サカナとヤクザ ~暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う~ (小学館文庫) [Kindle]
- 小学館 (2021年8月11日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (287ページ)
感想・レビュー・書評
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こんな世界があるのか
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アワビ、ナマコ、カニ、シラスウナギなど、高級海産物をめぐる密漁の背景に迫るノンフィクション。
海産物は本書にもあるように”計画通りの量を捕るつもりでも、全く捕れない時もあれば、捕れすぎる時もある”ため、いくら漁獲量等で規制してもそれを上回る量の成果があれば、それは闇流通して現金化され、それがいつの間にか正規の流通網に乗って、我々消費者の下へと届くシステムになっています。そしてその闇流通ルートには、少なからず反社会勢力が関わっており、著者は根気よく交渉を重ねて密漁の現場、密漁した海産物の取引現場などの様子を本書で描いています。
また、北海道におけるカニの密漁にはロシア(当時はソ連)の存在が大きく関わっていることが述べられています。ソ連の領海で違法操業する代わり、ソ連の国境警備隊に日本の情報を提供して安全操業を担保し、捕りまくったカニを日本の市場で売りさばく、と言ったソ連側との持ちつ持たれつの関係が、北海道のカニ密漁の温床となっていたようです。
明確な土地の境界の下で畑や山で採れる農産物とは異なり、海には明確な線は引かれていませんし、実際に漁をする海上では誰の目もありません。密漁の摘発にはその現場か、現物の取引現場を抑えるしかないという状況もあって、海産物をめぐる裏流通ルートは未だに大きな存在感を残しているようです。ウナギなどは特にそうですが、あれだけ稚魚のシラスウナギが枯渇しているというのに、土用の丑の日には価格は高くなったものの、結構な量のウナギが流通しているという事実には、本書で紹介されているようなカラクリがあるからですし、それを知らずに消費している消費者も、密漁ビジネスを間接的に支えているという見方もできるのかもしれません。