人類の起源 古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」 (中公新書) [Kindle]

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  • 古人骨のDNAが分析できるようになって、ホモ・サピエンスがどうやって誕生したかとか、アフリカから出てきてどんなふうに世界に広まったか、その過程でどんなふうに別れ、入り混じっていったのか。進化は直線的でなく、ある地域に先に入った集団も別の集団に置き換えられたりして、人類単純じゃねぇなぁと思わせる。副作用として、交配して子を残せる=同一種ならば、ホモ・サピエンスの遺伝子にネアンデルタールのDNA混じってる段階で同一種ってことになるやん? 「種」でそれなら、「人種」って何よ? という具合に、ものすごくヒトというものを俯瞰的に見られるようになる本だった。

  • 日本人の起源の話とか人種の話がたいへん勉強になりました。

  • 技術や統計の難しい話はほどほどに、わかりやすい文章でできれば日本列島の状況に触れつつお願いしたい…と思った私にぴったりの本だった。著者は国立科学博物館館長。

  • なぜか昔からこういう地球の歴史、人類の歴史が好き。

    NHKの番組など見ていた。

    最新の技術で人骨を解析、DNA、ゲノム、、要するに人間の設計図をひとつひとつ

    統計的に分析することで、人類がどこから来て、どのように集団を形成していったかを探る、という、素敵な旅。

    我々ホモ・サピエンスがネアンデルタール人と交配していた、というのを知ったのは

    最近の話。私だけでなく、世の中がそうなのかな。

    滅んだのではなく、我々の中にネアンデルタール人は生きている。

    ただ、コミュニケーション能力の差で、単独では生き残れなかった。

    あるいはホモ・サピエンスが繁殖能力で勝っていたか。

    ・・・そういえば人類の起源がアフリカ、というのもなかなか最初は

    ぴんと来なかった。

    なぜアフリカなのか。なぜそこで人類が生まれたのか。

    一説ではその地域は放射線量がやたら多いとか、、、突然変異説か。

    (この本には書いてない)

    アフリカを出た彼らがいかに日本、アメリカに到達したか。

    アイヌ、琉球、弥生民族、、、興味は尽きない。



    しかしこの新書、これで終わりではない。さすが国立科学博物館館長。

    人種、民族なんて、ちっぽけな区別をしなさんなと。

    ホモ・サピエンスとネアンデルタール人を分けるのも意味ないかも、と。

    イスラエルとガザの紛争なんてその最たるもの。

    まったく無意味な殺し合い。負の連鎖。

    ヒトはそうやって争って、殺し合って今日に至っているのは事実だが、

    これだけ科学が進み、結局一緒だ、って言ってるのに、なんで争うか。

    まあ、わが日本の政治家たちも、やれ移民はだめとか、女系天皇はダメとか、

    杉田なんとかとか、乏しい知識でものを言ってる輩ばかりになっている。

    反知性主義極まれりだ。



    しかし、急に寒くなっても、欧米系の方々は半そででビールを飲む、、、

    やはり人種が違う、と思ってしまう自分もいるのは確かだが、、



    でも何にしても、人種民族ではなく、ひとりひとりの中身を見てから、知ってから、

    それでも憎むなら戦えばいいのだ。そんなことにはならないはずだから。

  • 古代ゲノム解析に基づく人類の進化史が分かりやすく解説されている。
    今までの私の認識では、人類の進化がただ羅列しているだけでそれぞれが意味を持っていなかった。
    しかし、本書を読むことで、それぞれが混ざり合いながら今の人類につながっていることを強く感じた。

  • 最新の「古代ゲノム解析(次世代シークエンサ)」で解った人類の系統は、20世紀の人類進化や起源の学説を相当変更するものだったことを解説してくれる書。
    最新研究の成果を分かりやすく解説してくれるのは良いが、「人類はみな兄弟、平等」「人類に差異は無い」という結論有りきが度々出てくる。フィルタリングによる自然科学への侵食は無いだろうか。

    広義には人類は700万年前にチンパンジーの属から分離して出現(サヘラントロプス・チャデンシス)者を起源とする。それの系統の可能性のあり、ホモ属系統の起源と考えられるのがアウストラロピテクス。完全直立二足歩行をした種を人類を起源とするなら200万年前(ホモ属)。ホモ属で脳を進化させたホモ・サピエンス(現世人類)を人類の起源とするなら出現は20万年前。第一章

    「コンタミネーション」DNA検査のさい混入した異物を鑑定してしまうこと28

    ホモ属のネアンデルタール人は40~50万年前にホモ・サピエンスと分離して、後に絶滅したと考えられていたが、2010年DNA分析でサハラ以南のアフリカ人を除くヨーロッパ人とアジア人の現世人類には2.5%のネアンデルタール人DNAが混入していることが発見された。しかしヨーロッパ人と東アジア人を比べるとなぜか東アジア人のほうが若干ネアンデルタールDNAが多い32

    ホモ・サピエンスはアフリカで誕生し、6万年前に出アフリカして世界に広がったとされてきた。しかし2010年代の発見によって「ホモ・サピエンスはユーラシア大陸で人類から分岐した」可能性が出てきた45

