星を掬う [Kindle]

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  • 中央公論新社
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感想・レビュー・書評

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  • 母を介護することが怖い。育てられる上でかけらた酷い言葉、酷いことを仕返しそうで。
    この本を読んで少しその気持ちがマシになった。

    どんなに酷い目に遭っても、結局は自分の人生をダメにしているのは自分自身なのか。そう思うことは前に進むために必要なのか。私もいつか、お母さん好きと言えるだろうか。
    主人公ほど悲惨な過去と現状ではないにしろ、私もたくさん母のせいで、と思うことがある。でも遠の昔に成人して、ここから先、母の呪縛に従う人生にするかしないかは、自分で選ぶことなんだなと、夫に言われて気づき、気づくと同時に適切な距離を保つことで、心の平穏を維持できるようになった。
    それでも。それでも、看取るとなると。
    色々割りきれない気持ちになったけど、読んで良かった。

  • 【思い出の海に沈んだ美しい記憶をそっと掬い集めよう】

    夫から激しいDVを受ける千鶴は、かつて自分を捨てた母親が住まう住居に身を寄せ、そこで出逢う人々と共に、気付きや変化を齎していく物語。

    母親に捨てられたせいで不幸になったのだと、世界を僻んでいた千鶴。
    夫に人生を支配されて、身も心も傷だらけだった。
    静かな絶望に身を窶す中、自分の母親が住む住居に転居出来る機会を手にする。
    そして、そこで出逢う人々と幸せの形を模索する。
    自分が下した人生の責任は自分だけの物。

    認知症を患った母親と共に零れ落ちる記憶を掬い集めていくのだ。

  • 一卵性母娘。他からはうらやましいと思われがちだが、重い鎖になる事もある。娘に自分の価値観を押し付けていないか、娘はいつも自分と考えが同じと思っていなかったか、自問自答。
    痴呆症。親も痴呆症になるかもしれないし、自分にも起こり得る事記憶は海の中に沈んで、浮かんでくる泡を掬って星のような輝きを放つ。たくさん泡が掬えたら失われた時間も取り戻せるかも。
    別れた母娘、血の繋がりのない母娘。それぞれの求め方や大好きを伝えるやり方があっていい。

  • 親に捨てられた娘。娘に捨てられた母。美しい故に虐げられ壁を設けた娘。関わりながら一つ家に暮らす。微妙なバランス、それでも安定した暮らしをてにする。読みやすい。最後の事件で過去を振り切る。事件の進展が早くすっと読んでしまうのがもったいない。

  • 主人公の千鶴が22年前の6歳時の夏休みの思い出をラジオ投稿したことから、ラジオを聴いた母・聖子をママと呼ぶ美少女恵真(エマ)、そして母や彩子との出会いと不思議な共同生活が始まる。更に彩子を通してその娘・美保が加わってくる。いずれの女性たちも心に深い傷を持って集まってきている。元夫のDV、離婚後のストーカー行為から避難した千鶴、6歳の娘の千鶴を捨てた母親・聖子、幼少期に両親を亡くし叔母に育てられたが、美貌の故に苦難を舐めさせられてきた恵真。夫・娘(美保)から捨てられた母親・彩子、17歳で妊娠し、男に逃げられた少女・美保、若年認知症、要介護状態が始まり、人生の危機の中にいる聖子。そして共通する嫁姑の悩み。女性が抱える家庭に関わる苦難が一気に凝縮したような中身の濃い小説だった。心根の美しい恵真、彩子も含め一人ひとりの過去の秘密が徐々に明らかになり、抱えてきた人生の艱苦が痛いほど分かり、彼女たちの世界に完全に浸った自分がいた。

  • 母は、その母から生まれ、そして私を生んだということ…
    度々、涙をこらえきれずに読み終えました。その最後は救いでした。

  • 『星を掬う』、そういう意味か。

    母に捨てられた娘、娘に捨てられた母、DV、若年性認知症、、、家族との関係がうまくいかない女性たちの過去が辛い。現在も辛い。。読むのツラい。。

    仕方なく選択した結果だとしても、相手にその理由を伝える必要あるかな。言っても分かってもらえない、じゃない。と思っていたけど
    『加害者が救われようとしちゃいけない。自分の勝手で詫びるなんて、もってのほか。被害者に求められてもいないのに許しを乞うのは、暴力でしかない』
    そうか私の考えは暴力的かもしれないな。


    母娘関係が修復出来てよかった。
    『星を掬う』、素敵な表現だと思った。

  • うん、良かった。
    ……ただ、「良かった」以外の感想が見つからない。
    感動的な話だなぁ、というボンヤリした話の感じがして、あまり人に勧めるポイントがない。

  • なかなか辛い話である。自己肯定感の低い女性が、周りに助けられながらすこしずつ成長していく。家族の在り方を改めて考えさせられた。

  • 母聖子に捨てられた少女千鶴の心の痛みが胸をつき、再会した母の態度がわからない、と思ったのだが、母には母の理由があった。
    それにしてもストーカーと化した元夫の弥一に辟易とした。共依存だったのかもしれないけど、離婚できたのが不思議なくらい。
    千鶴を生き別れた母のところへ連れて行った恵真、そこには母と同居している彩子さんもいて、
    夫の暴力から精神的なダメージを受けた事で外へ出掛けられなくなった千鶴を助けてくれた。
    しかし、母は認知症になっていたため、千鶴の事をどう思っていたのか、なぜ捨てたのか肝心の話が聞けない。
    強そうに見えた恵真にもつらい過去があり、娘を育てる事が出来なかった彩子さんは、突然現れた娘の美保ちゃんの言葉に困り果てる。
    偶然、同居することになった人々の思い出の話が合間に語られる。
    認知症になったからと言って、すべてを忘れてしまうわけではなく、突然、星を掬うように素敵な思い出が語られる事もある。
    聖子の覚悟は理想的だけど、なかなか現実には難しいかな、とも感じた。
    自分の人生は自分で選んで責任持たなくちゃ、と思いました。

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著者プロフィール

町田そのこ
一九八〇年生まれ。福岡県在住。
「カメルーンの青い魚」で、第15回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。二〇一七年に同作を含む『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビュー。他の著作に「コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―」シリーズ(新潮社)、『うつくしが丘の不幸の家』(東京創元社)などがある。本作で二〇二一年本屋大賞を受賞。
近著に『星を掬う』(中央公論新社)、『宙ごはん』 (小学館)、『あなたはここにいなくとも』(新潮社)。

「2023年 『52ヘルツのクジラたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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