標本作家 [Kindle]

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 41
感想 : 4
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感想・レビュー・書評

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  • 愛を知るということは、悟性的認識ではなく、むしろ非合理なもの、狂気のようなものであろう。
    ———澁澤龍彦

    早川書房はいつだって面白い本を出してくれる。これはそれを象徴するかのような一冊。つーか神林先生の選評が的を得すぎてるんだけど、まぁ書いておこう…。

    主人公のメアリ・カヴァンは巡稿者(編集者みたいなもんだ)であり、唯一の人間の読者だ。玲伎種も読者ではあるが、舞台装置としての色合いが強く作品に対する理解も出来ていない。
    このメアリと対比されるのが、作家であるセルモス•ワイルドだ。退廃と淫蕩を好み、メアリをして「およそ人の持ちうる悪徳の大半をそなえる」と言わしめる人物。

    基本的に物語はこの2人を中心になって進められる(まぁワイルドは中盤全然出てこないんだけど、構造としての話だね)。ほかの作家も十分に立っているキャラクターなんだけど、ハッキリ言って「障害」としての側面の方が強いんだよな。いや、キャラの好き嫌いではなくメアリ(の目的)にとって、という意味で。

    構造としては終盤明かされるように、「サロメ」をオマージュした作者と読者の関係と言い切って良い。読者はどこまでもエゴイズムを持って作者と生み出される作品を愛するが、それは相互理解の末では決してなくむしろ不理解の上に成り立ってしまう。『人間であることとは、どのようなことか』とは他者性のナゾに思わせて、実はその相互不理解をこそ表している。
    だがしかし、相互理解と愛することは決してイコールじゃない。サロメがヨナカーンの首を求めたように、愛は時として非合理で狂気的なものになりうる。


    『知りたいのよ。読むことで救われる人間がいるのかを———』
    メアリは最期に自らの本質を知る。首を求めたサロメであること、他の誰からも本当の理解を得られなかったこと、それでもヨナカーンと口付けを交わしたこと。
    ならば救われたかの答えはそこにあるだろう。まぁあれだ、語らぬが花とゆーやつだな。

    そういうふうに読めたので、東氏や小川氏の選評は全然同意できなかったな。2人とも「書き手」の目線と語ってるけど、神林先生の言うとおりこれは「読み手」の話だろう。伝わるはずのない、理解されないエゴイスティックな感情…。けれどそれは確かに愛なんだぜってことでした。


  • スルスルと読めるような読みやすい文章だし、筆者はすごく楽しんで書いてるんだろうなというのは伝わってくるんだけど、話が冗長で読むのがめちゃくちゃ辛かった。実在の作家をモデルにした架空の作家が出てくるが、これは実在の作家のままで読みたかった。最後作家たちが辿り着いた結末は自分のような生きることに希望を見いだせない根暗な人間にとっては幸せな世界だ。「心が通じ合えない人間たちが、それ自体を幸せに感じられる世界」「人間でありたくない者が他の動物、自然、無機物になれる世界」…筆者も反出生主義なんだろうな多分。

  • nfm

  • 設定と冒頭はかなり力を感じたけど、1章読んでもういいかなって感じ
    2章もちょっとは良さそうだったからそのうち続き読むかも

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