あの夏が教えてくれた (創元推理文庫) [Kindle]

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  • 2024年の10冊目は、アレン・エスケンスの「あの夏が教えてくれた」です。彼も、大好きな作家の1人です。主人公は、15才のボーディ・サンデン、懐かしい名前です。「たとえ天が堕ちようとも」以来でしょうか。舞台は、ミズーリ州ジュサップ。父を事故で亡くしたボーディ少年は、母と愛犬グローバーと暮らしています。タイトル通りに、ボーディ少年に起こる一夏の濃密な出来事が綴られて行きます。
    まずは、ジュサップ一の大企業エルク工業に勤めている、黒人女性のアイダ・ポーの失踪事件が起こります。彼女は、会社のお金を横領したと思われていました。その失踪事件の解明が、ミステリーパートとなります。
    そして、ボーディ少年の正義感が発揮された事から起こるジャーヴィス・ハルコムとのトラブル、向かいに越して来た黒人のトーマス少年との友情、ミステリアスな隣人ホークとの父親に似た関係性が描かれて行きます。
    ボーディ少年の一夏の青春物語にアイダ・ポーの失踪事件が絡み合い、田舎町ジュサップのある利権体制と白人至上主義を炙り出して行きます。
    クライマックスに至る流れは、臨場感・緊迫感共に満ちており、さすが見事です。悲しい出来事も起こる結末ですが、何故か、悲しさよりもノスタルジックさを感じます。
    最大の読みどころは、自らの過ちで娘を亡くしたホークが、父親を亡くしたばかりのボーディ少年に出会ってしまった場面でしょうか。そこから、全てが始まります。ボーディ少年を通して贖罪をしようと決めたホークの心情を思うと、何をも言えない気持ちになります。
    ☆4.7

  • 閉鎖的な田舎町で起こる事件を通じ、ひと夏にしてあまりにも多くのことを体験してしまう15歳の少年。作者の別作品で活躍する人物の過去話だとは知らずに読んだけれども、むしろそうした先入観なく読めたことがよかったと思えるくらいにいい作品だった。差別や排除、消せない喪失の痛みがある反面、人と人とが結びつくことで生まれるもの、築かれるものの力強さを感じさせてくれる。

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