ブラックボックス [Kindle]

著者 :
  • 講談社
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感想 : 64
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感想・レビュー・書評

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  • 30歳を目前にちゃんとしなければならないと思い悩みつつも日々を暮らすメッセンジャーの物語

    若い頃、ふとした瞬間に浮かび上がる恐怖心や不安感そして怒りをリアルに描かれている芥川賞受賞作品

    芥川賞受賞作品なだけあって読後に感じるものがしっかりとあって何かひとつ心に装備が増えたような気になった。

    さすがの芥川賞受賞作品で読後感が良好     ★★★★★
    将来のことを考えると怖くて寝れなくなる日とかあるけど頑張っていこうって思える
    ★★★★★
    本を読んだ感を最高に味わえる本
    ★★★★★

  • 文章より、映像が頭に浮かんでくるほど細かく描写され、佐久間の状況、感情がとても響きました。

    私には合わないのか、これが芥川賞なのか、
    細かい描写が多く、話が展開していかないと私は思ってしまい、途中で読むのを辞めてしまいました。。ごめんなさい。

    まだまだ文学失格な私なので、
    ちゃんと自分ができたころに続きを読みたいと思います。

  • 男の名前はサクマ、一言で言えば感性で生き粗暴に生きて来た。
     仕事は自転車のメッセンジャーである。直感が働き危険と隣り合わせな仕事ぶりである。退屈な日常を壊したい反動で危険を楽しんでる節もある。そんな直感が外れ仕事中にクラッシュした場面から始まる。
     前半は自由だか不規則で不安、後半が不自由だか規律があり安心もできる。主人公サクマの心中を表現している。
     この男には安定した日常も煩わしが不安定な日常も同じくなのである。言語化し成熟した社会は男とって生き難いのである。
     不安定と安定が両立した良く解らないブラックボックスの中身の矛盾がサクマを遠い場所に連れて行きたくなるのだろか。
     円佳の存在もブラックボックスに当て嵌まるかもしれない。もっと遠くに行って全てを忘れてたいのか、彼女との関係回復を少しだけ応援したい気持ちも湧いた。

  • ブラックと名がつくものには、何かしらの興味を持ってしまう。オールブラックス、ブラックホール、ブラックジョーク、ブラックレーベル、ブラックジャック、そしてブラックボックス。
    作品の中には勤務のブラックは出てくるが、コレには魅力は全く無い。

    他人だけでなく、自分の心の中にもブラックボックスがある。歳を重ねるにつれ、少しずつ自分の箱から本当の自分が顔を出してくるものだ。
    後半はサクマ自身が物理的なブラックボックスに入る。副題の「ずっと遠くへ行きたかった。今でも行きたいと思っている。」ということばには深い意味があった。社会との関わり辛さを描写しつつ、最後はパンドラの箱と同じく、開いた果てにあるものがある。

  • 著者は、元自衛隊員で、現在東京都の区役所に勤めている。自衛隊員になりたいと思ったのは、中学生の頃から、高校生になって司馬遼太郎の『坂の上の雲』の秋山兄弟に憧れたからという。『ブラックボックス 』の主人公は、自転車便のメッセンジャーの仕事をしているサクマ。下層社会の人間で、不安定な仕事をしていることに苛立っている。昭和の言葉でいえば『閉塞状況』にいる青年。自転車のことに対しては、豊富な知識を持っている。部品名もよく知っている。
    サクマは雨の時にメッセンジャーとして自転車に乗っていた。白いベンツが、並走し、突然曲がることでこけるシーンから始まる。サクマは非正規職員、そして業務委託を受ける個人事業者。社会的な保障はなく、将来が思い描けぬ青年。白いベンツの運転しているやつに、「うるせい、ゴン」と殴っていやりたいほど。やり場のない怒り。ブラックボックス には、そのやり場のない怒りが蓄積されていく。とにかく、我慢している状態にある。
    同居している彼女が、妊娠した。そのことで、さらに苛立ちが増していく。怒りの温度が体内に蓄積され、温度が上昇する。そんな時に、税務署の職員が、税金を納めていないと住んでいる家に来る。なぜか、サクマの置かれた状況を税務署員にせせら笑われるように見えたことで、サクマは沸点を超え、税務署員を殴りつける。そこに駆けつけた警官も殴りつけることで、前半は終わる。ふーむ。不器用にしか生きられないサクマ。
    後半は、刑務所でのサクマ。もはや、キレやすさはいたるところで爆発する。前半のサクマと後半のサクマは人が違ったみたいでもある。リアルとバーチャルみたいな人格変化。そして、文体も微妙に変化する。一つの作品で、二人のサクマがいるような。しかし、サクマの中にはどうしょうもない怒りが存在する。一体誰にぶつける怒りなのか。閉じられた刑務所の中でも、怒り続ける。
    コロナ禍の「閉塞状況」での青年サクマの将来が見通せぬ苛立ちと怒りを描写する。怒りは、爆発するが、どうしたらいいのかわからないという悩みを抱えたまま、物語は終わる。

