六人の嘘つきな大学生 (角川文庫) [Kindle]

著者 :
  • KADOKAWA
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感想・レビュー・書評

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  • 月の裏側に広がる醜い部分を見てもなお、表側の美しさを信じることができるだろうか。

    話題となっていたのでオーディブルで読んでみました。
    伏線回収がすごいと聞いていたので、注意深く読みましたが、終盤の回収まで違和感を覚えはしたけど伏線に気付けず、まさかまさかの連続で面白かったです。

    就活の異様とも呼べるあの雰囲気が表現され過ぎてて、なんか個人的に途中胸が苦しくなりました笑
    伏線を知った上でもう一度読み直したいとも思いますが、またあの感情になるのが億劫で、しばらく読み返さないと思います笑
    なので、かなり自分勝手な評価ですが⭐️4です笑

  • 就職活動


    ああ何という響き
    もう記憶がない


    私は周りに比べて大した就活をしたわけではない
    けど、あの時期の自分も、周囲も本当におかしかった

    時は氷河期真っ只中
    地元の国立を出た同級生は小売りの販売店に就職できたと言っていた
    バイトばっかりしてた子は、そのままファミレスに就職した

    圧迫面接が普通だったし
    バイトすらかなりの圧迫ぶりだった



    私たちも思ってた
    会社の人事の人はきっと新人を採用するに当たり、何か特別なスキルを持ち、特殊な訓練を受けた会社の重要ポストの人たちなんだと

    その為の圧迫面接なんだと


    転職する頃に色々気付いた
    面接をする人と年も近くなったし、会社の仕組みをなんとなくわかっていて圧迫に恐れを抱くこともなかった

    就活の熱気とか雰囲気とか
    周囲が仲間であってライバル

    凄く嫌だった

    記憶を封印したからか、単純に年を取ったからか
    もうすっかり忘れてしまって思い出そうとしないと出てこない


    胸がぐっと苦しくなる
    いやーな気持ちがぐわっと滲み出る感じ

    あーーいやいや




    そんな気持ちをじわじわと思い出すことができる本だった(いやあー)


    もうね、人事何してるんだと
    こんな会社こっちから願い下げだと


    最終試験中にこんなアクシデントあったら人事がすっ飛んでくるでしょうに

    思いませんでした???

    これじゃあもう準備したのは会社側でしょうよ!!11
    って思っちゃう!!

    思いませんでした???



    最初に出てきたインタビューでだいたい「ん?」となる


    だいたい何に気を付けて読めばいいか分かってくる

    ただ、決定的瞬間が後出し過ぎて、「この人!!」って決められるのがかなり後になる

    封筒の事だよ!!!!!


    (ああ……またしてもネタバレチェックしなければならない)
    封筒を誰が持ち込んだか
    封筒を開けた時に2枚だったとか

    後々ビデオでじっくり見て分かるとか、後出しが過ぎるでしょう



    インタビューで聞きまわってるのが嶌衣織さんなのはすぐ分かる

    そして波多野祥吾が封筒を持ち込んだ犯人に仕立て上げられて、しかも病死してると言いうのも
    この辺りは読んでてスッキリして気持ちいい


    お酒の無知が決め手になるのも、綱渡りっぽいけど気持ちいい

    わざわざ妹に「人気投票」とか言わせておいて、嶌衣織さんがずっと九賀蒼汰に投票させてたりするのもむず痒くていい


    まさかなーとは思ったけど
    やっぱり皆がそれぞれ実は良い人(?)なところも良い着地だった


    ミステリーか?と言われれば、うーん……ってなるけど、就活サスペンス小説として見れば面白かった

  • 「性善説?性悪説?」

    人の悩みの大半は"人間関係"の悩みだそうです。
    友人関係に悩み、恋愛に悩む。上司や部下、同僚のことに悩む。親、パートナー、子どものことに悩む。
    どんな悩みも突きつめると"人間関係"の悩みであることがほとんどです。ではなぜ人は"人間関係"に悩むのでしょうか。それは人という生き物がとても複雑な生き物だからです。完璧な善人はいませんし、完璧な悪人もいません。そしてそんな人間が構築する社会はいわゆる「ヒーローが悪を倒す」という単純な構造ではないのです。誰かの正義が誰かにとっての悪であることがあります。常に正論が正しいとは限りません。ヒーローは常にヒーローではいられません。この複雑さのせいで人は悩むのです。さらに複雑なのは他人だけではありません。自分自身も複雑な人間の一人です。誰しも自分の矛盾した感情に悩み、振り回されたことがあるでしょう。自分のことなのに自分のことが理解できない。他人なんてもっと理解できない。

    本書はそんな人間の複雑さを巧みな表現でミステリーに落とし込んでいます。少し立ち止まって考えれば拾い上げられる伏線が沢山ちりばめられています。

  • うーん、没入できなかった。残念。

    隣の部屋でモニターしている人事にまずこのコンプライアンス違反を申し立てるべきだし、これを異常事態と捉えず介入してこない人事がある企業には絶対就職しちゃダメでは?

