旅する練習 (講談社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 3か月ほど前に図書館で予約。予約のきっかけが、新聞や雑誌の書評だったのか、本屋さんのPOPだったのか・・・思い出せないころに順番がやってきた。
    読みたいと思ったきっかけも忘れていた程だったので、読み始めは、私と姪っ子亜美(あび)が鹿島まで徒歩で旅した際のことを記したノンフィクションかと勘違いしていた。私は人気のない風景を描写する練習、サッカー少女の亜美はリフティングの練習をしながらの旅なのだが、この風景描写の技量がすごい。こちらも気合を入れて情景を思い浮かべながら、読み進めないと、作品に置いていかれる感じ。何度も読みかえしながら、そしてそのたびに、情景描写力に圧倒されながら読んだ。さすがは描写の練習を重ねているだけのことはある。
    一方、中学入学を控えた亜美は天真爛漫で豪快。しかしながら頭が良く、感も鋭い。とても魅力的な少女。
    そんな二人が、途中で就職を控えたみどりさんと出会い一緒に鹿島を目指すことに。この辺りから、「ん?小説か??」と感じるようになり、ちょっとググってみる。「あー、芥川賞候補作だったのか・・・なるほど。」
    ググらない方が良かったかなと思いつつ、これまたなぜか、物語の終盤を少しめくってみる。普段そんなことはないのだが・・・そして、最終頁で目にした衝撃の事実。「え?誰が?私、その言葉の意味を勘違いしている?どうして?」と混乱するも、戻って読み進める。結末を知った上で、後半部分を読むといろいろな伏線が。。。
    亜美の名前の由来を私が思い出す場面では、私の亜美への深い愛情の深さを感じ、胸が締め付けられる。
    「練習する旅」ではなく、「旅する練習」というタイトルを改めて考える。みどりさんにとっては、これからの人生を生きる練習、私にとっても・・・・、そして亜美にとっては・・・。
    この作品はすべてがフィクションなのか?ノンフィクションの部分もあり、私の風景描写の練習は本当に旅の途中で練習したものではないのか。そうであれば、この悲しい結末はいったい・・・
    先日読了したクララとお日さまに続き、静かな衝撃を受けた本。

    途中で鹿島アントラーズの話、ジーコのエピソードが書かれているが、それもとても良かった。

  • 小説とサッカー。その二つの練習のために叔父と姪は歩き始める。それぞれから互いに学び、二人は確かに価値あるものを手にする。この小説はまさに人生の醍醐味の一片を確かに描いているような気がした。特に最後のカワウのシーンには心を突き動かされた。ちょっと疲れたなと思ったときにぜひ読んでみてほしい。

  • 利根川に沿って下る徒歩での旅に出かけたサッカー少女と叔父の小説家の6日間の記録。
    時はコロナ禍の2020年。
    未体験の苦悩の中でそれでも少しずつ前に進もうとする皆の姿が語られる。
    仔細に描かれる利根川の風景は美しくまるで往年の作家の旅作品を読んでいるかのよう。

  • 読みづらかった。鳥の名前、千葉や茨城の地理、志賀直哉など白樺派や柳田國男など、知らないことが多すぎて、情景が全然思い浮かばず、途中で何を読んでるかよくわからなくなった。そこで知らないものを全て調べてノートに写しながらゆっくり読み進めたら、ようやく情景が浮かんできた。それでもところどころ筆者の考えてることがよくわからなくなる。きっといいことを書いてあるのだろうけど、よくわからなかった。亜美ちゃんとの最後の旅行を想いながら書いてあるのだろうけど。筆者の想いに寄り添えなかったのが残念。

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著者プロフィール

1986年北海道生まれ。法政大学社会学部メディア社会学科卒業。2015年『十七八より』で「群像新人賞」を受賞し、デビュー。18年『本物の読書家』で「野間文芸新人賞」を受賞する。23年『それは誠』が「芥川賞」候補作となる。その他著書に、『十七八より』『本物の読書家』『最高の任務』『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』等がある。

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