収益多様化の戦略―既存事業を変えるマネタイズの新しいロジック [Kindle]

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  • 東洋経済新報社
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  • 収益多様化の戦略 既存事業を変えるマネタイズの新しいロジック

    価値創造では利益が出ない世界へ 利益は積極的に作りに行く
    むしろ、どのように利益を獲得するかについて考え、そこから逆算してビジネスを再定義できる企業でなければ、これからの激動の時代に生き残ることはできない。価値創造では利益が出ない時代に突入した今、「利益の感度」を高めることは、早急に求められているのだ。

    ・企業は、「価値創造」と、「価値獲得」によって持続的な存在が可能になる。
    ・「価値創造」は、顧客に価値を提案することと、それを生み出す提供プロセスから成り立っている。
    ・「価値獲得」は、価値創造で生み出された価値から企業が利益を収穫する行為だ。
    ・価値創造とは付加価値を生み出す活動ともいえる。 付加価値を生み出せなくなった企業は、遅かれ早かれ破綻することになる。
    ・価値獲得とは、企業が事業活動から利益を得ることである。利益は、顧客に対して生み出した価値から一部を収穫して得られる。

    ■価値獲得の概念が変わる
    ・価値獲得の方法が「適正価格の設定と防衛」から、「多様な収益源」へと変わっているのだ。その理由は、デジタル企業がこれまで実現してきた利益の作り方が、それまでのものづくり企業やもの売り企業のそれとは、全く異なるからだ。「収益化」の意味が変化しているのだ。
    ・ものづくり企業の「収益化」は、プロダクトやサービスに適正な価格設定を行うことで収益に変え、利益を生み出すことを意味する。収益(売上)を確定し、同時に利益を獲得してきたため、収益化はそのまま利益に直結している。
    ・これに対して、デジタル企業の「収益化」は意味が異なる。デジタル企業の価値獲得は、プロダクトの適正な価格設定によって収益を獲得することにとどまっておらず、それ以外の様々なやり方で利益そのものを見出すことを意味している。
    ・こうした企業は、プロダクト販売で利益が出なくても、全く気にしない。それどころか、プロダクト販売では最初は利益が出ないものだと開き直り、別の箇所で利益を出す方法を積極的に探す。
    ・フリーミアム、定額制サブスクリプション、従量制サブスクリプション、ロングテール、マッチメイキング、メンバーシップなどが代表例だ。これらはプロダクト販売とは異なる価値獲得だ。顧客に対して想像した価値の一部から取り分をもらうという、従来のものづくり企業における価値獲得に、全くこだわっていないのだ。
    ・今のところ、この価値獲得が奏功し、デジタル企業は莫大な利益を生んでいる。そしてコロナ禍が DX を後押しし、この先も当面そうであることが予測されている為、企業価値(株式時価総額)の伸びは、まさに青天井だ。
    ・利益イノベーションには、自社の価値創造を尖らせる機能がある。もっと利益を生むには、現在の顧客以外に誰かが課金するのが良いのか、もはや顧客ではなくても良いのではないか、主要プロダクト以外で課金すれば良いのではないか、今の自社に課金できるものはないか、時間をかけて利益を得たいが、それには現在の体制では十分なのか、などと新しい角度から疑問を投げかけてくれる。地域イノベーションを駆使してビジネスモデルを構築すると、さらに自由な発想でビジネスが生み出せる。
    ・利益イノベーションは、進出できるビジネスの選択肢を大幅に増やすのだ。これまでボランティアでしか成り立たないと思っていた取り組みも、利益イノベーションを駆使することで、新たなビジネスを生み出すことになる。