    という気持ちになってしまい、それでもこの会社に入りたいと思っている登場人物に1ミリも同調できなかった。
    (そもそも人事が入ってこないことが自分的にありえなかったので、隣の部屋で人事が全員拘束されてるとか?とか、へんなことも考えたりしてしまい、読み終わってはぁ、あ、そんな謀略的なお話ではなかったのか…なんてすこし拍子抜けしたくらい)

    それを除けば物語の組み立ては素晴らしく、盛り上げと引っ掛かり、いつまでも見えない犯人像、良い人・悪い人・やはり良い人的なドンデン返しなどは楽しめた。あとがきを読んだらそれは作者がものすごくしっかり組み立ていたみたいで、そこの点は感心したし、評価したいので星4つで。

  • 細かい人物の描写がすごい。
    就活の嫌な思い出が蘇ってくる笑

    人を一側面から見て判断しては決してダメだなと思わされた。
    完璧な人なんていないし、いろんな面を持って初めてその人なんだなと思いました。

  • 何もしなければ九賀くんは内定最有力候補だったのに封筒の事件を起こしたのは内定が目的ではなかったから。人事側が選んだ6/5000人がどれだけ捻くれていていかに自分たち(人事)は見る目がなかったかを見せつけたかったということかな。
    自分の封筒に付き合った彼女を流産させた情報を入れるのは(もっと軽いやつにすれば良かったのに)九賀くんらしいフェアなやり方だなと思った。

    当時のグループディスカッションの最中と八年後のインタビューが交互に進んでいく中で、最初はこのインタビュアーが波多野と見せかけて、徐々に(袴田、九賀、矢代の封筒が開けられ森久保が封筒を扉の裏に忍ばせたと分かった時点)このインタビュアーは犯人?なんじゃないかと怪しませて、森久保にインタビューするところでとうとうインタビュアーの主が蔦だと分かる(犯人だと読書に思わせる)ところでめちゃくちゃ鳥肌が立った。

    蔦がインタビュアーだと分かってからの後半は月の裏側にもなる答え合わせターンになっていて、難航しながらも当時の出来事を掘り起こすことで見えてきたもの、前半のインタビューでは分からなかった四人のやさしい側面が明らかになってホロリした。(めっちゃいい話やん)
    波多野視点のラスト、波多野は裏切られたと誤認したまた死んだのかと思ってたけどちゃんと真犯人を突き詰めていたんだなと思うとやりきれない気持ちもスッとした。波多野が書いた人事宛の手紙は「先日の面接で起きた〜」と書いてあって調べたところ「先日」というのは長くても一ヶ月、とあったのを考えるとUSBに記されていたのは事件から半年後の手紙だから多分USBに書いたのが後、と私は思ってる。(ていうかそう思いたいw)
    結局ひとを見極めるなんて無理だし、月の裏側は知らなくていい。自分の見たものが全てではなく自分は切り取られたその人の一面を見てるに過ぎない。エンタメとしても面白くて改めて対人に置ける考えを強固なものにさせる本だった。面白かったです。

  • 面白かった。読み進めていくうちに予想を(いい意味で)何度も裏切られた作品でした。ちゃんと伏線回収もしてくれてすっきりです。ほんと、みんな嘘つきです。いや、何が嘘で何が正しくて、何が善で何が悪でなんて、本当のところわからない。見ているのはある一面だけで、その裏も、そのまた裏もあると思い知らされる。袴田のいじめや矢代の優先席、九賀の障害者専用駐車場など。
    また、就活独特の精神状態や採用者側のジレンマも描かれており面白かった。

  • Audibleにて。

    やはり本屋大賞受賞作品は面白い。

    就活中の大学生たちの話かと思いきや、普通にミステリーです。

    ですが、人の本質とはということを考え、途中はひどく人間不信へ陥り、そこから最後には前向きになれる圧巻の作品でした。

    人間の悪と善。誰しもある。私もある。
    私が今まで気づかずに、またわかった上でしてきた悪行。それと同時に善行。どちらがホンモノなのか。私はどんな人間なのか。そして出会う人、友人、恋人、夫婦、この人たちの本質とわ。

    自分のことすらも分からないのに、どんなに同じ時間を過ごしたってきっと他人のことは分からない。

    目の前の情報から、その人の悪行だけに目を向けて想像力を働かせて、そこの部分しか目を向けられないことの怖さ。

    この日常生活であり溢れているリアリティなお話でした。

  • 読書習慣つけるために読みやすい本を聞いたら教えてもらった一冊。
    とても読みやすく、ここらへんで物語が終わるだろうな、という部分を三回くらい上回ってきた感じがする。
    根底として流れる人の評価の多面性というか搖らぎを小説内で体験できるというのがおもしろく、新しかった。

    特に最後にただの善人で終わらせない工夫や優しい嘘を妹に吐くのやインタビューに絶妙な印象操作をいれるあたりは描き方のうまさを感じた。

  • 救いのある小説で、とても面白かった

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著者プロフィール

1989年生まれ、小説家。関東在住。第十三回講談社BOX新人賞Powersを『ノワール・レヴナント』で受賞しデビュー。『教室が、ひとりになるまで』で推理作家協会賞の長編部門と本格ミステリ大賞の候補作に選出。その他の著書に『フラッガーの方程式』『失恋覚悟のラウンドアバウト』『六人の嘘つきな大学生』など。

「2023年 『六人の嘘つきな大学生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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