キリンを作った男――マーケティングの天才・前田仁の生涯 [Kindle]

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  • プレジデント社
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感想・レビュー・書評

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  • ハートランドから始まり、一番搾り、淡麗、氷結などキリンが変わっていくところに関与し続けた、前田仁さんの話。過去の栄光、シェアに慢心し、ラガー一辺倒、飲み屋や昔の酒屋一辺倒だったキリンの苦境を変えたかがわかる。けっこう、キリンの悪い面を書いているがここへキリン広報が協力したという後書きがまた興味深い。

  • 30年以上ビール業界を取材してきた永井隆氏による評伝です。創業者や社長の評伝は多いと思いますが、中間管理職の人物に焦点を当てたものは珍しい印象です。
    「ヒット商品で会社は変わらない。組織内の本質的な問題を隠してしまうから、上手くいかないのは、企業統治の仕方にあるのではなく、『新しい価値や感動を、お客様に提供できなくなっていること』にある」というのは日本企業は意識したい言葉だなと思いました。

  • ビール業界については知らないが、キリンとアサヒが首位を争っているという話はなんとなく知っている。ビールを飲む大人になってからは、どっちかというとアサヒの方が優勢な印象かな。でもスーパードライが出る以前は、キリンが絶対的な一位だったそうな。

     本書は前田仁という人物の評伝なのかもしれないけど、それ以上にビール業界というひとつの業界の歴史として、すごく面白かった。どんな会社にも光と影があり、会社と強く引っ張った人であっても、別の面からみたら負の遺産を残すこともある。企業間の争いというのは、その差し引きで何がどう転ぶかはまったくわからないものなんだね。
     
     前田仁という人物は、稀代のマーケターとして多くのヒット商品を生み出したが、左遷の憂き目にあったり、最終的にはトップには就かなかったということもあるようだ。それはひとつには会社内でのいろんな綱引きがあったのだろう。前の社長が強く推していても、不祥事の余波で上が替わったりすると、それ以上進めなくなることもある。どこの世界でもそういうことはあり、経済規模が替わったからと言って、人間関係とか組織の動きのエッセンスみたいなものは変わらないんだろうな、なんてことを思った。

  • 心震えた

  • こういう人と働いてみたい。

  • ドライ戦争は大学生の時。スーパードライは本当に衝撃的なビールだったなあ。ハートランドは、ちょっとおしゃれなビールで、当時はあまり飲まなかっけど、こういう背景を知ると飲みたくなる。早速買ってきた。

  • 全てお客様を中心に考え、行動できるか。
    自分を客観視してお客様の為、と言う軸をぶらさず取り組めるか。

  • ビールが最も熱かった時代に、変化を拒む巨大企業の中で、権謀術数や子会社への左遷などの逆境を乗り越え、信念を貫き続けたヒットメーカー初の評伝。

    ●エスノグラフィー
    マーケティングリサーチの中で、定性調査としての中核的な手段だ。日本では馴染みが薄いが、欧米企業では広く使われている。伝統的な調査手法とは異なり、調査する対象の内部に入りインタビューしたり、詳しく観察したりすることで、いわゆるインサイト(消費行動などの核心)を見いだしていく。電通とエスノグラフィーの共同研究を行う藤田結子・明大商学部准教授は「先行事例のない革新的な製品開発にエスノグラフィーは役立つ反面、成功ノウハウはみな企業秘密になる」と指摘する。

     スバルの場合、14年10月発売の新型レガシィ(5代目)において、発売までの5年間にわたり、商品企画部門の幹部らが米国のユーザー宅を訪問し、スバル車がどう使われているのかを探って歩いた。米国の一般家庭では複数のクルマをもつことは多く、スバルの社員ということを伏せて調査会社の担当者と一緒に行動。それぞれのライフスタイルの中に潜む、いくつものインサイトを突き詰めていった。

     スバル車は、水平対向エンジン、乗用AWD(全輪駆動)、さらには運転支援システム「アイサイト」といった独自技術を持つ。だが、こうした技術を先行させるのではなく、インサイトに応じた打ち出し方を追求していった。大きな変更点として、新型レガシィはボディサイズを一回り大きくさせたのだ。日本の自動車評論家たちはみな批判したが、米市場では大ヒットしていく。

     富士重工の吉永泰之社長は、「スバルはこうきたか、とお客様の心を打つ商品を作り続けなければならない。ただし、これは実は難しい。技術屋はお客様の心よりも、技術へのこだわりを優先しがちだから」と、指摘する。

  • 物事の本質がどこにあるのか、をわかっているけどそれを実践するのは難しいなと感じました。
    本書の主人公の前田さんは、本質をわかり、かつ実行できた方であり、こういう人のようにありたいと思いました。

  • 【昔話では食えない】(文中より引用)

    業界No.1の座にあぐらをかき、忍び寄る凋落の足音に気づけなかったキリン。そんな古い体質の大企業を、「一番搾り」や「淡麗」といったヒット商品で救っていった男・前田仁。なぜ彼はキリンから疎まれ、それでいて自分の仕事を前向きに全うすることができたのか......。下戸の自分をしたたかに酔わせてくれたサラリーマン・ストーリーです。著者は、ビール産業に関しての著作も多い永井隆。

    池井戸潤作品を読んでいるかのような錯覚を覚えました☆5つ

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著者プロフィール

1958年群馬県生まれ。明治大学経営学部卒。東京タイムス記者を経て、フリージャーナリスト。著書には『究極にうまいクラフトビールをつくる』(新潮社)、『ビール15年戦争』『ビール最終戦争』『サントリー対キリン』『人事と出世の方程式』(日本経済新聞出版)『国産エコ技術の突破力!』(技術評論社)『敗れざるサラリーマンたち』(講談社)『一身上の都合』(SBクリエイティブ)『現場力』(PHP研究所)など多数。

「2023年 『日本のビールは世界一うまい!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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