「みんな違ってみんないい」のか? ──相対主義と普遍主義の問題 (ちくまプリマー新書) [Kindle]
- 筑摩書房 (2022年7月7日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (173ページ)
感想・レビュー・書評
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ちょっと刺激的なタイトルで、昨今の「多様性」「個性」を重要視する風潮に物申すということ? と思ったら全然違った。
著者の命題は「正しいとはどういうことか」。しごく易しい言葉で著者の考えが語られる。といっても、難しいことを無理やり易しく話している(はしょってる)わけではない。なるほどそういう考え方があるのか面白いじゃん、と読み進め、これってひょっとして哲学って言えるんじゃね? と思って著者プロフィールを見たら、著者は哲学者だった。最近読んだ中では一番腑に落ちた哲学?の本だった。
「正しさ」はひとそれぞれ、というわけにはいかず、話し合いと交渉の中で熟成される、という著者の考えはよくわかる。その一方で、たとえばウクライナの戦争は話し合いで正しさに行き着くことができるのだろうか、と思う。いま起きていることは正しくないとしかぼくには思えない。その一方で、ロシアはそれが正しいと思っており、相当数のロシア国民もそれを支持している。この違いはどこから出てくるのだろう? 著者の方法論はウクライナ戦争に援用できるのだろうか?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
正しさや意味を考え続けると避けがたい相対主義に対して、生き方、考え方を述べている。
自身の考えに非常に近いと感じた。私的に目新しい内容があったわけではないが、自身の考えと同じように考えている人がいることを心強く感じた。
著者の他書を読みたいと思った。
・「正しさ」は集団の合意(間主観性)である
・人間の特性(生理的/ハードウェア的なもの)に依存して社会も世界認識もある。ただし、あくまで傾向。
・人それぞれといっても、人の特性は、色の識別などの研究から、そんなには違わないことが分かっている。
・実在や科学理論は、人間の目的にそって有用性できまっていく(プラグマティズムのダーウィズム的真理観)
本書のメッセージは、「人それぞれという言葉は思考停止につながる、民主主義を機能する社会の分断を解決するためにも、あきらめずにお互いを理解、合意するための対話をつづけよう。」だとおもう。 -
相対主義と普遍主義の問題を問う
担任をしていたとき、生徒に運営を任せるとすぐ多数決に走ることに違和感を感じていた。そしてときに、そうしないように言っていた。理由は少数意見が蔑ろにされてしまうからである。この本を読んだ今は、その時よりも詳細にその理由を説明できる気がする。
本書は、何が正しいかどうかはみんなで作っていくもの、合意形成していくものだと主張している。人それぞれだから、多様性だからと言えば、全て解決するわけではない。我々は異なるようで、共有している特徴はある。どこまで共有できるかをお互い心を開いて話し合わないと生産的な結論には至らない。 -
考え方やり方のわかりやすい手引書だった。
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相対主義と普遍主義を止揚する、そんな内容だと思いました。