サーカスの子 [Kindle]

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  • アラフィフ前半の私は、日本のサーカスが見せ物小屋から発展した過渡期に子供時代を過ごしていた。
    夏祭りに来たお化け屋敷や、何かなかで怖いことやってるらしい小屋にお小遣いもらって怖いもの見たさで入る気持ち。
    その時感じた気持ちを思い出しながら読み進めた。
    印象的だったのは、サーカスで働いている芸人さんたちも、次の公演地に行く時には何もなくなった空き地に寂しいような感覚を持っていたこと。
    酢を飲まされるとか、売られる、とかいうサーカスの昔のイメージはもしかしたらサーカス団がわざと吹聴した噂かも?という話。おもしろかった。
    そしてなかで働く人たちは、全盛期はけっこうしっかりお給料もらえてたこと。
    それぞれの生い立ちや今の生活が切ない。
    思い出とは、過ぎ去っていったことではなく、過ぎ去ることのできなかったもの、この言葉が一層沁みた。
    自分の思い出も、大切に肥やして、これから先の人生の糧となればいいなと思えた

  • 普段見ることができないサーカスの世界、裏側を堪能することができた。
    この本を読んで、アレグリアとポップサーカス、両方行き、より一層楽しめた。

  • ノンフィクション作家の母、久田恵さんと息子の連さんがサ-カスで暮らしたのは1年だけ。まかないのおばさんに、これ以上ここにいたら元の世界に戻れなくなる、だから出て行きなさいと諭される場面がある。ああ、サ-カスの世界はいわば異界なんだな、と思いました。

  • サーカスと聞いてどういうイメージを持つかという点は、年代によって大きく異なるのではないかと思います。私は50代ですが、小学生の頃に何度か観に行った記憶があります。
    著者は小学生になるまでの1年間を著者の母とともにサーカス一座と生活を共にする経験をしました。その1年を共有した多くの芸人さんや関係者を訪ね歩き、サーカスが興行として隆盛を極めた1970~80年代の当時の様子を詳しく描いています。
    サーカスは一カ所の公演が約2か月間で、次々と全国を巡ります。団員達はサーカスの公演がある大テントの傍にテント村を設営し、結婚している人は独立したテント、未婚者は男性用、女性用にそれぞれ共同生活用のテントがあてがわれ、そこで衣食住を共にします。
    何年もそういう環境に身を置くと、まるでサーカス関係者が”家族”のようになります。団員の子供はその親以外の団員からも”叱られたり”、面倒を見てもらったり。しかし、1年で6回も移動するわけですから、小学校以上の子供は常に転校しながらという事になります。自ずと子供が小学校になるぐらいになると、子供の教育環境の問題、親の団員も次第に高齢化するので芸に対する体力の問題も出てくるため、自然と退団してゆくケースが増えてきます。先ほどは”家族のような”と表現しましたが、”本当の”家族ほどに強い関係ではなく、”来る者拒まず、去る者追わず”というニュアンスであって、出てゆく人を引き留めることもほとんどしないようです。退団した関係者はそれまで常に”誰か”と一緒の生活が当たり前だった世界から、”普通の”世界に足を踏み入れて初めて、サーカスという環境が特殊な、ある意味”ゆるくて居心地の良い”環境であったことに気付くのでした。
    本書を読んでいて、サーカスの人間関係が、「程よい距離感で人と人が関わり合っている」のがよく分かり、これは私が子供の頃にまだ辛うじて残っていたご近所さんとの距離感の様な気がします。現代は周囲の他人に対して「ほぼ関わりを持たない」か、「SNSを通じて繋がっている様でも実際にはほとんど会わない」距離感だったりというケースが多い気がするのですが、だから本書で描かれるリアルに関わり合う人間関係に、なんとなく懐かしさの様な印象を感じるのかもしれません。

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著者プロフィール

稲泉 連(いないずみ・れん):1979年、東京生まれ。早稲田大学第二文学部卒。2005年に『ぼくもいくさに征くのだけれど 竹内浩三の詩と死』(中公文庫)で大宅賞を受賞。主な著書に『「本をつくる」という仕事』(ちくま文庫)、『アナザー1964――パラリンピック序章』(小学館)、『復興の書店』(小学館文庫)、『サーカスの子』(講談社)などがある。

「2023年 『日本人宇宙飛行士』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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