- Amazon.co.jp ・電子書籍 (344ページ)
感想・レビュー・書評
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コロナ禍は一つのきっかけだったかもしれない。しかしすでに当時から働き方の変化は訪れていたはずだった。
それがあまりにも唐突に来たために、我々自身も確かに戸惑ってしまった。
しかし、すでに禍から数年が経過し、この生活にも慣れてきたと言える。
確かにこの状況に未だに対応出来てない人も多いのは事実だ。
しかしながら時間は無常にも不可逆に進んでしまった。
そう、時代は大きく変わってしまったのだ。
しかも「日本だけ」などの局地的な変化ではないところが今回の大きな特徴だ。
世界中がほぼ同時に同じ状況に見舞われ、デジタル化・ネットワーク化の波が全世界で一気に加速してしまった。
まさかこんなことになるとは思わなかった。
だからこそ時計の針が一気に未来に向けて進んだのだ。
とにかく働くことについて「時間」と「場所」の制限が取り払われたことのインパクトは大きい。
もちろん代償があったことも理解している。
「同時」「同じ場所」だったからこそコミュニケーションが生まれ、イノベーションが起きやすくなっていたのは事実。
これらが文字通り分断されてしまった。
しかし「時間」と「場所」の制限がなくなったメリットの方が実際は多いのではないだろうか。
これは自分自身でも感じていることだ。
なにせ自由だ。自己責任が性に合っている人には、この効果は計り知れない。
資料作りなどコツコツやる作業は家にいた方が確実に捗る。
ずっと家にいて仕事することは苦ではないが、感覚的な部分としてたまにはリアルで他人と会いたいのも事実。
その方が簡単に問題が解決する場合も多いからだ。
その場の雰囲気を感じとって、組織が順調なのか、停滞しているのか感じ取る事が出来る。
家にいるだけで、オンラインでつながっていても、その空気を感じることは難しい。
そういう意味でも現実的に、週3日くらいの出勤が丁度いい感じだ。
つまり半分は事務所で働き、半分は家で働く。
そういう状況も前提にしつつ、すでに過去の働き方で限界と感じていた「トップダウン」「縦割り組織」をこれを機会に大きく変えていく。
マネージャーの役割は確実に変化していくはずだ。
週3日勤務の人、全て在宅勤務の人、逆に毎日出勤している人。
これらを同じ土俵で評価してよいものか。
どうやって仕事を割り振って、全体のアウトプットを上げていくのか。
これらを上手に管理していくのは、相当に大変なことだろう。
マネージャーの仕事は益々忙しくなり、難しくなっていく。
合わせてリーダーに求められるものについても、ものすごく重要になってくるはずだ。
(マネージャーとリーダーは役割が似ているが、実際大きく異なると言える)
本書の本質でもあるが、リーダーこそ「働き方を再デザインする」という発想が必要なのだ。
そして、発想も勿論であるが、実行まで伴わなければいけない。
さらに課題があれば、改善を繰り返し、それらを解決していかなければいけない。
常に「なぜこの働き方をしているのか」という問いを立て、それらに対しての解答を出していく必要がある。
解答には当然正解がない。
その時その時の最適解をみんなで探して、合意をとっていくということにならざるを得ないのだ。
これはリーダーにとって人格的な部分が求められるし、高度なコミュニケーション力も求められる。
みんなが好き勝手なことを言って出した答えは必ずしも最適解とは言えない。
「何がベストなのか?」それは従業員にとってなのか、顧客にとってなのか、社会にとってなのか。
とにかく様々な変動要因がある指数を組み合わせて答えを導き出すという行為は相当にエネルギーがいる。
そういう意味での胆力もリーダーに求められる資質と言えるのであろう。
これらに対処するのは、日本人にとって相当難しいようだ。
元来真面目な気質だけに、決められたことを決められたように実行することが得意な人が多い。
それはリーダーであっても然りであった。
しかし、そもそも日本は災害が多い国であり、変化については根本的に対応力があるはずなのだ。
スクラップ&ビルドを繰り返して今の日本が存在している訳なので、国全体では実は変化に上手く対応してきた。
これはリーダーの力というよりも、現場の底力だったのかもしれない。
どうも日本と言う国も、会社の中でもリーダーと言える立場の人は何故か頼りない。
(頼りないのにリーダーに選出されるという不可思議なことが起こっている)
日本人リーダーの印象であるが、リーダーが取るべき「決める」という行為が苦手な印象がある。
カリスマリーダーも過去には存在したが、今は時代がカリスマを求めていない。
つまりリーダーが決めなくていい時代が訪れたということなのだ。
それは、何もしなくてよいかと言えばそういう事ではない。
いずれにしてもリーダーは最適解を導き出して実行に移していくのは変わらない。
その方法を「トップダウンで行わない」ということなのだ。
多様な人々の知見を集めて、合意形成して答えを出していく手法。
ビジョンを示し、周囲を巻き込んでいく力。当然優れた人格であることも求められる。
「ビジネスで最も大切なのは真摯さだ」とはドラッガーの言葉だった。
今後リーダーに求められる資質は明らかだ。
非常に難しい面もあるが、ここを突破していかないと未来はない。
現場の底力を発揮するのが日本人の特徴だった。
ここにプラスして、新しい形でのリーダーが出てくれば、これからの未来も乗り越えていけるのではないだろうか。
自分もかなり年齢を重ねてしまったが、まだまだ諦めずに未来に向かっていきたいと思っている。
本書では年齢構成についても少しだけ触れているが、そこはものすごく意識が向いてしまった。
2050年の日本は、人口約1.09億人、平均年齢53歳だそうだ。(2020年で1.26億人、47.2歳)
同年の中国が、人口約10億人、平均年齢48歳。(2020年で13.6億人、37歳)
両国で急激な少子高齢化と人口減少が進む一方で、ナイジェリアは2050年に人口4.01億人、平均年齢がなんと22歳!
