とんこつQ&A [Kindle]

著者 :
  • 講談社
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感想・レビュー・書評

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  • netgalleyにて読了

    今村夏子さんの作品を読みたいと思い続けていたが、やはりYA作品とはジャンルが違うので、手に取れずにいた。

    この一見明るく健全なように見えて、空恐ろしくどこかズレている感覚。
    「おかしいのは、そっちですよね!」と声を大にして言いたいのに、もしかしてこっちがおかしいのか?とどこか躊躇してしまうような感覚。
    短い話の中でそのズレがどんどん大きくなるけれど、ここがおかしいよ、とポイントをつけないような、足下が不安定になる感じ。

    上手く表現できないけれど、あり得ないだろうと思いつつ、どこかでこんなことが日常的に起こっているのかもしれない、と思わせるその巧みさがたまらい。

  • 寝る前に読んでいたら、おもしろくて、というか、相変わらずの変さがクセになって眠られなくなった。

    「とんこつQ&A」「嘘の道」「良夫婦」「冷たい大根の煮物」
    の4編を収録。

    さあ今回はどこから世界が歪んでいくだろうかと注意深く観察しながら読んだが、けっきょくまたわからずじまい。

    市井の人たちを描いているようで、どの短編にも度が過ぎる人たちが登場する。
    店を切り盛りする父と小学生の息子。
    自分がついた小さな嘘のせいで破滅的な生活を送るはめになる姉と弟。
    涼しい顔でささやかな罪を隠蔽する夫婦。
    そしてよく家に料理を作りにきてくれる同僚の女性。

    けれどもこういう人たちってどこかにいる気がする。もしかすると現実のほうが度が過ぎていて、それを本書が小説としてうまく掬い取っている、と言ったほうがいいのかもしれない。

    とくに表題作「とんこつQ&A」はもうタイトルが気になりすぎて仕方がなくものすごいスピードで読んだが、内容もタイトルに負けないくらいにぶっ飛んでいて最高だった。
    そして最後はぞっとさせられた。
    4編それぞれ、作品のはらむ狂気に多かれ少なかれぞっとさせられた。

  • 『これぞ、、今村ワールド全開。』

    4話からなる短編集。かわいらしいタイトルと装丁からは想像できないギャップがあり、一言でいうと不気味。今村先生の芥川賞受賞作「むらさきのスカートの女」を彷彿とさせる、心のざわめきを味わえる作品である。

    タイトル作である「とんこつQ&A」は、中華料理屋"とんこつ"の客対応時に使うお手製マニュアルのこと。お客さんが入店すると「いらっしゃいませ」と言う、といった内容。この一文だけ読むと至ってまともである。でも読み進めると、まともではないことがお分かりいただけるだろう。そしてこのマニュアル。なぜかバージョンアップされて大阪弁版もある。なんだこれ(笑)

    普通とかまともは自分の基準でしかないので論じるつもりはない。だが、こんなに登場人物全員に共感できない作品はなかなかない。突拍子もないキャラクターは常識人との対比で描かれて、その異常さを際立たせることが多いと思うが、この作品はまともな人がほとんど出てこない。表向きは善人でも、根幹はなにかがおかしいのだ…。

    以前「むらさきのスカートの女」を読んだときには、"無味のガムを噛み続けているような~"という感想を書かせてもらった。今作はそのガムを捨てずにとっておいて、また噛み始めるような感覚。つまり不気味さがバージョンアップしているのだ。そんな展開をさも当たり前のように繰り広げるので、読者側の"まとも"の感覚が狂わされる。この感覚を味わいたい方はぜひ本書を手に取ってみてほしい。

  • 初めての今村夏子作品。

    4編の短編集。
    表題作以外は「こういうことあるかもなあ」と思わせる展開。
    絶妙なリアリティと不気味さのブレンド具合で不思議な読後感。
    いずれも印象深い作品だが、『良夫婦』が一番面白かった。

    独特の世界観で好き嫌いがあるかも。

  • この4編の小説はどれも「善意」がテーマになっている。
    普段の生活の中で誰かと出会う。そしてその関わりの中での善意には打算が含まれていていることや、自己満足が含まれていることもある。このことが思いがけない方向に主人公を向かわせ戸惑わさせることになる。しかしそんな思いも、いつしか普段の生活の中に紛れてしまう。

    どの短編も味わい深く記憶に残る。

  • 「とんこつQ&A」がすきだった。
    迷子になりそうな読後感。

  • 表題作のほかに3作。全て人間関係に不器用な人たちの話。優しくホンワカしたストーリーの中に人間の悲しさやズルさも加味されている。人間って弱くて強い。なんか好き。

  • どうやってこんな話を思いつくのだろう。よくできていて、巧いと思う。でもそれだけという感じもする。絶賛するようなタイプの作品ではないとは思った。

  • ちょっとブラックな短編集。
    そうか、そうか、つまりきみはそんなやつなんだな。という感じの人々が出てくる。

  • 不気味さがありながら惹き込まれる内容。
    今村夏子さんはらしい作品です。

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著者プロフィール

1980年広島県生まれ。2010年『あたらしい娘』で「太宰治賞」を受賞。『こちらあみ子』と改題し、同作と新作中短編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で、11年に「三島由紀夫賞」受賞する。17年『あひる』で「河合隼雄物語賞」、『星の子』で「野間文芸新人賞」、19年『むらさきのスカートの女』で「芥川賞」を受賞する。

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