いま中国人は中国をこう見る (日経プレミアシリーズ) [Kindle]

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  • 中国社会の変化と中国人の本音を、日本から見たものと違う視点で知ることができる本です。
    中国は大きく発展し、その政治姿勢などが問題視されることも多いとはいえ、今や世界で無視することのできない存在となっています。
    そんな中で、その実情を客観的に分析し、どう付き合っていくべきかを冷静に判断していく必要性も高まっていると感じます。
    中国社会の変化と中国人の本音が、数多くのインタビューをもとに解説されています。
    情報との向き合い方など、実は日本と大きく変わらないものもあることを知ることもできます。
    これからの世界情勢を考える上で重要な役割を担う中国の、リアルな姿を知る上で参考となる1冊ではないでしょうか。

    【特に覚えておきたいと感じた内容の覚え書き】

    「中国でも、外国語の報道にアクセスできる人は、日本人並かそれ以上に世界情勢を知っているが、直接アクセスできない、アクセスの仕方がわからない人たちがまだ大勢いることも事実。SNSなどが検閲されていることは知っている。ただ、どちらにしろ、知りたいこと以外は不要な情報であるようだ。」
    「中国人が得られる情報の量は格段に増えているが、質という点では問題がある。とくに自媒体の場合、確かな情報は少なく、人目を引こうとする話題ばかりが先行する傾向がある。ただ、それは日本でも似たような問題が起きていると思われる。」
    「中国ではまだ政策の当局者が洗練されていないので、外国と付き合う時にさまざまな問題(リスク)が起こる。政策実行の段階では常に調整が必要だが、その過程で上から何か言われて、突然内容を変更する、ひっくり返すことがよく起こり、そのたびに現場は大混乱し、最後まで何が起こるかわからない。」
    →中国の情報統制に関するものですが、その内容をよく見ると、「知りたいこと以外は不要な情報(なので統制されていても関係ない)」「情報の量は増えたが質に問題がある」「調整の中で突然内容をひっくり返す」というもの。これは、日本でも実は似たようなことが起こっているのではと感じます。情報を広く正しく見れるよう洗練されているかが、これからの時代、生き残れるかどうか必要なのではないでしょうか。

    【もう少し詳しい内容の覚え書き】

    ○超厳格なコロナ対策
    ・これまで中国は政治体制のおかげでコロナを封じ込めていたのだ、と宣伝してきたため、抑え込めないと、今度は自分たちに批判の矛先が向いてしまう。引くに引けない状況。国民も、政府には否応なく従わざるを得ない。コロナとの「共存」を認めることは、政治、政策の失敗を認めることになるので、ウィズコロナに転換できない。「ほかに封じ込める方法がない」と思っている人も多いのも事実で、強硬なゼロコロナへの支持は驚くほど多い。
    ・現政権の厳しすぎるやり方に疑問の声はある。市民生活にも深刻な影響を与えている。賛成する人も、自分事でないからということもあるようだ。
    ・中国ではパブリック(公)はあっても、人々にまだそこでのルールをきちんと守ろうという意識が希薄。意識がないと、そこでの個々人の利益が侵害されるので、政府は強制的に縛るしかない。もっと強制的にコロナ対策をやってほしいと願っているように見えることもある。日本の対策は「ゆるい」と見えるようだ。

    ○激変する社会と常識
    ・SNSで政治に関する意見を堂々と言えなくても、日常生活で経済的な豊かさを実感する機会が増えていることに満足している人は多い。重苦しい空気になっているという声もある反面。現政権を支持する声はかなり大きい。コロナの感染拡大を防いだ功績が国民の間で広く共有されている。
    ・インフラ整備や電子決済サービスなど、地域感の格差は急速に埋まりつつある。コロナによって海外に行けなくなったことがきっかけで、国内の各地域に関心を持つ人が増えている。

