宙ごはん [Kindle]

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  • 小学館
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感想・レビュー・書評

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  • 複雑にこじれた家族関係をテーマとした、ジーンと心に染みる連作短編。佐伯恭弘万歳!

    主人公は川瀬宙。物語は、宙がクールで自己中な生みの親、花野(かのさん)と同居することになったところから始まる。歳を重ねるとともに成長していく宙と花野。様々な出来事を通じて、悲惨な過去へのこだわりや親族間のわだかまりも徐々にとかれていく。

    物語に一貫しているのは、報われないまま花野に片想いし続ける恭弘(やっちゃん)の大きな包容力と絶品料理の数々。ちょっと現実離れしたキャラだけど、こんな人が実際にいたらいいのになあ。ご冥福をお祈りします。

    親子や兄弟姉妹など、親族関係なかなか難しいな。むしろ血の繋がらない他人同士の方が上手くいくことも多いしな。

    ちなみに、第一話「ふわふわパンケーキのイチゴジャム添え」では小学1年生の宙と、第二話「かつおとこんぶが香るほこほこにゅうめん」では小学6年生の宙と、第三話「あなたのための、きのこのとろとろポタージュ」では中学3年生の宙と、 第四話「思い出とぱらぱらレタス卵チャーハン」では高校2年生の宙と、第五話「ふわふわパンケーキは、永遠に心をめぐる」では高校3年生の宙と出会える。

    本書から、心に響いたセリフを幾つか。

    「ママはあたしの望んでいる、期待している『母親』じゃない。でも、あたしの『家族』としてきちんと義務を果たしてくれてる。あたしはきちんとした生活を送れているし、これから先の日々に不安もない。少しの嫌とか失望は、あたしが勝手に『母親』に期待していただけのこと。ママは『家族』として、きちんと責任を負ってくれてるんだ」(by マリーちゃん)

    「君の『ごめんなさい』は君が赦してほしくてやってることだよ。相手の気持ちをまったく考えてない。こんなに謝ってるんだから、いいでしょう? 赦してくれたっていいでしょう? って相手に赦しを強制してるんだ。それは、暴力でしかないんだよ」(by かのさん)

    「わたしも、誰かをやさしく包む料理を作るひとになりたい。料理で誰かをしあわせにしたいの」(by 宙)

  • ハートウォーミングなタイトルに油断してた…。
    ハートウォーミングの他に『重厚で』『リアルで』『複雑』な家族の話だった。
    家族のような人も含めての家族の話。
    一気読み。

    ずっと気になってたこの著者は、伝えたい芯の部分を言葉というかストーリーに包み込んで伝えてくれる著者だった。

    お母さんとママをもつ宙(そら)ちゃんが、たくさんの大人の事情に振り回されながらも美味しいお料理に力をもらい、大人になってゆくまでのお話。

    人はダメなとこがあってもいい。
    そんなことみんな知ってる。
    でも、とことんダメならそこからどう生きるの?
    ダメな人の周りの人はどうしたらいいの??
    憤ったり、泣いたりして読みながら、そんな時のとっかかりをおしえてもらった。

    我が子じゃなくても、不安や迷いや絶望にいる子供に出会った時に私は支えてあげられるかな。
    なにかできる自分でいたいな。


  • なんかもう開始10分くらいから既にほろほろ泣けるし終盤はずーっとポツポツと枕を濡らしながら読む手が止まらず、気づいたら夜中3時…
    育児中の身なのに…睡眠確保しなきゃなのに…(町田そのこ先生は何一つ悪くありません、自己責任です)

    もうとにかく家族とは、母親とは、父親とは何だろうと考えさせられる。
    みんなみんな、沢山のものを抱えて生きている。
    見たくなくてずっと蓋をしているもの、知らんふりをしてきた感情を、これでもかと真正面から突き付けられる感じがして、町田そのこ先生の本はいつも胸の奥深いところにグサッと刺さる。そして抜けない。

    昨今の酷いニュースを見ても、やはり家庭環境の影響が大きいのではないか、家庭事情を完全に無視して裁くということは抜本的解決になっているんだろうか、とかんがえる。


    色んな形があって、イージーだろうがハードだろうが、本人の意思でいくらでも良い方向に変われる、とは思いたいけれど。

    宗教の如く身に染み込み切っている固定観念を
    新たなものに塗り替える覚悟と恐怖に立ち向かえる人は一体どれくらいいるんだろう。

    とにかく宙がめちゃくちゃ大人で、然るべき時にバシッと物事が言えて。
    やっちゃんの人柄も涙が出るほど暖かくて。
    こんな筋が一本通ってる人に、私もなれたらなぁ。
    宙のように、相手を思いやる、想像できる人はとても魅力的だ。



    『野放図に枝葉広げて気持ち良く咲くのは楽に見えるかもしれないけどさ、大きくなってくるとなかなか大変なんだよ。枝が重くて折れちゃうこともあるし、栄養が足りなくなって枯れちゃうかもしれない。自分を守るために自分自身を剪定しなきゃいけないときって、あんのよ。でもそれは自分の芯、幹を守るためだから、幹は絶対失われないのよ。だから、大丈夫よ』



