生涯弁護人  事件ファイル1 村木厚子 小澤一郎 鈴木宗男 三浦和義・・・・・・ [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 刑事弁護士弘中惇一郎氏の事件記録。検察発表でリードされるマスコミ報道で圧倒的に有罪となる事件で、検察主張の矛盾点を暴き出し、無罪を勝ち取る。下手なミステリーを凌駕する興奮を感じる。1では、村木厚子、小沢一郎、鈴木宗男、三浦和義氏らの事件のほか、憲法訴訟として有名なマクリーン事件、またクロマイ・クロロキン事件などが収録されている。これらの事件が論評されることは多いが、本書は、被告人らの立場から権力に対する戦いの記録という本書の基本的性質を踏まえなければならないが、第一級の一次資料と思う。

  • 村木厚子氏から三浦和義氏まで、弁護士の業務について詳細に語られている点が秀逸。
    TVや映画の弁護士とは共通点もあるが、現実はもっと厳しい。
    筆者の反骨心が共感を呼ぶ。

  •  薬害エイズ事件の安部英、小澤一郎、三浦和義、カルロス・ゴーン……。世評で「悪人」とされている人たち。弘中弁護士は、この「悪人」と評価されてきた人たちを弁護してきた。正義感強く、弱者の味方であったはずなのに、なぜ「悪人」の弁護をしてきたのか。お金さえもらえば、誰でも弁護するのか!?
     日本の刑事裁判の有罪率は99.9%。刑事被告人は圧倒的に弱い存在。自白を強要され、否認を継続すると拘置は延長され、仮釈放もなかなか認められない。検察官は、供述調書を作文し、それに適合しない証拠はあったとしても隠蔽される。裁判官は、裁判の処理件数が評価される中で、検察のストーリーを受け入れることに抵抗がない。加えて、マスコミは、検察からリークされた情報を検証することなく報道、「悪人」のレッテルが貼られていく…。
     もともと弁護士は、被告のために存在するもの。上記の環境下だからこそ、弁護士の役割発揮が必要。弁護人のあるべき姿を追求する弘中弁護士はぶれていない。
     「コラム、エピソード・思い出」に、弘中弁護士の素の姿が見える。

  • ふむ

  • 刑事事件の有罪率が99.9%というのはドラマでもしきりに言われるが、本当に検察は有罪にすべく死に物狂いで闘ってくる姿がよくわかる。
    また有罪の事件も冤罪というのが多々あるんだろうなと思わざるを得ない。
    ワイドショーでしかないマスコミは事件を煽るだけでしかないケースが多い

  • Audibleを利用するようになって、「こんな本に向いているな」と感じる分野がいくつかあることに気づきました。
    その一つが、「文字数の多い本」。
    サイエンス系やノンフィクション系の本の中には、ページ数も、さらには1ページの文字数も多い本があり、これまで読了するのに時間がかかっていました。
    音声であれば隙間時間に聞くことができるので、間をあけず(それまでに読んだ内容を忘れずに)、聴き続けることができそうだ、と感じていました。
    そんな中、Audibleのラインナップに、こちらの本があげられていました。
    この本は書店で見かけて興味を持っていたのですが、知識の少ない分野であることと、ページ数の厚さに、読むのを躊躇していました。
    「このような本こそ音声で」と思い、聴いてみることにしました。

    著者は、50年に渡って第一線で活躍してきた弁護士。
    この本に掲載されている事案のいずれかだと思うのですが、記者会見の映像で拝見した記憶があります。

    その著者が、自らが担当した事案の中から主なものを抽出し、カテゴリーに分けて記述しています。
    当初は1冊の予定だったところ、分量が多くなり2冊に分けたとのことです。

    第1弾である本書は、下記のように4つのカテゴリーにわけられています。
    第一章 国策捜査との戦い
    第二章 政治の季節
    第三章 医療被害と向き合う
    第四章 「悪人」を弁護する

    いずれも興味深い内容だったのですが、特に印象に残ったのは、第一章と第四章でした。
    それぞれの章で扱われているのは、下記の事件です。
    第一章
    村木厚子事件
    小澤一郎事件
    鈴木宗男事件

    第四章
    三浦和義事件

    本書を読む前は、刑事事件の裁判とは、「発生した事件に対する証拠を洗い出し、”真実”を浮かび上がらせ、被告の量刑を決めるもの」だと、理解していました(漠然とですが)。

