- Amazon.co.jp ・電子書籍 (922ページ)
感想・レビュー・書評
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鎌倉幕府から室町幕府に至るまで、戦の世を駆け抜けた足利兄弟の物語。やる気も使命感も執着もなくフワフワとどうしようもない男だが戦神の素質がある足利尊氏と、そんな兄を陰ながら支え続けたキレ者たる足利直義のダブル主人公。兄は頭が良くないので基本的に直義と足利家に仕える高師直視点がメイン。殺し殺されの復讐劇、因果応報が世の理であった中世の日本における武士達の生き様が詳細に描かれている。戦の本質、武士の素質、皇室との関係など、複雑に入り乱れた人間関係が展開されるが、非常に端的に明解に描かれている。ラストのオチも落とすべきところに落としていて大変満足。さすがは直木賞!と言える傑作。とにかく兄弟の絆がスゲェ。周りに振り回されながらも2人で足掻きながら前に進む姿に感動した。幕府の推移が詳しく知れるので非常に楽しく歴史の勉強ができる。視点が切り替わる度に、ある人の行動にはその人なりの理由があるのだとわからされ、人によって正義は異なるし相容れないこともあるという切ない真理を痛感させられた。いやでもそれを理解してても引けない戦いはあって、断腸の思いを抱えてても一族のために勝利を手にしなければいけない、そんな背水の陣の下繰り広げられる白熱した一進一退の攻防戦は手に汗握る最高のシナリオ。
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仲のいい兄弟だなあ
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文句なしに面白かった。
尊氏がうかうかしていて祭り上げられる過程は滑稽で、深謀遠慮をうかがわせる伏線にもなっている。
後継者の対立も実に自然で説得力がある。 -
直木賞受賞作ということで期待をもって読んでみた。
室町幕府を創設した足利尊氏・義直兄弟と高師直の生涯を描いた作品。
太平記を下敷きとした作品だと通常もっとも盛り上がりを見せる楠木正成との攻防も、なんだか淡白に書き進められ、全体としてメリハリが感じにくかった。
結構長めの作品だが、私には焦点がぼやけて見えた。 -
極楽、とは、ネガティブな意味ではなく、世の中とともに、という意味であり、またその表現の仕方も弟の対比の仕方など逸品で、尊氏についてより深く学びたくなった。
ただ、視点が入れ替わるため、時々誰の視点だっけ?と少しだけ混乱した。
それを踏まえても久々に重厚感のある面白い歴史小説に出会った。
ありがたい。 -
足利尊氏を頼りない人物として揶揄し、それを支えた優秀な弟・足利直義、執事・高師直が協力しながら、北条を倒し、また後醍醐側を倒していくというストーリー。主人公は多くの部分で尊氏の姿を見て呆れる場面の度々の語り手となる直義・師直と言って良い。まるでマンガチックというべき展開で、これでもか、これでもか、とばかりに尊氏の信じられないノー天気な姿が語られ、それがまた人物の器の大きさとして人望を獲得し、源氏の総大将として受け入れられていくというところに面白さがある。少し大仰でコミカルな描写になっているが、直義の存在感の大きさを考えるときに、確かにそのような面があったように感じた。固い信頼関係にあった直義と師直が離反していく説明の解釈も興味深い。
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高校くらいの頃、NHKの大河で「太平記」をやっていて、主演の尊氏は真田広之でした。ドラマがすごく面白く、私の中では「新撰組!」と双璧というくらい、あるいはそれ以上に好きでした。その後、あんまり大河って観てないですけど。
極楽征夷大将軍というタイトルから、足利尊氏の物語という予想をしていましたが、読み終えてみると弟の直義と高師直が中心の物語だったかな、という気がしました。室町幕府を作り、実際に回していたのは実はこの二人だったんだな、と。
第二部までは固く結びついていたはずの三人が、いずれ・・・というのは、大河を観た記憶からわかっていました。でも、どうしてそうなる?と不思議に感じるほどの、それぞれの信頼感。
読み進める中で、つまるところ組織をまとめあげるとは、自分の好き嫌いややりたいこと、やりたくないことという次元を超えた何かがあるんだな、と思いました。
その中で尊氏の極楽ぶりは苦労する二人にとってはときに苛立たしい者だっただろうし、この人さえ出てきてくれればなんとかなるのだ、という信頼感は室町幕府の大きな支えとはなったでしょう。
なんか、カイシャの人から「もっと働いてください」と尻を叩かれている自分と尊氏がオーバーラップするところはありました。まぁそこまで働いてないつもりはないんだけど。
結末はもの悲しく、大河の『太平記』以外に印象の薄い室町幕府について、モ王少しあれこれ読んでみたくなりました。
面白かったです。 -
リーダーとは、兄弟とは、時勢とは、世間とは、家族とは、戦とは、家臣とは、帝とは。
足利尊氏と直義を主人公に南北朝の騒乱期を描く。
尊氏の人としての魅力、義理人情、青砥橋で落ちた小銭を拾うため松明を買いに行かせた話の読み解き。
直義の正義感と戦略家と優しさと。
リーダーシップと人の在り方について考えさせられた。
50代近くなって勉学に励む尊氏の成長にも励まされた。
「やればできるではないか」直義が兄の尊氏に思った一言があたたかい。
Wikipediaで足利直義をひくと源頼朝と言われていた肖像画が出てくる。最近は直義という説が強い。直義のこと、顔もセットで覚えていられそうだ。
極楽殿という在り方、とても気に入りました。 -
素晴らしい! 足利尊氏の何と言う極楽殿ぶり呑気さ阿呆さ。しかしそれが故に周りの人間を引きつける凄さに感動し何度も涙し、大好きになった。作者、よくぞこのような尊氏像を説得力を持たせて構築したものだ。その極楽殿を支える直義と高師直の、極楽殿に呆れる様になんど笑ったことか。そして、極楽殿を支え室町幕府を立ち上げていく二人の苦労に、またこの二人が好きになった。それだけに、両者が徐々に離反し決裂していく「最終章」を読むのが辛くて辛くて。しかし、史実なのだから仕方がない。そして直冬が哀れ。読んで良かった!
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動乱前夜、北条家の独裁政権が続き鎌倉府の信用は地に堕ちていた。足利直義は、怠惰な兄・尊氏を常に励まし、幕府の粛清から足利家を守ろうとするが…。足利尊氏の秘密を解き明かす歴史群像劇。
2022年上期直木賞作。日本史の教科書ではやり手のように描かれている足利尊氏を、序盤から延々とただ人がいいだけで無能で能天気な人物と描いている。上下2段組で549ページの大作は、細か過ぎて残念ながら途中から飽きてしまった。
(Ⅽ)