    ○「共同富裕」と格差への不満
    ・戸籍による差別の解消や農村の教育レベル向上による格差是正は間違いなく正しいが、学校のレベル均一方針は中国内でも意見が分かれる。
    ・政府による各種規制は、国民からある程度支持されるとわかっているからやっている。政府は世論を気にする。選挙で政権を選択するという政治制度が実質的に存在しない中国では、かえって世論の支持を得られなければ、政府の正当性を国民から認められない。
    ・政府がこの巨大な国のマイナス面を何とかしてプラスに変えようと努力していることを感じ取っているので、大きな反発が起きない。この国を変えていこうというメッセージは国民も共有している。それがわかっているから、国民はついていく。

    ○ナショナリズムが高まる必然
    ・これまでの反日デモなどと違い、自分たちの国のすばらしさが世界からなかなか認められないことに不満を募らせる人が増えている。コロナ禍をきっかけに、それは一層強まったようだ。
    ・政府の動きには、死活問題なので敏感。一方で、ただ目の前の仕事が忙しく、それだけで精一杯という人が多いようだ。日常の不満や文句があっても、今のところ日々の生活がよくなっていることを実感している。中国には問題が多く、何があってもおかしくないが、多くの人は自分に関係ない問題と考える。

    ○Z世代が日本語を学ぶ理由
    ・入試の外国語選択で日本語を選択する高校生が急増している。漢字が多くとっつきやすいので、必要語彙数も少ないので、英語より比較的簡単に高得点が取れる。日本語のアニメやドラマ、音楽、ゲームなどの影響も非常に大きい。
    ・一方で、製品は中国製を選ぶ人が増えている。日本製は選択肢の1つでしかない。かつては中国人も品質が悪いと思っていたが、今の若者には、まったく逆のイメージを持っている。

    ○情報統制・中国リスクに何を思う
    ・中国でも、外国語の報道にアクセスできる人は、日本人並かそれ以上に世界情勢を知っているが、直接アクセスできない、アクセスの仕方がわからない人たちがまだ大勢いることも事実。SNSなどが検閲されていることは知っている。ただ、どちらにしろ、知りたいこと以外は不要な情報であるようだ。
    ・中国人が得られる情報の量は格段に増えているが、質という点では問題がある。とくに自媒体の場合、確かな情報は少なく、人目を引こうとする話題ばかりが先行する傾向がある。ただ、それは日本でも似たような問題が起きていると思われる。
    ・中国ではまだ政策の当局者が洗練されていないので、外国と付き合う時にさまざまな問題(リスク)が起こる。政策実行の段階では常に調整が必要だが、その過程で上から何か言われて、突然内容を変更する、ひっくり返すことがよく起こり、そのたびに現場は大混乱し、最後まで何が起こるかわからない。

    ○覇権国家よりも家族の幸福
    ・コロナ禍で自由に往来できなくなったことで、中国の中の「日本」の存在感が熟成されているのかもしれない。経済的な影響は小さくなっても、文化レベルや生活の質という面では、まだ日本の存在感は落ちていない。無印やニトリなどが上海で人気、それらの店を利用することは「日常生活」の一部になっている。次は日本に行って、よいものを実際に見聞きしたいという願望も強くなっている。

  • 20220415-

  • (2022/103)中国人に対するインタビューなどから描き出す中国人自身の中国に対する見方。若者の間でのナショナリズムの強化とか、厳し過ぎるように見える施策に対する意外なほどの支持とか。新型コロナウィルスで中国自身も間違いなく変化が加速している。僕が話をする中国人は勿論偏っている。中国から出たことない人と話す機会はないし、ニュースは香港系の英字媒体中心だし。住んでもいない外国人が「リアル」を知ることは難しいが、一つに偏らないようには気を配りたい。中国の重要性は間違いないから。

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著者プロフィール

ジャーナリスト。
1967年、山梨県生まれ。北京大学、香港中文大学に留学。主な著書に『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』『なぜ中国人は財布を持たないのか』『日本の「中国人」社会』『中国人は見ている。』(以上、日経プレミアシリーズ)、『「爆買い」後、彼らはどこに向かうのか』(プレジデント社)、『中国人のお金の使い道』(PHP研究所)などがある。

「2023年 『中国人が日本を買う理由』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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