    しかし本書で著者は、「検察が、自組織に都合の良い筋書きを描き、その筋書きに沿って被疑者や関係者の証言を引き出し、被疑者が行なった“悪いこと”を作文する。それを、被告に認めさせる」ことが行われている、と主張しています。
    そして、特に特捜部が担当する案件では、検察組織や政治家の思惑により、捻じ曲げられた“筋書き”が作られているとのこと。
    法治国家と言われる日本で、そんなことがあるのか?と半信半疑で読み進めましたが、特に村木厚子事件での検察の“筋書き”のお粗末さ、無罪判決という結果を踏まえると、どうやら、こういうことが起こっているのだな、と(驚きつつ)受け入れました。
    また、「公平な立場で判決を下す」裁判官についても、人によって判断が逆になることがあること、そして三浦和義事件のように、マスコミ報道が裁判官の判断に影響を与えることがあることを知り、驚きました。

    もちろん、被告側弁護人という一方の当事者から書かれた内容だという前提で、読む必要があります。
    しかし、今まで馴染みのなかった法律の世界でおこっていることを知るという意味で、大変興味深い内容でした。

    第2弾も、続けて聴いてみたいと思います
    .

  • 憲法の基本判例として有名なマクリーン事件の代理人をされていたなんてビックリ。
    それは著者の弁護士として駆け出しの時期に扱った第2章政治の季節に出てくるが、当時の熱気を感じる描写に現在のこわもて風な姿とのギャップ?(私の先入観だったとわかる)が興味深い。
    薬害事件、国策捜査事件、公安事件と刑事訴訟を中心としているものの幅広い個性豊かな事件が多いこともよくわかった。
    悪人と言われる人に対する偏見や先入観がマスコミや検察のリーク時には政争によって形成されることの裏側がよく理解できる。

  • 小澤一郎、鈴木宗男、三浦和義など、世間を騒がせた人たちを担当した弁護人。仕事は緻密だし、情もある。優秀な方なのでしょうけれど、彼の立場はあくまでも原告側。検察側にもいろいろ言い分はあるでしょう。偏った考え方になってはいけないと思う。が、それにしても、ここに書かれていることが全て真実なら、検察や警察って、敵に回すとなんて恐ろしい組織なんでしょう。

  • 村木厚子氏の事件の中で、考えさせられる場面があった。担当した遠藤検事から「(起訴されても)執行猶予がつけば、たいした罪ではないじゃないですか」と言い放たれ、村木氏は「普通の市民にとって、犯罪者にされるかどうかは、ゼロか一〇〇かの大問題です。」と泣いて抗議したというくだりだ。國井検事という人からも「たいした罪ではない」と認めるよう促されたという。結果的には、村木氏は無罪を勝ち取り、検事側が証拠を捏造してすらいたという結末にも至った。検事たちにとっては、自分たちの成績に結びつく仕事の段取りだったのだろう。しかし、こういう行動は俺自身も含む市民の法律を守らなければならない、犯罪者になりたくない、という意識をおおきく傷つける。法なんてエライ人のためのものなんだ、犯罪者は単に役人に気に入られなかった人なんだ、なんてことになったら、犯罪の数は増えるだろうに。いや、まぁ村木氏自身も役人ではあったわけなんだけどさ。

     この本は弁護士側からの話だ。だから検事側からすれば、いや自分たちにも言い分はあるという面もあるかもしれない。ただ、力を持っている側が、あまりにもその力の強大さ、それによって人生を動かされる側への意識を欠いていると、恐ろしいことになるな。本書を読んで、社会の恐ろしさを教えられた気がした。

  • 弘中さんと言う弁護士をあまり知らなかったので、読んで驚いた。
    三浦和義 ロス疑惑から
    カルロスゴーンや厚労省の村木さんの事件まで、記憶にある大事件と呼ばれた事件に弁護として関わり、そして無罪を勝ち取っていく。
    その中で検察、特に特捜と呼ばれる組織は有罪の為に、自分のプライドの為に
    でっち上げてでも、無罪の対象者を逮捕してしまう恐ろしき組織と言う事も分かった。
    ノンフィクションの本作、
    読み応えありました。

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著者プロフィール

弁護士、法律事務所ヒロナカ代表。一九四五年、山口県生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験に合格。七〇年に弁護士登録。クロマイ・クロロキン事件などの薬害訴訟、医療過誤事件、痴漢冤罪事件など弱者に寄り添う弁護活動を続けてきた。三浦和義事件(ロス疑惑)、薬害エイズ事件、村木厚子(郵便不正事件)、小澤一郎事件(「陸山会」政治資金規正法違反事件)など、戦後の日本の刑事訴訟史に残る数々の著名事件では無罪を勝ち取った。

「2021年 『生涯弁護人  事件ファイル2 安部英(薬害エイズ) カルロス・ゴーン 野村沙知代・・・・・・』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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