「みんな違ってみんないい」のか? ──相対主義と普遍主義の問題 (ちくまプリマー新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • ちょっと刺激的なタイトルで、昨今の「多様性」「個性」を重要視する風潮に物申すということ? と思ったら全然違った。
    著者の命題は「正しいとはどういうことか」。しごく易しい言葉で著者の考えが語られる。といっても、難しいことを無理やり易しく話している(はしょってる)わけではない。なるほどそういう考え方があるのか面白いじゃん、と読み進め、これってひょっとして哲学って言えるんじゃね? と思って著者プロフィールを見たら、著者は哲学者だった。最近読んだ中では一番腑に落ちた哲学?の本だった。

    「正しさ」はひとそれぞれ、というわけにはいかず、話し合いと交渉の中で熟成される、という著者の考えはよくわかる。その一方で、たとえばウクライナの戦争は話し合いで正しさに行き着くことができるのだろうか、と思う。いま起きていることは正しくないとしかぼくには思えない。その一方で、ロシアはそれが正しいと思っており、相当数のロシア国民もそれを支持している。この違いはどこから出てくるのだろう? 著者の方法論はウクライナ戦争に援用できるのだろうか?

  • 正しさや意味を考え続けると避けがたい相対主義に対して、生き方、考え方を述べている。

    自身の考えに非常に近いと感じた。私的に目新しい内容があったわけではないが、自身の考えと同じように考えている人がいることを心強く感じた。

    著者の他書を読みたいと思った。

    ・「正しさ」は集団の合意(間主観性)である
    ・人間の特性(生理的/ハードウェア的なもの)に依存して社会も世界認識もある。ただし、あくまで傾向。
    ・人それぞれといっても、人の特性は、色の識別などの研究から、そんなには違わないことが分かっている。
    ・実在や科学理論は、人間の目的にそって有用性できまっていく(プラグマティズムのダーウィズム的真理観)

    本書のメッセージは、「人それぞれという言葉は思考停止につながる、民主主義を機能する社会の分断を解決するためにも、あきらめずにお互いを理解、合意するための対話をつづけよう。」だとおもう。

  • 相対主義と普遍主義の問題を問う

    担任をしていたとき、生徒に運営を任せるとすぐ多数決に走ることに違和感を感じていた。そしてときに、そうしないように言っていた。理由は少数意見が蔑ろにされてしまうからである。この本を読んだ今は、その時よりも詳細にその理由を説明できる気がする。

    本書は、何が正しいかどうかはみんなで作っていくもの、合意形成していくものだと主張している。人それぞれだから、多様性だからと言えば、全て解決するわけではない。我々は異なるようで、共有している特徴はある。どこまで共有できるかをお互い心を開いて話し合わないと生産的な結論には至らない。

  • 考え方やり方のわかりやすい手引書だった。

  • 相対主義と普遍主義を止揚する、そんな内容だと思いました。

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著者プロフィール

1970年奈良県生まれ。徳島大学総合科学部教授。1999年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。2002年博士(文学)学位取得。専門はフランス近代哲学、科学哲学。主な著書に『コンディヤックの思想――哲学と科学のはざまで』『人間科学の哲学――自由と創造性はどこへいくのか』(以上、勁草書房)、『認知哲学――心と脳のエピステモロジー』『コピペと言われないレポートの書き方教室――3つのステップ』(以上、新曜社)、『ひとは生命をどのように理解してきたか』(講談社選書メチエ)、『人をつなぐ 対話の技術』『語源から哲学がわかる事典』(以上、日本実業出版社)、『「大学改革」という病――学問の自由・財政基盤・競争主義から検証する』(明石書店)。翻訳書にコンディヤック『論理学――考える技術の初歩』(講談社学術文庫)。

「2022年 『「みんな違ってみんないい」のか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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