場面で暴発してしまう。それを本人は痛く後悔するが、それゆえ再び感情の蓋を強固に閉めてしまって、また「怒り」が充満しやすい状態を作ってしまう。これが悪循環の構造。
    ■食事と睡眠の時間をあまり正確に決めておくと一定の時間の後にそれが必要になる。やがては欲求がもはや必要から生じないで習慣から生じることになる。というより自然の欲求のほかに習慣による新しい欲求が生じてくる。そんなことにならないようにしなければいけない。子供につけさせてもいいただ一つの習慣はどんな習慣にもなじまないということだ。(「エミール」ルソー)
    ■「真に治る」とは元の自分に戻ることではなくモデルチェンジした新たな自分に生まれ直すことであるが、その生まれ直すプロセスとは、まさに「卵のふ化」に相当するような順序を経ること。
    ■「他人本位」から「自己本位」に脱し自身の神経衰弱を克服した夏目漱石の遺した熱いメッセージ
     ああここに俺の進むべき道があった。ようやく掘り当てた。こういう感投詞を心の底から叫び出される時あなた方は初めて心を安んずることができるのでしょう。(中略)もし途中で霞か靄のために懊悩していられる方があるならば、どんな犠牲を払っても、ああここだという掘り当てるところまで行ったらよかろうと思うのです。(中略)だからもし私のような病気に罹った人が、もしこの中にあるならば、どうぞ勇猛にお進みにならんことを希望してやまないのです。もしそこまで行ければ、ここに俺の尻を落ち着ける場所があったのだという事実をご発見になって生涯の安心と自信を握ることができるようになると思うから申し上げるのです。

  • 本書から読み取った内容は以下。
    「うつ」は治すべきものではなく、現在の不適切な状況に対して「こころ」と「からだ」が抵抗する反応。
    治して社会に適応することを目指すのではなく、「うつ」の状態を受け入れて自身に合った生活を目指すのが良い。

  • 「うつ」は、身体に対する心のストライキである。 それをあるがままに受け入れて、しっかり「うつをやる」ということをしないと、ますますひどくなっていく。 心からすれば「異常」が、世の中では「正常」とされる。 泉谷氏の作品は、そんな世界に生きる私たちにとって、なくてはならない処方箋の様な考え方を示してくれる。

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著者プロフィール

泉谷 閑示(いずみや・かんじ)
精神科医、思想家、作曲家、演出家。
1962年秋田県生まれ。東北大学医学部卒業。パリ・エコールノルマル音楽院留学。同時にパリ日本人学校教育相談員を務めた。現在、精神療法を専門とする泉谷クリニック(東京/広尾)院長。
大学・企業・学会・地方自治体・カルチャーセンター等での講義、講演のほか、国内外のTV・ラジオやインターネットメディアにも多数出演。また、舞台演出や作曲家としての活動も行ない、CD「忘れられし歌 Ariettes Oubliées」(KING RECORDS)、横手市民歌等の作品がある。
著著としては、『「普通」がいいという病』『反教育論 ~猿の思考から超猿の思考へ』(講談社現代新書)、『あなたの人生が変わる対話術』(講談社+α文庫)、『仕事なんか生きがいにするな ~生きる意味を再び考える』『「うつ」の効用 ~生まれ直しの哲学』(幻冬舎新書)、『「私」を生きるための言葉 ~日本語と個人主義』(研究社)、『「心=身体」の声を聴く』(青灯社)、『思考力を磨くための音楽学』(yamaha music media)などがある。

「2022年 『なぜ生きる意味が感じられないのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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