走馬灯のセトリは考えておいて (ハヤカワ文庫JA) [Kindle]

著者 :
  • 早川書房
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感想 : 8
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感想・レビュー・書評

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  • いろいろ詰まったSF6編。思わず声上げて笑ったりしんみりしたり。個人的に良かったのは「もしかしてホント?」なんて思ってしまった信仰が質量を持つかの研究の第2話と生前の記憶を再現し動くAIを使った葬儀を設計する表題話。何か未来が楽しみ。

  • 「オンライン福男」 4「クランツマンの秘仏」4.5

  • なんだかロマンチックなタイトルだな、と思って購入。
    表題作以外も『現代 × SF × 人間らしさ』が上手いのだが、表題作は現代とSFと人間らしい思い入れや情みたいなものの描き方が本当に綺麗だった。
    柴田勝家作品はモノによっては私だと理解が難しいことがあるのだが、表題作の『走馬灯のセトリは考えておいて』はかなりわかりやすく、ロマンチックでしっとりした作品なので、ぜひ読んでみてほしい。

  • 表題作が好みでした。
    映像化したものも良かったです。

  • 本作は全体で200ページちょっとの中に六つの作品が掲載されている短編集だ。一番短い「オンライン服男」は20ページもなく、タイトルにもなっている最後の作品「走馬灯のセトリは考えておいて」でも70ページ弱と気軽に読める。

    本のタイトルにもなっている「走馬灯のセトリは考えておいて」では、人間が死んだ後もロボットや電脳空間で生き続けられるような未来が舞台となる。主人公の職業はその電脳空間やロボットの中で故人そっくりの精神モデルを製作するライフキャスターと呼ばれるもので、今回は人ではなく、かつて一世を風靡したヴァーチャルアイドルのライフキャストを作ってほしいという依頼を受ける。

    風変わりな依頼に最初は戸惑った主人公だが、プロとしてそのヴァーチャルアイドルを調査するうちに、依頼人の人生と彼女がそのアイドルにこだわる理由が少しずつ見えてくる。またその過程では、アクシデントにより亡くなった家族との会話を通じて、ライフキャストという生業が閉じ込めているもの、そして人間とは何かということに対する自分なりの答えが見出していく。生成AIの出現により、知能や精神とは何かという問いかけがタイムリーな今だからこそ、本作のような作品による問いかけは意味のあるものだと感じられる短編だ。


    全体としては極めて今日的なモチーフを取り扱いつつも、データに全てを委ねることができるようになった時代における生と死や、信仰心のありかなどSFとしては昔から変わらぬテーマにつなげていく本作は示唆に飛んだ短編集だった。一方でその問いかけに対する答えをあえて積極的に、あるいは強く語らないその姿勢は、2020年代の日本の文学に共通するある種の曖昧な優しさも感じられる。ハードなSF好きだとちょっと物足りないと思うが、こういった作品がサラッと出てくるところに日本のSFの強さを感じさせる一冊だった。

  • 柴田勝家作品3作品目は、Kindleで購入したものの積読していた『走馬灯のセトリは考えておいて』。ちょうどドラマ化された!という話も聞き、今こそ読むべき(その後録画も見ました)と思って読みました。安定に面白かった…笑

    いやそもそも「祝・柴田勝家(武将)生誕500周年」っていう早川書房のうたい文句、違うけど合ってるwwってなって面白いじゃないですか笑

    収録作品は6作品で、「オンライン福男」 「クランツマンの秘仏」 「絶滅の作法」 「火星環境下における宗教性原虫の適応と分布」 「姫日記」 「走馬灯のセトリは考えておいて」。
    "異常論文の「クランツマンの秘仏」と 「火星環境下における宗教性原虫の適応と分布」面白かったしマジでこういうの好きなので、樋口恭介編の本の方を読もうとなり読んでます。レムの『完全な真空』的な(最後まで読み終わってないまま放置していることを思い出した)。
    発想も面白いし、うーん柴田勝家という感じで好きなのが上二作品。

    それから「絶滅の作法」は私的には柞刈湯葉みを感じて好きでした。哀惜と郷愁と緩やかな滅び・崩壊という感じ。初音ミクの「*ハロー、プラネット。」(sasakure.UK)が曲も世界観も大好きなんですが、これ!笑

    「姫日記」はまじでずっと笑ってましたね。
    てか『信長の野望』とか言っていいの?みたいなところから始まり、「はわわ」の連続、「なんでだよ!」にwwwってなってました。そして『戦極姫』本物のタイトルなんですよねwwってなって一応お伺い立てたのかなとかもう面白すぎた。柴田勝家好きだよww

    とはいえこの作品集の中で一つお勧めする作品を選ぼうとなったら、だいたいの人向けには表題作である「走馬灯のセトリは考えておいて」を選ぶと思います。もうなにしろ"エモ"くて、電車のなかで読んでいて泣きそうになりました。こういう時代がくるだろう、こういう関係性が生れるだろう、こういう悩みに人々はぶち当たるだろう。その中でイノルが悩んで出した結論は一つの答えだと思うし、解説でも書かれている通り、「信仰とは生 への不安感を解消し安寧を得るための手段であり、なかでも他者を推す=祀るロールは人生をやり過ごす効果的な酩酊ツールです。その感情が酩酊であると分かっていても、全ての信仰を棄教して生きるには人生はあまりに長く、全てに醒めて生きるメリットはあまりに少ない。人間は多かれ少なかれ何らかの存在に酩酊して生きて」いるのであって、「その構造を理解した上で描く」ということがされている安心感のようなものを感じながら読みました。柴田勝家次回作も楽しみです!

  • 表題作が本当に良かった。
    魂の在処を書くのはSFの伝統だけれど、今だとこういうお話になるんだね。

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著者プロフィール

SF作家。ペンネームは戦国武将の柴田勝家にちなんだもの。1987年、東京都生まれ。成城大学大学院(文学研究科日本常民文化専攻)在学中にハヤカワSFコンテスト・大賞を受賞し、『ニルヤの島』で2014年にデビュー。このほか著作に、『ワールド・インシュランス』(星海社FICTIONS)、星雲賞日本短編部門を受賞した表題作を収録する『アメリカン・ブッダ』(ハヤカワ文庫JA)などがある。

「2022年 『メイド喫茶探偵黒苺フガシの事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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