    「苦しみは一枚一枚剝がしていくしかないと言った。では喪った哀しみは、塗り重なった思い出を一枚一枚整理していくのだろうか。すべてをきちんと収めたころにようやく、哀しみを乗り越えられる、そんな気がする」

  • 町田そのこさんの「宙ごはん」読了。

    町田そのこさんの本を読むのはこれが初めて。
    KindleUnlimitedのラインナップにあった、優しい色の優しげなイラストの書籍。きっと、ほんわかした物語なんだろうなぁ〜、と思って読み始めました。

    いい物語でした。

    でも、最初に予想したのとは違って、かなりハードモードの人生を歩んできた人たちの物語で、いくつもの死や別れがあって、何度も泣かされながら読み終わりました。

    実母の妹に育てられていた6歳の女の子「宙(そら)」が、突然、実母と一緒に住むことになるところから始まる物語。実母の名前は花野(かの)。有名なイラストレーター。子供を育てる、ということを全然知らない人。

    花野と宙が、少しずつ母娘になっていく物語。

    最初は、「違国日記」みたいだなー、と読んでいました。突然、親の役割をしなくちゃならなくなったフリーランスの女性と、突然、今までの母親とは違う人を母親として暮らさなくてはならなくなった女の子。そして、世話を焼きのお兄さん。
    基本的には似たような人間関係の物語なのだけど、「宙ごはん」の方がいろいろとハードな状況が盛りだくさんで、なかなかの読み応えでした。

    そして、タイトルに「ごはん」という言葉があるように、物語の中の重要な部分に、美味しそうな料理が登場する。パンケーキだったり、ダシが香るにゅうめんだったり、オムライスだったり、シチューだったり。香りがしてきそうな記述に癒されました。

    重たいけど読後感がいい。
    町田そのこさんの本をもう少し読んでみようと思いました。

  • 幼くして両親に捨てられたカノさん(お母さん)は愛された経験がない辛い子供時代を送っていた。そのため子どもを愛する術も知らない母親だった。カノさんの子供である宙はカノさんの父親が違う妹である風海(ママ)に育てられた。そんな複雑な家庭環境の中、宙が料理や食事(特にカノさんの幼なじみであるやっちゃんとの)を通して育っていく姿が描かれている。

    作品中に宙の同級生であるマリーの言葉として「家族とは夫婦とその血縁関係にある者を中心として構成される集団」「『母親』も『子ども』も、ひとつの条件のもとの集まりの中での名称に過ぎない」「新しい『家族』には、『母親』も『子ども』もない、助け合って生きていく集団のことを指す」という話が出てくる。『母親』であること、
    『子ども』であることで何かを期待したり、期待されたりする関係から解き放たれた家族関係を指すものと思われ、ある意味で目から鱗が落ちる思いがした。

    カノさんと宙の親子も様々な人との出会い、料理との出会いをとおして、素晴らしい『家族』に育っていく。カノさんや宙自らや、出会う人びとが抱えてきた苦しみや悲しみが数多く描かれており、読者によっては受け入れられない方もいるのではと思ってしまったが、お涙頂戴ものではなく人生の生き方のひとつを指し示してくれた作品だと読み終えて感じている。

  • 今年1番に良かった物語(と言ってもまだ今年が始まって1ヶ月半だけども)。

    理不尽な事であろうとも、自分で考え乗り越えなくてはいけないことがある。そして乗り越える時は誰かの助けが必要であることも。
    涙を流し、自分の心が浄化されていく感じ。

  • 図書館で8ヶ月待ちでした。とても素敵なお話。やっちゃんが格好良すぎる。宙ちゃんの「ビストロ サエキ」が繁盛しますように。

  • 食事を主軸に据えたハートフルストーリーかなと予想して読み始めたけど、そんな単純なものでも無かった。とにかく色んな気持ちにさせられたし、色々考えさせられたし、揺さぶられました。

    成長の糧としての「出会い」と「別れ」。この本では後者が際立っていたように思います。関係が薄まったり、途切れたりというところの描写が結構思い切ってました。(やっちゃんは勿論のこと、鉄太がああもアッサリ笑)けどそのおかげでドンドン話が進んでいくし、主人公は勿論のこと、読者もしっかり考えさせられたと思う。

    最後はキチンと前向きに〆で、そこも良かった。読後の余韻が凄く残りました。

  • 町田その子さんの話しは、自分には非現実に感じられるのだが、この話しは現実世界と感じた。
    ご飯がでてくるからかなぁ。

  • 【人は不完全と言うくせにどうして家族の役割には完璧を求めるの】

    祖父母、父母、子供…
    複雑な家族関係をあっためる
    美味しいメニューの全5話

    私の母はおかしいんじゃないか

    そう思っていた私は
    娘としての私のおかしさは
    考えてもみなかった

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著者プロフィール

町田そのこ
一九八〇年生まれ。福岡県在住。
「カメルーンの青い魚」で、第15回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。二〇一七年に同作を含む『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビュー。他の著作に「コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―」シリーズ(新潮社)、『うつくしが丘の不幸の家』(東京創元社)などがある。本作で二〇二一年本屋大賞を受賞。
近著に『星を掬う』(中央公論新社)、『宙ごはん』 (小学館)、『あなたはここにいなくとも』(新潮社)。

「2023年 『52ヘルツのクジラたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

町田そのこの作品

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