推し、燃ゆ (河出文庫) [Kindle]

著者 :
  • 河出書房新社
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感想・レビュー・書評

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  • Audibleにて。
    自分が今までにしてきた推し活は所謂ライト層の動きだけれど、SNSで推しのコミュニティの人達との考え方の不一致や推し方の熱量の差を見てきただけに結構リアルな内容に思えた。


  • 主人公は16歳。年齢特有の焦燥感や、やり切れなさ、加えて親との距離感と、おそらくそれらに影響しているであろう精神的障がいが、重たく澱んだ空気となって読み手側にも伝わってくるような、終始そんな気配が纏わりついていた。
    かといってずーっと暗いとかそういうことではないのだけれど、この重たさ、気怠さ、鬱陶しさは若さのあった頃にすぐ隣にあったもののように思う。思い出す。

    推しを推している自分だけが、自分を自分として認められる。生き甲斐なのだ、己の背骨なのだとと感じる。なのにその推しが炎上したということは、主人公にとって一大事なのだ。
    それでも推しくんは、1人の人間なのだよ…と、私の場合は推しがいる立場、年頃の子どもがいる親としての立場、若い時代のあった、その年齢の経験者としての立場など、いろんな角度から捉えて読むことが出来た。が、それ故に疲れた。
    物語としてはすんなり読めるのだけど、表現の深くまで知ろうとして読むと、読後はどよんとした気持ちになってしまった。

  • 「推し」が、生きていく活力になればいいんだけど…。捉え方次第なのか。

  • 推しを推すことがアイデンティティになっていること、すごくわかる‥‥推すことを「背骨」と表現していたのが的確だと思った。

    SNS上で他のオタクと交流することで「ここが居場所だ」と思えたり、イベントに参加してる時は生きてることを実感できたりするから、現実での生活がうまくいっていない主人公ならなおさらだと思う。

    自分からオタク要素をなくしたら何が残るんだろう‥‥と常々思いながら生きているので、他人事とは思えない話だった。

    推しを推すことを「推し活」と表現することについては、ポップで楽しそうなイメージが先行してしまうので、少し違うかな、と思った。
    推すことはライフワークであり、決して楽しい趣味に留まるようなものではないので‥‥

    誰かを推すことって麻薬みたいなものだと思っていて、喜びと苦しみのジェットコースターなので、抜けられない状態になる前に推しとは別の自分主体の軸を作っておかないといけないな、と改めて思った。
    それがとても難しいけれど。。。

  • 「かか」の素晴らしい文章から一転した現代的な文章への変化にややとまどったけれど、芥川賞としての時代性、話題性という一期一会的なタイミングと相まって、有るべくして生まれた小説という感じがした。本人の文庫版あとがきで得心したというか、よく理解できた。
    推しが燃えた段階から、一気に下がっていく滅びの美学とも言うのだろうか、押し活に対する冷や水のせつなさ、残酷さと、並行する生活の破綻感がマッチングした鉛の沈滞感を味わうことができた。
    私の宇佐見りん推しは、しばらく続きそうだ。

  • 私はアイドルやキャラクターの熱狂的なファンではなく、いわゆる「推し活」をしたことがない。自分以外の物事に大量の時間やお金を費やすこともしたことがないので、本書を読んで、「推し活」行動がどのようなものなのかを初めて知った。本書の裏のテーマとして、学校生活についていけない発達障害や境界知能の問題も包含されており、居場所のない者の居場所として、「推し」が機能しているということが描かれている。「推し活」をしたことがある人にとっては共感できる内容が多いのかもしれないが、「推し活」をしたことがないと、ピンとこない描写が多い気がする。とは言いつつ、「推し活」についての小説は最近でも、日経新聞夕刊でも朝井リョウが連載しており、今後も一つの研究対象や文学作品のテーマとなり続ける予感がする。これからも関連する作品があれば読んでみようと思った。

  • 女子高生が推し活のみに人生を注ぐが、推しの消失と共に自分の存在価値が見出せなくなる話。
    何をしても達成できない、足掻くことすらできない女子高生の滑落していく人生を垣間見て、最低だとは思いつつ自分は恵まれていると思った。
    まだまだ人生頑張りたい。

  • 下手なホラーより怖い。
    生活を犠牲に一心不乱に献身することが自身のアイデンティティになり、その悲壮さに酔ってどんどん加速度的に悪化していく構造は新興宗教の文脈でよく聞く話で、推しがいない自分でもなんとなく馴染みのある話ではある。ああ当事者はこうやってのめり込んでいくのねと面白く観察できた。一般人なら「そうか、なら推すのをやめよう」となる岐路にあっていちいち「そうか、もっと推さないと」になるのが面白い。
    ストーリーはフラットだけど、その人間観察の部分だけで十分面白い。実に芥川賞っぽい。

  • 推しを推す感情の表現の仕方がリアルでわかりやすいです。面白かったです。

  • 推しが燃えても、日常は続く。

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著者プロフィール

1999年生まれ。2019年、『かか』で文藝賞を受賞しデビュー。同作は史上最年少で三島由紀夫賞受賞。第二作『推し、燃ゆ』は21年1月、芥川賞を受賞。同作は現在、世界14か国/地域で翻訳が決定している。

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