この2050年時点でナイジェリアが世界3位の人口大国になっていると予測しているくらいだ。
この国の若い労働力は世界を確実にけん引していくだろう。
日本に限らず2020年の先進国は、例外なく少子高齢化、人口減になっていく。
これらを考えただけで、世界の勢力図は大きく塗り変わっていく。
時計の針は確実に早まっている。
グズグズしている時間的余裕はもはやない。
一刻も早く働き方を変えて、これからの変化に対応せよ。
その1点に尽きるのだ。
(2022/11/3)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
(2023/6)ベストセラーになった『ライフ・シフト』の著者による新しい働き方導入のための本。新型コロナのパンデミックによって、好むと好まざるとに関わらず、在宅勤務が広まったことで、テクノロジーを利用した新しい働き方の可能性に多くの人が気がつき始めた。本書は、組織のリーダー向けに考え方のフレームワークを提示しながら、組織の働き方のリデザインの実践を促す。僕自身は数カ国を行ったり来たりで働いているので、何処で何時にとかあまり意識がないけど、社長を務める組織での働き方は少しでも良くしていきたいなぁと思いつつ。
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ライフ・シフトにリモートワークやAIが伴なう社会での働き方改革。
理解→構築→検証→創造のサイクルを回しながら、組織単位で仕組みの最適化を図る。
リモートワーク化で、ジェンダー力の逆行により、女性の家事負担増が懸念されていた点が興味深かった。 -
ライフシフトのリンダ・グラットン氏が働く意味、人生の豊かさをリデサインする必要性を説いた本。
コロナ禍で働き方を変えた成功事例が紹介されていて、組織でやる時の参考になる。
個人は、ライフシフトを読むと良いかも。
@BizHack1
#リデザインワーク新しい働き方
https://amzn.to/3ZNGJUs
2023/04/08 -
有名なライフ・シフトの著者の新著です。従来の教育・仕事・余暇という伝統的な3ステージ制の人生から、柔軟にこのステージを行き来する新しい人生観へシフトする必要があると前著ライフ・シフト2で述べられていました。本書ではこういった人生観に対して、どのように企業側が組織を再構成していくかを豊富な実例を挟みながら、分かりやすくその方法について述べられています。
20年以上経済が停滞し、優秀な人材が外国企業に流出している現在、製造業をはじめ多くの日本の伝統的な企業は「解凍」状態に移ってきていると思います。本書で紹介される組織再構成の方法は決してすべての組織に通用するようなベストソリューションではなく、それぞれの組織が自分に合った方法を見つけ出す必要があります。そのためのプロセスは、1. 理解する → 2. 新たに構想する → 3. モデルをつくり検証する → 4. 行動して創造する、という試行錯誤をベースにしています。いわゆるPDCAに「1. 理解する」というプロセスを加えた形になっていますが、一時の流行にせずに意味のある変化を生み出し定着させるためにも重要であると述べられています。本書の構成としては上記の4つのプロセスについて独立した章が設けられ、基本的な考え方について述べられます。その後、コロナ禍において実際に組織を変革した企業や自治体の事例をふんだんに紹介されています。
試行錯誤に基づいて組織にあった最適な働き方を構築する、というと一見当たり前のように感じます。しかし実際に組織を変革し定着させるにはさまざまな課題が出てきます。働く場所はオフィスが良いか自宅などリモードが良いか、働く時間は9時から17時の固定にするべきか、などさまざまな観点があり、組織ごとに最適解が異なることは言うまでもありません。また、同じ組織であっても職種によっても異なります。既存の組織構造を変革したいビジネスマンや転職・就職で新しい職場を選択する機会のある方には参考になる書籍だと思います。 -
『ライフ・シフト』の延長線上の本かと思います。
対話の輪を広げ、社員とのコ・クリエーションに移行など、割と一般社員だけでなく、経営層、幹部社員的な視野が多いかなと思いました。 -
働き方を、新たに構想して新モデルをつくり、検証して作り上げる、という実践的な本。コロナ禍がおさまってきた今こそ、単に元に戻るのではない形を模索しつづけるべきですね。そういうニーズに合うのでは。
ただ、日本の組織の場合は、この本が提唱するような純粋な検証⇒改革プロセスだけでは意思決定できず、たくさんの先行事例や、一部の部署の出島戦略などを併用することで乗り越えられるのかもと思いました。そのため、じっくり再読しています。
会社の業種や部署ごとの役割によって仕事の性質は異なり、非同期や非対面がプラスに働くのかマイナスに働くのかが異なるため、パーツにわけてリデザインすべきという点など、各論にもアイデアが満載。