世界史の構造的理解 現代の「見えない皇帝」と日本の武器 [Kindle]

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  • PHP研究所
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感想・レビュー・書評

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  • Kindle Unlimitedが割引セールの時に契約するんですが、解約をつい忘れてしまい…解約を申し込みつつ、残り少ない期間で読める本を頑張って読んでまして、本著もその1冊です。。

    「組織には属さず仲間と研究生活を送っている」という謎の物理学者、長沼氏による1冊。
    「世界史」とタイトルにあるんですが、歴史好きが読む1冊…には全くとどまらず、「歴史を踏まえ、今後の世界の行く末を理解したい人」が読む本だなと。歴史の記述ではなく著者の考察が本著の本体です。
    本著の記載や問題提起に全く賛同するかと言うと、正直本当にそうなの?と思う所もありますが、とにかく独自性の高い論理展開、知識量の豊富さ+目の付け所などブッ飛んでます。
    現代的常識に囚われている自分としては度肝を抜かれすぎちゃって…という感じですが、このような問題提起が日本発でなされるコト自体が素晴らしいと思います。

    例えば、本著で主張されている
    ・今の世界は、実は縮退している
    ・世界の問題は、気候変動なんかじゃない
    なんてのは、いきなり言われると「陰謀論者か?」と身構えてしまうのですが、説明の筋は綺麗に通っていて、否応なく肯かされます。
    (気候変動は何とかなる、ってのは、例えば酷暑・台風等で農業が成り立たなくなったら…?と思うと微妙な気もしましたが)

    今後、人類が「長期的願望」ではなく「短期的願望」を優先していくと、その先に待っているのはディストピアだ、というのが本著の核となる主張だと理解したのですが、これはどうなるか。
    個人的には、人間が短期的願望を優先してしまい、個人の精神力では止められない、というのは、↓の本で言う集団的幻想であってほしい。。
    https://booklog.jp/users/skylark0311/archives/1/4140819391
    そして、短期的願望ばかりを優先しないための「唯一の手段は宗教に頼ること」とありますが、"物語"の力はバカにできないように思います。(まぁ似たようなモンですかね)

    最終章の「知的制海権」の話も非常に刺激的で、もはやIFRSやらISSB基準やらで企業・ビジネスの領域もブルーウォーター・ネービーの問題と化しているようにも思いましたが、「予備戦力」を意識しながら戦っていきたいところです。
    ちなみに、最後の「理数系武士団には時間的な活動限界というものがあって(中略)長い眠りにつく」ってくだり、なんかもうゴジラかと(笑

    手に余る1冊ですが、同時に読み込んで身に付けたい1冊です。著者の他の作品も読んでみようかと思います。

  • 一般意識と全体意識。
    政体変更のサイクルを民主主義で止めたアメリカ。
    米国は民主主義が最後。資本主義で、一般意志と全体意思を一体化し、ひとりひとりの欲望を合わせると社会全体の欲望になると考え、長期を大切にする文化をなくした。

    三体問題は基本的に解けないが、一定のパターンにハマれば解ける。科学の解けるパターンを前提したときを社会に当てはめ、医療や経済へ当てはめたのがアメリカ。
    そして、とにかく唯一無二の絶対、ドグマを持つ。ここがアメリカの盲点になりそう。

    日本はちょい違う。ここで勝負するしかない。明治維新から第二次世界大戦前くらいまで日本が強かった理由、また戦後急速に復興した理由もここに。


    第二次世界大戦の時間スケールを10倍にすると、冷戦のタイムスケールに合う。そして、いまの大きな冷戦、ソフトでの戦いの進捗と重なる。
    いまドイツを倒すソ連の戦いが始まった頃。