    ホモ・サピエンスともネアンデルタール人とも違うデニソア人。彼らもホモ・サピエンスと交雑していた。パプアニューギニア、チベット、フィリピンではデニソアDNAを持つ人がいる49

    新型コロナ感染症を重症化させる遺伝子はネアンデルタール人から受け継いだ。この遺伝子ほバングラデシュなど南アジア人が多く保有し、アフリカ系と東アジアにはほとんど存在しない64

    1万年前の最古のイギリス人の肌は暗褐色だったことが判明している。そして白人の特徴「明るい肌」「青い目」「金髪」はそれぞれ独立した別の遺伝要素が組合わさって出来た。しかも「明るい肌」はヨーロッパの気候に合わせて進化した結果ではなく、中東あたりで起きた「突然変異による明るい肌遺伝子」が起源だと考えられている154

    インドは遺伝的にも言語的にも異なる4つの集団で構成されている。これはあまり交わらず現代にも繋がっている得意な現象で、その理由はカースト制度による婚姻制限が理由170

    縄文人のDNAで特に多いM7aとN9bの2つは、日本列島以外では存在しない。そしてMは西日本と琉球、Nは東日本と北海道で、それぞれ石器の形状の違いとしても分けられ、2集団の存在が考えられる203

    今までは渡来人は弥生時代に来たとされたが、DNA分析から、古墳時代まで多くの渡来人がやって来たことが証明された220

    現在、自然科学の学術論文では「人種」という言葉を使用しない。使われているものがあればエセ科学の可能性大。256

    現代の教科書では出アフリカのあとすぐに世界四大文明の話になり、その間の人類の歴史ははしょられる。南米にいたっては16世紀の大航海時代からの歴史で、通史として語られていない267

  • DNAをサンプリングして、人類の起源を解き明かす。

    内容自体は新しいものではない(といってもここ四半世紀の結果であるが)が、わかりやすく整理されている。

    教養としてぜひ読んでおきたい。

  • 2023年新書大賞2位。
    近年のDNA解読技術革新により、古人骨のDNA解析が進み、今までわかっていなかった出アフリカ以降の人類の旅が解明されつつある。全人類のゲノムは99.9%共通、日本人は縄文~弥生時代に沖縄と北海道の両方から新しいゲノムを持った人類が流入した二重構造....。これからも新しい事実がどんどん出てくるのでしょう。

    第一章 人類の登場
         ーホモサピエンス前史
    第二章 私たちの「隠れた祖先」
         ーネアンデルタール人とデニソワ人 
    第三章 「人類揺籃の地」アフリカ
         ー初期サピエンス集団の」の形成と拡散
    第4章 ヨーロッパへの進出
         ーユーラシア基層集団の東西分岐
    第5章 アジア集団の成立
         ー極東への「グレート・ジャーニー」
    第6章 日本列島集団の起源
         ー本土・琉球列島・北海道
    第7章 「新大陸」アメリカへ
         ー人類最後の旅

  • 私たち人類ということで、ホモサピエンスがどこで発生し、どのように世界に広がっていったのかを、ゲノム解析等の最新の技術から分かっていること、まだ分かっていないことを書かれています。古代の遺跡等から発見される人骨などの遺物から導き出されるものは、最近まではあまり多くなかったのですが、ここ最近の技術の進歩により多くのことが分かってきています。人類の歩みについて、考古学や歴史学などからすでに言われていることの証明になることもあれば、通説を翻すような内容のものも見出されます。アフリカから広がったホモサピエンスの遺伝子的な変異や交雑のドラマが、現代にまで続いているというダイナミズムを大いに感じることができる内容となっています。そして日本人の起源や、そこから分かる人種の意味、人類は皆同じであることということの科学的な証明が感動を伴って知ることが出来ました。

  • 子供のころ習った人類の起源、歴史は発展的な一直線で、猿人→原人→旧人→新人と進化したと習った気がするが、DNA分析で化石を分類すると、もっと複雑で、DNAの異なる集団が交雑したり取り込んだり、絶滅したりして世界を異同意していく多様性ある世界だった。日本でも同じ人類が縄文時代から弥生時代に進んだのではなく、縄文人と弥生人がいて、本土では弥生人が縄文人を取り込んでいった。こんなことがデータとして証明できるなんていい時代だし、今までの定説が覆えせる科学の力に感謝したい。一番面白かったのは、集団の遺伝子差より、集団内の個人の遺伝子差の方が大きいということ。つい人種や民族でレッテルを張りがちだけど、結局個人差だよね、というのは正しいのだ。

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著者プロフィール

篠田謙一

1955年生まれ.京都大学理学部卒業.博士(医学).佐賀医科大学助教授を経て,現在,国立科学博物館館長.専門は分子人類学.
著書に『DNAで語る日本人起源論』『江戸の骨は語る――甦った宣教師シドッチのDNA』(岩波書店),『新版 日本人になった祖先たち――DNAから解明するその多元的構造』(NHK出版),編著に『化石とゲノムで探る人類の起源と拡散』(日経サイエンス)などがある.

「2022年 『人類の起源』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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