火蛾 (講談社文庫) [Kindle]

著者 :
  • 講談社
3.78
  • (2)
  • (4)
  • (2)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 43
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (268ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 詩人ファリードのもとを訪れたアリーは、最近起こったという不思議な体験を語り始める。親とも異なる信条を持ち、イスラム今日に傾倒し、導師の指示に基づいて修行の旅に経った。目的の土地に着く手前、老人と落ちていた髑髏から伝えられた通り、アリーは山間部の修行場へ向かう。その修行場には3人の修行者がいたが、夜に現れる導師の霊のお告げの通り一人が殺される…。

    かなり濃厚なイスラム、ムスリムの説明から始まり、これは難しいやつか?と思い始めるあたりから、軌跡や謎の事件が起こり始めるミステリ作品である。

    神と導師との違い、修行の種類や派閥の違いによる信条の異なる教義など、用語を用いて記述され、理解が追いつかなくなりそうになっても、きちんとフォローして説明がされる。当然ながら精神的な部分も描かれるが、こちらも理解しやすい。

    どうしても海外の異文化の話を用語を用いての説明であると目が滑って読みにくいものであるが、ついつい先を先をと読ませる内容であった。

    終盤は言及を避けるが、そういう話だったのか!?という落ちがあるため、途中で早合点せずに全て読まれること。単なる殺人事件ではないのだ。

  • Twitterの読書アカウントでこの本を勧めている人がいたので読んでみたが、イスラームもので当方その手の知識がないためとても読みにくかった。序盤からずっと知らない言葉や馴染みのない言葉だらけで読みにくい。
    作中内の事象としてはそこまで詰め込まれていないし、一応軽い説明であったり、伏線回収もちゃんとあるようなのだが(無理やり流し読みしました)、各宗派の解説など加えてもらえると助かるなぁ。実写化してるのかは知らないがファンタジー系で映像化向きの作品に思う。

  • たたみかけのスピードが好きです。
    イスラムの宗派をメモっていけば混乱しなくて読みやすいと思います。

  • なんというか、作者の色が(良い意味で)非常に出ていた良作。
    地の文のリズム感がとても良く、全く知識のないイスラム圏の情景も躓く事なくイメージできた。

    偶像崇拝について禁じた理由も全然知らなかったけど、驚きながら納得してた。つまり”神”以外の何かを”神”のように扱ってはいけないんだな。だからウワイス派は言葉すらも偶像として排除しようとする。

    言葉…というより説話としての力は確かにあるし、小説家や詩人はそれを利用して生きている。アリーがファリードに施そうとした「術」はそうした力を利用して成り立っている。ファリードはアリーにならなかったが、同時に詩人としての信仰を半分失ったに等しい。
    言葉という力の限界、ウワイス派という存在の矛盾。
    その2つが”神”かもしれない火(あるいはその儀式)に向かう蛾を想起させる。まさに名作。

全4件中 1 - 4件を表示

古泉迦十の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×