  • 人生の「定型」と「非定型」。「定型」という安心の中に突如訪れる狂気。なんとなく著者の心情も共感できる。

  • ⚫︎受け取ったメッセージ
    人は自由と制度を同時に求める。
    自由には責任が、制度には不自由が伴う。

    どんなに社会が規則に縛られていようとも
    未来は不確実である。
    だからこそ、生きていく意味がある。

    他人の気持ちはブラックボックス。
    自分の気持ちさえブラックボックスである。


    ⚫︎あらすじ
    メッセンジャーとして自転車で日々疾走するサクマ。
    「ちゃんとした大人にならなければ」という気持ちはありつつも、できない。
    同棲中の円佳が妊娠。税務署の職員、警察官に暴力を振るい逮捕、刑務所へ。
    刑務所での人間関係があり、経験があった。
    そして、変化を求めながらも、制度も求めていたことに気づく。

    ⚫︎感想
    「刑務所は制度だ。制度だけが未来を確たるものとして示すことができる。自分は遠くに行きたいと願いながら、一方で制度を希求していた。」
    つまり、自由になりたいと思いながら、制度も求めていたことに気づく。安部公房の「砂の女」を思い出した。毎日は、同じにように見えるが、決して同じ日はないことに気づくことができ、少しずつだが変化していくのではないかというほのかな希望で終わるところが良かった。ほのかな救いの予感があるストーリーで好みだった。救いようのない話は現実世界にたくさんあるので、私は本にそれを求めない。
    行き切った「怒り」とメッセンジャーとしての疾走感、サクマ以外にも刑務所なのでいろんな人物がでてくるが、助けてくれる人もまた同じくらいいて、不自然に感じなかったのも良い。サクマの「怒り」がブラックボックスなので、サクマの中で、言葉にならない様々な不安、焦り、イライラ、そういったものが「ブラックボックス」を通過して「怒り」として顕になる。

  • ネタバレを含みますので、注意してお読みください。
    今期の芥川賞受賞作、くらいしか予備知識がないまま読みました。
    なので、まず、その構成に驚きました。
    前半と後半でがらりと場面が変わります。
    前半は主人公サクマがメッセンジャーとして活動する場面、後半はそのサクマが刑務所で刑に服している場面。
    そのつながりは、必ずしも明確ではありません。
    ですから、読者は、メッセンジャーよろしく疾走していると、急に崖から突き落とされるような感覚に陥ります。
    その効果は絶大だと言えましょう。
    メッセンジャーとして活動する場面から、既にサクマの人生は八方塞がりでした。
    ほとんど絶望しているようにすら見受けられます。
    そこから急に刑務所の中に行くわけです。
    救いはありません。
    ただ、この「救いのなさ」が、この作品の「救い」なのだと感じました。
    甘い感傷は一切排し、ただひたすら描写を重ねることで、救いのなさの向こうにある得体のしれないものに触れています。
    見事です。
    構成でもう一つ驚いたのは、場面が変わるのが前後半の1回限りだということ。
    恐らく200枚余りの中編と思われますが、章立てはありません。
    つまり、書き手には、「息つく暇」がないわけです。
    場面転換は、読者にとってもそうですが、書き手にとってもリフレッシュできる良い機会です。
    どんなにベテランでも、中編以上の長いものを書いていると、執筆に倦む時がほぼ必ず来るようです。
    そういう時、場面転換は気分転換にもなるのです。
    場面転換しなくても、1行空けるだけでもいい。
    しかし、この作品には、それがありません。
    とてつもないスタミナ、持久力です。
    作者は元自衛官。
    厳しい訓練で養われたものでしょうか。
    いや、大変に結構な作品でございました。

  • いきなりムショにワープするのは戸惑った反面、インパクトが強く(まるでローラーゲームのように)ホイップされて最後まで一気に読んでしまった。主人公の抱いてる怒り、暴力、諦めを感じ、もやもやとした蟠りが胸の中で息づいている。なので中上健次が読みたくなった。中上健次を引き寄せよったわ。

  • 一気呵成に読んで欲しかったのだろうか。2部構成みたいで本の厚さ半分くらいまで息継ぎができないような文体に思えて。読みづらかった。
    前半は自転車乗りの心情含めた描写だけど、だから何?ってのが続く。後半は犯罪者に。意外な展開に一瞬思えたけどこの人物なら…と納得。けど内容は忘れた。
    途中途中でふだん見ない使わない言葉を使ってるのがこの人物に似合わない気がしてこの作者に反感を覚えてしまった「以て」「堆く」「卒塔婆」「惹起」まぁ自分がおバカって事なんだろう

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著者プロフィール

1990年、大阪府生まれ。神奈川大学卒業。元自衛官。現在、地方公務員。2016年、「市街戦」で第121回文學界新人賞を受賞。他の著書に『戦場のレビヤタン』『臆病な都市』『小隊』がある。

「2022年 『ブラックボックス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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