彼女が最後に見たものは (小学館文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 前作に続き、三ツ矢、田所という二人の刑事が登場する。

    家族が居る。そこには幸せな時間があるはずだった。

    日常はありふれて、金もない、働いていれば時間もない。
    夫、妻、子供は愛し合っているように見えた。外からは、あるべき姿に見えたはずだ。

    そんなわけないけど。
    だけど家族の未来を想像してしまう。認めるわけにはいかない。自分の家庭だけはそんなはずはない。
    登場する家族もそう信じていたに違いない。

    殺人を犯した被害者と、夫を亡くした寂しい女。
    幸せに嫉妬する女に、見栄をはる女。
    罪への罪悪感、幸せの執着、憎悪の意識が重なり幾度も交錯する。

    ただ不幸と言うべきかどうか。死者の無念は晴れたとは思えないが、本人が救われたのなら、読者としてもありがたい。

    心に空いた穴を埋めようと誰もが必死だった。
    それは優しさを含んでいるようでもあり、身勝手な行いにもなり得るということを考えさせられた。

    家族を大切にしたいな。

  • ❇︎
    『あの日、君は何をした』続編と聞いて
    読むのを楽しみにしてました。

    順番に登場する人物が皆、少しずつ事件に絡み
    緻密な伏線が張られます。

    誰を主人公にして読むかは、読む人それぞれの
    視点や共感するポイントによって変わってくると
    感じました。

    前作の、あの日の〜もそうでしたが、
    決して爽快な読後感が残るのではない。

    でも、読むことによって人との関係や、
    親子や家族の関係を改めて考えるきっかけになり、
    問題を投げかけられて、悩むけれど、
    読んでよかったと感じる小説でした。


  • 嫌な話だったな、ではなく、知らなくてはならなかった大事な何かを手渡された感覚。

    解説にあったこの一行が、読了後の私の気持ちを全て語ってくれた。とにかくずっしり来る。こういう重い小説は好まないので、解説を先に知っていたら読んでいなかったかもしれない。だからこそ、良い出会いだったなぁと今になって思う。

    複雑な親子関係が描かれ、かつ読んでいて手強かったのが、事件に関係する全員が本作品の視点人物となったこと。ちょっと混乱。

    とはいえ、また新しい作家さんを知れてよかった!

  • ホームレスの女性はなぜ殺されなければならなかったのか。
    「ネイティブアメリカンの教えに、あなたが生まれたときはまわりの人は笑って、あなたは泣いていたでしょう。だから、あなたが死ぬときはあなたが笑って、まわりの人が泣く人生を送りなさい」

    明るいところを歩くだけが人生ではない。だとしたら、幸せな人生とはなんだろう。
    イヤミスで括れない不思議な読了感。

  • 『あの日君は何をした』からの続けて読みました。
    いろいろ人間関係が錯誤して、まとまった感じです。偶然って、、すごい。

  • 面白かった。なんだかわからないけど、まさきさんの小説はつい先が気になって読み進めてしまうなぁ。三ツ矢と田所のコンビもなかなか様になってきた気がするw
    犯人の動機にはうーんってかんじだけど、無理矢理感はなかったので物語として楽しめた。
    周りからどう思われたら幸せなのか。どういう最期を遂げれば幸せなのか。一巻よりは好きでした。

  • 「解説」は、じぶんが言葉にしていない思いを言語化してくれていて、小説を読むことの効能を感じさせるものだった。

    多くの人物が、自分本位で動きながらも、どこかではだれかを「庇う」。
    とは言え、だれかを想いながらも、それが純粋な「だいじだよ」としては伝わらず、屈折した形となる苦しみ。

    どうやったら、あなたをたいせつに思っています、が、伝わっていくのだろうか。


    今回のお話は、全体を通すと「悼む人」を想起させる雰囲気があった。

  • 満足!
    最後の最後まで犯人が分からなかった。
    この作者さん若い人かと思って読み進めていたけど調べてみてびっくりした。

  • 人が亡くなった時に泣いているのはその人の死を見ているから。生を見て笑えるようにする。
    優れた文学は世界観を変える。登場人物の奇妙なつながりが非常に面白く、人間観・死生観・幸福観が達観されている。

  • 前作が衝撃的に面白かったので、続けて続編も読了。今回は「貧困」をめぐっていくつかのエピソードが並列進行する。前作同様にそれぞれの視点は交わりそうで交わりきれず、複雑に展開していく。壮絶な過去を持つ三ツ矢刑事が相変わらずの良いキャラ。謎の解明が彼の視点に一任されているからこそ、読者としてはカオス状態の情報を安心して放置しておける。前作よりも予想できる展開ではあるが、その分、人生の価値や、自分が誰のためにどんな役割を課して生きていくかを考えさせられる。

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著者プロフィール

1965年東京都生まれ。北海道札幌市育ち。1994年『パーティしようよ』が第28回北海道新聞文学賞佳作に選ばれる。2007年「散る咲く巡る」で第41回北海道新聞文学賞(創作・評論部門)を受賞。
著書に『熊金家のひとり娘』『完璧な母親』『大人になれない』『いちばん悲しい』『ある女の証明』『祝福の子供』『あの日、君は何をした』『彼女が最後に見たものは』などがあり、近刊に『レッドクローバー』がある。

「2022年 『屑の結晶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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