  •  大きな厄災が起こると、潜在的に社会の底にくすぶっていた問題が一気に表面化される。日本で起こった厄災として大震災が挙げられる。阪神・淡路大震災では、経済格差がそれほど大きくない地域であったため、早期に復興できたが、東北大震災では中々復興できないでいる。これは経済格差による問題が表面化されたと言える。世界的に見れば、コロナ禍で経済格差による問題が顕在化した。
     社会全体のことを考えると、長期的願望つまり人間の理想を追求して潜在的な問題点を解決できると良いのだが、そうもいかない。現在の資本主義社会では、人間の短期的願望である欲望に支配されるのだ。人よりも金持ちになりたい、偉くなりたいといったことだ。世界一の経済大国であるアメリカでは、短期的願望を集めて繋げれば長期的願望になると考えられている。
     しかし、筆者はそれではダメだと言う。じゃあどうすれば良いのか? それは、短期的願望が長期的願望を駆逐することを最大限に阻止できるようなシステムを作ることらしい。でも、どうやったらそんなシステムを作れるのだろう?
     日本は、IT化、環境問題などで、世界から大きく遅れている。でも、明治維新のときもそうだったように、下級武士が集結し、力を合わせることで、諸外国からの脅威に適切に対処することができた。現在の知的世界では、下級武士に相当するのが、各理系分野のエキスパートつまり本書で言うところの理数系武士団なのだそうだ。この人たちが力を合わせることで、知的制海権である現代社会を掌握することが出来るのだとか。どうも話が飛躍し過ぎてついていけない部分もありますが、なんだか希望が湧いてくる話でもある。

  • Kindle Unlimitedでおすすめされたので読んでみる

    なんでだろう?
    飲み屋で隣に座った人の話を聞いている気持ちになってしまった

    著者の著作を読むのは本書が初めてなので、議論の前提を理解できてないからかもしれない
    unlimitedにあるので、著者の別の本を読んでみてからまた読み返してみたら、読後感が変わるかも

  • コラプサーが起こり得る要因について、自分でも少し調べようと思った

  • 「構造的理解」シリーズ大ファンなのだけど、今回まさかの世界史で、手に取らざるを得なかった。このシリーズが指し示してくれるのは、ロジカルシンキングのZero to Oneとも呼ぶべき、構造的な思考のお作法。その知的態度はどんな領域にも適用できるんだと教えてくれる。

  • 世界史を理系的な観点で考察しているとても興味深い書。陸軍、海軍、空軍が過去の大戦から地政学的な観点で、紐解く。第二次世界大戦でアメリカの台頭は、空軍を主体にした戦力で世界をリードしていたからとの解説に興味を覚えた。
    また、幕末期を支えた坂本龍馬を始めとする武士団は、理数系武士団と定義され、その思考パターンや性格までも歴史に影響したとするところが面白い。

  • 世界史を物理学や科学的な視点で読み解いた本。

    物理学研究者ならではの理数系的視点で世界史を読み解く本書は、歴史の見方に新たな風を吹きこんでいます。

  • 個別の事件に突っ込みすぎず、横断的で独自の解釈が興味深い。
    たた、個別の事件は『ん?そうだっけ?』と思うところがある。また、独自の解釈は多少我田引水的な気がする。
    それでも、その強引さを補って余りある視野の高さ。歴史しょにはこうあって欲しい。

  • 「人類文明の安楽死」とも言える「コラプサー化」問題が環境問題より上位にくるほどの難問であるとする視点を初めて本書で認識した。

    コラプサー化問題とは、映画「マトリクス」で人間がカプセルの中で夢を見ている描写がわかりやすい。人を心地良い真綿のようなバーチャル世界に閉じ込めてしまうことを指す。実際にネトゲ廃人が中国や韓国の若者層で社会問題になっている。長沼さんはこの問題について20年に出版した「現代経済学の直感的方法」から言及されているようだ。この問題はトクヴィルが「アメリカのデモクラシー(第二部)」でも指摘しているという。

    この他、ルソーの「一般意志」と「全体意志」がそれぞれ「長期的願望」と「短期的願望」に当たるとし、後者が大衆から支持が得られやすく、ポピュリズムや資本主義を加速化させているという。

    この傾向が「世界の画一化」と「文明の安楽死」に向かわせて不可逆なほど文明を縮退させてしまうという。この縮退現象はエネルギー保存の法則(エントロピー増大則)と同じで、なすがままでは社会が破壊され衰退の一途を辿ることになる。

    ではいったい、我々はどうすればよいのか?
    縮退を押し留める指導原理が宗教であることもあれば(イスラム教は歴史の中で何度も縮退を抑制することに成功している)、下級エリート層(上から君主、上位エリート、下級エリート、民衆の三番目)が力を持つ社会も活力に満ちているとのこと。日本で言えば、明治時代。同じ生きるなら、そのような社会を選択したいものだ。

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著者プロフィール

パスファインダー物理学チーム代表

「2022年 『世界史の構造的理解』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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