    ■新たな価値獲得へ
    ・本章では、まず現時点で認識できる価値獲得を30のパターンに分類してそれぞれを説明する。
    1.プロダクト販売
    2.サービス業の物販
    ・サービス業の物販とはレジャーやアミューズメント、あるいは金融サービスなどのサービス業によるモノの販売を指す。
    3.プロダクトミックス
    4.非メインプロダクト
    5.マルチコンポーネント
    ・炭酸飲料が好例だ。スーパーマーケットはもちろん、飲食業にも提供されているし、自動販売機でも販売されている。しかし、利益率は異なり、飲食業への提供が最も高く、次いで自動販売機だ。スーパーでは安売りされることが多く、高い利益率は望めない。
    6.事前付帯(保険・ファイナンス)
    ・事前付帯は、プロダクト販売に購入時に増やすことのできる収益源を加えてさらに多くの利益を得る価値獲得である。
    ・ Apple が提供する AppleCare などは、その代表的な事例だ。追加料金を支払うことで、液晶割れをはじめとする破損への修理料金を軽減してくれる。
    7.事後付帯(メンテナンス)
    8.サービス化(コンサル化)
    9.非メインターゲット
    ・このやり方は日本において成功例が多く見られる。アニメ映画などはまさにこの好例だ。アニメ映画のメインターゲットは子供だ。しかし実は、利益のメインターゲットは付き添いでくる大人である。
    ・同じことは食べ放題のブッフェでも行われている。家族向けブッフェは基本的にメインターゲットを子供に設定してるところが多いが、利益の大半は同伴する大人がもたらしている。
    10.オークション
    11.ダイナミックプライシング
    12.定額制サブスクリプション
    13.前金制サブスクリプション
    ・通勤に利用する定期券や、テーマパークの年間パスポートもこの形態だ。
    14. 従量制サブスクリプション
    15.リピーター
    ・東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、まさにこの手法をとる。90%がリピート客といわれるが、実はこれは90%がリピートするということを前提に、様々な投資計画が組まれているのだ。
    16.ロングテール
    17.リース
    18.レーザーブレイド
    ・レーザーブレイドは、ジレット社の創業者であるキングジレットが自社のカミソリ本体(レーザー)と替刃(ブレイド)でこの価値獲得を採用したことからついた呼び名だ。
    19.メンバーシップ(会費)
    20.フリーミアム
    21.バイプロダクト(副産物)
    22.コンテンツ(IP)
    23.フィービジネス
    24.プライオリティ
    ・プライオリティは、何らかの理由でそのプロダクトを早く手に入れたい顧客や、優先的なサービスを得たい顧客に対して、通常のプロダクトとは別の収益源を設定し、利益を得る価値獲得だ。
    25.三社間市場
    ・インターネット時代を経て、 Google や Facebook がこの方式を取って莫大な利益を得ている。デジタルのプラットフォームをテコに、三社間市場の価値獲得で飛躍的に発展を遂げた。
    26.マッチメイキング
    ・マッチメイキングとは取引の参加者からの支払いを組み合わせて、利益を作り上げる価値獲得だ。かつては不動産業などで用いられてきた古いモデルだが、デジタル全盛期を迎えるプラットフォームが活用できるようになって、飛躍的に発展を遂げた。フリーマーケットのメルカリは、創業以来まさにこの方法でビジネスを拡大した。
    27.アンバサダー
    ・Adobe の creative cloud や、 Microsoft の Office 365などのアカデミックユーザーは、アンバサダーに該当する。
    ・アンバサダーの教職員は教育に必要なソフトウェアとしてこれを使い、多くの学生ユーザーを引き込む。アンバサダーにかなりの割引価格で提供しているのは、多くのユーザーを集客できることを見越しているからだ。しかも、学生ユーザーは卒業後も個人的にそのソフトウェアを使い続ければ、正規料金を支払う通常ユーザーへと育つ。
    28.スノッブプレミアム
    29.フランチャイズ
    30.データアクセス
    ・紀伊国屋書店は、書店で書籍を販売するだけでなく、 POS レジで管理される紀伊国屋書店全店の情報を「PubLine(パブライン)」として公開している。いわば自社の POS データを他社に公開した先駆けといえる存在だ。

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著者プロフィール

川上 昌直(カワカミ マサナオ)
兵庫県立大学国際商経学部教授
1974年大阪府生まれ。福島大学経済学部准教授などを経て、2012年兵庫県立大学経営学部教授、学部再編により現職。博士(経営学)。「現場で使えるビジネスモデル」を体系づけ、実際の企業で「臨床」までを行う実践派の経営学者。専門はビジネスモデル、マネタイズ。初の単独著書『ビジネスモデルのグランドデザイン』(中央経済社)は、経営コンサルティングの規範的研究であるとして、日本公認会計士協会・第41回学術賞(MCS賞)を受賞。ビジネスの全体像を俯瞰する「ナインセルメソッド」は、規模や業種を問わずさまざまな企業で新規事業立案に用いられ、自身もアドバイザーとして関与している。また、講演活動や各種メディアを通してビジネスの面白さを発信している。他の著書に、『「つながり」の創りかた』(東洋経済新報社)、『ビジネスモデル思考法』『マネタイズ戦略』(以上、ダイヤモンド社)、『儲ける仕組みをつくるフレームワークの教科書』『課金ポイントを変える利益モデルの方程式』(以上、かんき出版)などがある。

「2021年 『収益多様化の戦略』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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